忘れられた最初の仲間!ユウマの秘密
巨大な水晶の装置が、まばゆい光を放っていた。
その中に映し出されているのは、幼いころのユウマと、見知らぬ少年の姿だった。
少年はユウマと同じくらいの年齢で、首から小さな星形のペンダントを下げていた。
『ユウマ、約束だよ。いつか僕たちで、第∞世界のすべての謎を解き明かそう!』
『うん! 絶対に二人で冒険しよう!』
映像の中の幼いユウマは、笑顔で少年と指切りをしていた。
「そんな……。僕、こんな約束をした覚えがない……」
ユウマは額に手を当てた。
覚えていないはずなのに、少年の声を聞くと、胸の奥が不思議と温かくなった。
「ユウマ、無理に思い出そうとしなくてもいいよ」と、アヤがそばに立った。
「でも、僕の記憶なら、どうして忘れているんだろう?」
白いコートのもう一人のユウマが、水晶の装置を調べ始めた。
「この装置は、単なる記録装置じゃない。失われた記憶を、世界の境界に保存しているんだ」
「じゃあ、あの少年の記憶も、どこかに残っているの?」と、ナナが尋ねた。
「おそらくね。ただし、普通の記録とは違う。彼に関する記憶は、第∞世界のあらゆる記録から消されているみたいだ」
その言葉を聞き、ルミが顔を上げた。
「セイが記録から消されていたときと、似ている……」
「ああ」と、セイが答えた。「でも、今回の消え方は違う。誰かが意図的に、世界全体から彼の存在を隠したように見える」
その瞬間、黒いローブの人物がゆっくりと手を上げた。
「その少年の名は、レイ。ユウマが初めて出会った、世界の境界を越える力を持つ仲間だ」
「レイ……?」
ユウマが名前を口にした途端、水晶の光が強くなった。
幼いころの映像が切り替わる。
そこには、ユウマとレイが星空の下で、小さな石碑を見つめている場面が映っていた。
『この石碑には、世界の始まりが記されているんだって』
『じゃあ、世界が始まる前には何があったのかな?』
『それを調べるのが、僕たちの冒険だよ!』
二人は笑い合っていた。
しかし、次の映像では、空が突然暗くなっていた。
無数の世界が、黒い輪に引き寄せられるように揺らいでいる。
レイはユウマをかばうように前へ出た。
『ユウマ、ここから離れて!』
『嫌だ! 一緒に帰ろう!』
『大丈夫。必ず、もう一度会えるから』
レイが星形のペンダントをユウマに渡す。
そして、まばゆい光の中へ消えていった。
「レイ……!」
ユウマは思わず水晶に手を伸ばした。
映像はそこで途切れた。
しばらく、誰も言葉を発しなかった。
やがて、ミオが静かに口を開いた。
「もしかすると、レイは世界の境界が壊れるのを防ぐために、自分の存在を記録から消したんじゃないかな」
「でも、どうしてユウマまで忘れてしまったんだ?」と、ハルが尋ねた。
黒いローブの人物が答えた。
「レイは境界を封じるため、ユウマの記憶の一部を鍵として使った。その結果、ユウマ自身もレイのことを思い出せなくなったのだ」
「そんな……」
ナナは悲しそうにうつむいた。
「レイは、ずっと一人で頑張っていたの?」
「そうかもしれない」と、ソラが言った。「でも、まだ本人の話を聞いたわけじゃない。決めつけるのは早いよ」
ユウマは深呼吸した。
「そうだね。僕はレイに会いたい。そして、何が起きたのか、自分の目で確かめたい」
すると、黒いローブの人物がうなずいた。
「そのためには、境界の記録を取り戻さなければならない。レイが最後に向かった場所は、ここからさらに先にある」
「どこなんだ?」と、ユウマが尋ねる。
人物は窓の外を指さした。
黒い輪の向こう側に、淡い光を放つ島が浮かんでいた。
「**忘却の果て――記録されなかった世界**だ」
そのとき、塔全体が大きく揺れた。
水晶の装置に黒い亀裂が走り、映像が乱れ始める。
『境界接続率、上昇中』
『警告。複数世界の記録が混線しています』
機械のような声が響いた。
「黒い輪が、こちらの装置にも干渉している!」と、ミオが叫んだ。
白いコートのユウマが装置の前に立つ。
「このままでは、街にあるすべての鏡が境界の扉になってしまう!」
「止める方法はないの?」と、アヤ。
「装置の中心にある七つの光を安定させる必要がある。でも、それには七人全員の協力がいる」
七人は、それぞれの位置についた。
ユウマが青い光に手をかざし、アヤが赤い光、ナナが黄色い光、ハルが緑の光、ミオが白い光、ソラが紫の光に触れる。
最後に、ルミが銀色の光へ手を伸ばした。
「みんな、心を合わせて!」
七色の光がつながり、装置の亀裂が少しずつ閉じていく。
しかし、黒い輪から伸びた影が、装置の中央へ迫ってきた。
「まだ終わっていない!」と、セイが叫ぶ。
その瞬間、ユウマの胸元が淡く輝いた。
そこには、いつの間にか小さな星形のペンダントが現れていた。
「これは……レイが渡してくれたもの?」
ペンダントから、かすかな声が聞こえた。
『ユウマ……もし、この声が届いているなら……』
全員が息をのんだ。
『忘れないで。世界をつなぐ力は、すべてを一つにするためのものじゃない。違う世界が、それぞれのままで存在できるようにするための力なんだ』
ペンダントの光が広がり、黒い影を押し戻した。
装置は安定し、塔の揺れも収まった。
ユウマはペンダントを握りしめた。
「レイ……。今度こそ、君を見つけるよ」
白いコートのユウマは、静かにうなずいた。
「僕も協力する。君が進む道を、最後まで見届けたい」
すると、黒いローブの人物がフードを外した。
その顔を見た瞬間、ルミが驚きの声を上げた。
「あなたは……!」
そこにいたのは、ユウマたちがまだ出会ったことのない、銀色の髪をした若い女性だった。
彼女は真剣な表情で告げた。
「私は境界の記録官、フィリア。レイが残した最後の記録を守ってきた者です」
「フィリアさん、レイは今どこにいるんですか?」と、ユウマが尋ねた。
フィリアは、窓の外に浮かぶ島を見つめた。
「彼は今も、あの世界で境界を守っています。しかし……」
彼女は言葉を切った。
「黒い輪を生み出している存在も、同じ場所へ向かっています」
「それって、レイが危険だってこと?」と、ナナ。
「ええ。急がなければ、二人が接触してしまうでしょう」
ユウマは仲間たちを見渡した。
「行こう。レイを見つけて、黒い輪の正体を突き止めよう!」
「もちろん!」と、アヤが答えた。
「ここまで来たんだから、最後まで付き合うよ!」と、ハル。
「今度は、記録に残されていない世界を調べるんだね」と、ミオがノートを開く。
「どんな謎が待っているのか、確かめよう」と、ソラ。
ルミとセイも力強くうなずいた。
フィリアは七人に、淡い光を放つ小さな地図を手渡した。
「これが、忘却の果てへ続く道を示す境界地図です。ただし、道は一定ではありません。進むたびに姿を変えるでしょう」
ユウマは地図を受け取った。
そこには、島へ続く道とともに、見覚えのある文字が浮かんでいた。
『第∞世界の始まりを知る者、レイ』
そして、その下には、もう一つの名前が記されていた。
『境界の創造者――???』
「境界の創造者……?」
ユウマがつぶやいた瞬間、名前の部分が黒く塗りつぶされた。
フィリアの表情が曇った。
「その名前は、まだ誰にも明かされてはなりません。もし思い出してしまえば、世界の境界そのものが反応するからです」
窓の外では、黒い輪がゆっくりと回転していた。
その中心に、一瞬だけ人影が映る。
人影はユウマの方を向き、声を発した。
『レイを探しているのか、ユウマ。ならば、私のもとへ来るがいい』
黒い輪が強く輝く。
『お前が忘れた真実を、すべて教えてやろう』
声が消えると、境界地図に新しい道が浮かび上がった。
それは、誰も知らない世界へと続く道だった。
七人の次なる目的地――忘却の果て。
そこには、ユウマとレイの過去、そして第∞世界が生まれた秘密が眠っている。
冒険は、さらに深い謎へと進んでいくのだった。




