星をなくした少年の願い
星見の丘へ続く階段の途中で、悠真たち六人とルミは、座り込んでいる少年を見つけた。
少年の名前は、ユウト。
彼の手のひらには、星の形をした小さなくぼみがあった。
「ぼくの星……どこに行っちゃったんだろう……」
ユウトは、今にも泣き出しそうな顔でつぶやいた。
悠真は少年の隣に腰を下ろした。
「ユウトくん。その星は、どんな星だったの?」
ユウトは少し考えてから答えた。
「青くて、きれいな星だったよ。夜になると、いつもぼくのところに来てくれたんだ」
「星が、ユウトくんのところに来てくれたの?」
ハルが不思議そうに尋ねた。
「うん。ぼくが寂しいときも、眠れないときも、窓の外で光ってくれたんだ。でも、三日前から急に見えなくなっちゃった」
ルミは、その話を聞いてはっとした。
「三日前……それは、町から星が消えた日と同じだわ!」
ナナが地図を広げた。
「ということは、ユウトくんの星も、星空プラネタリウムと関係があるのかもしれないね」
「でも、どうすれば見つかるの?」
アヤが尋ねた。
ユウトは山頂の天文台を指さした。
「あそこに行けば、何かわかるかもしれないんだ。でも、入口に不思議な壁があって、ぼく一人じゃ通れなかったんだよ」
「よし! みんなで行ってみよう!」
悠真が立ち上がった。
七人はユウトと一緒に階段を上り始めた。
やがて、山頂に建つ古い天文台へたどり着いた。
天文台の入口には、透明な壁が立ちはだかっていた。壁には無数の星の模様が刻まれているが、そのほとんどが灰色に変わっていた。
中央には、青い星が一つだけ描かれていた。
「この星、ユウトくんが言っていた星に似ているね」
ミオが指さした。
ユウトは壁に近づいた。
「そうだよ! ぼくの星と同じだ!」
その瞬間、壁の文字が光り始めた。
**【星を取り戻したければ、その星が照らしていたものを答えなさい】**
「その星が照らしていたもの……?」
ソラが考え込んだ。
「星そのものじゃなくて、星に照らされていた何かを答えるのかな?」
ナナが壁を調べると、青い星の下に小さな絵が刻まれていることに気づいた。
そこには、窓辺に座る少年と、もう一人の人物が描かれていた。
「ユウトくん。この絵に見覚えはある?」
ユウトは目を見開いた。
「これ……お姉ちゃんだ!」
少年は、壁の絵をじっと見つめた。
「ぼくにはお姉ちゃんがいたんだ。遠くの町へ引っ越す前、毎晩一緒に星を見てくれたんだよ」
「お姉ちゃんは、今も遠くの町にいるの?」
アヤが尋ねると、ユウトはうなずいた。
「うん。離れて暮らすことになってからも、同じ星を見つけたら手を振ろうって約束したんだ」
ユウトは寂しそうに手のひらを見つめた。
「でも、星が見えなくなってから、お姉ちゃんとの約束まで遠くなっちゃった気がして……」
悠真は、ユウトの肩にそっと手を置いた。
「星が見えなくても、約束がなくなるわけじゃないよ」
「そうよ。離れていても、ユウトくんがお姉ちゃんを大切に思っていることは変わらないわ」
アヤが優しく言った。
ミオも笑顔でうなずいた。
「それに、星が戻ったら、また同じ星を見つけられるよ!」
ユウトは仲間たちを見渡した。
そして、少しずつ顔を上げた。
「……うん。ぼく、お姉ちゃんとの約束を信じてる!」
ユウトが壁に手を触れた瞬間、青い星がまばゆく輝いた。
透明な壁に、次々と青い光が広がっていく。
ゴゴゴゴ……。
壁が左右に開いた。
「やった! 開いたよ!」
ハルが飛び上がった。
七人は天文台の中へ入った。
そこには、巨大な望遠鏡と、星の形をした装置が置かれていた。
装置の中央には、青い結晶が浮かんでいる。
「これが……星の結晶?」
ルミが息をのんだ。
結晶は確かに美しい青色をしていたが、光はとても弱かった。
そのとき、天文台の奥から、ステラが姿を現した。
「よくここまでたどり着きましたね」
「ステラ! この結晶を持って帰れば、町に星が戻るの?」
悠真が尋ねた。
ステラは静かに首を横に振った。
「結晶を持ち帰るだけでは足りません。星の光を取り戻すには、ユウトの願いと、彼が守り続けてきた約束が必要なのです」
「ぼくの願い……?」
ユウトは青い結晶を見つめた。
ステラは優しく微笑んだ。
「あなたは、星が戻ってきたら何をしたいですか?」
ユウトは少し考えたあと、はっきりと答えた。
「お姉ちゃんに、もう一度会いたい! それから、一緒に星を見たい!」
青い結晶が、強く輝いた。
天文台の壁に、星空の映像が浮かび上がる。
そこには、遠くの町で窓の外を見上げる少女の姿があった。
少女の名前は、ユイ。
ユウトのお姉ちゃんだった。
ユイもまた、青い星が消えてしまった夜空を見つめていた。
「ユウト……元気にしているかな?」
その声が、天文台の中に響いた。
「お姉ちゃん!」
ユウトが叫ぶ。
映像の中のユイは、こちらの声が聞こえないまま、そっと窓に手を触れた。
ユウトも同じように、映像へ向かって手を伸ばした。
すると、青い結晶から一本の光が伸び、ユウトの手のひらにある星形のくぼみへとつながった。
ピカッ!
小さな青い星が、ユウトの手のひらに現れた。
「ぼくの星だ……!」
ユウトの目に、うれし涙が浮かんだ。
しかし、星はまだ完全には輝いていなかった。
ステラが告げた。
「第一の星は、願いによって目覚めました。けれど、星空を取り戻すには、あと二つの星を見つけなければなりません」
「あと二つ……!」
ルミが驚いた。
天文台の窓の外を見ると、遠くの山と海の向こうに、小さな光が二つ浮かび上がっていた。
一つは緑色。
もう一つは金色。
ステラは二つの光を見つめた。
「次に向かうのは、風が止まった風車の谷。そして、その先にある、光をなくした星の湖です」
悠真たちは顔を見合わせた。
星を取り戻す冒険は、まだ続く。
そしてユウトは、手のひらの青い星を大切そうに握りしめた。
「お姉ちゃん。もう一度、一緒に星を見ようね!」
青い星が、小さな希望の光を放った。




