星見の丘に眠る試練
星の案内人ステラが夜空へ飛び去ったあと、悠真たち六人とルミは、星見の丘へ続く山道を歩き始めた。
空には星が一つもない。
いつもなら道を照らしてくれる星明かりもなく、遠くの景色は真っ暗だった。
「星がないと、夜ってこんなに寂しいんだね……」
ミオが空を見上げながらつぶやいた。
「うん。星って、ただ空に光っているだけじゃないんだね」
アヤも静かにうなずいた。
「星があると、遠くにいても誰かと同じ空を見ているって思えるもの」
「よし! 星が戻ったら、みんなで一番きれいな星を探そうよ!」
ハルが元気よく提案した。
「賛成!」
ソラが笑顔で答える。
ルミはそんな六人を見て、少しだけ表情を明るくした。
「ありがとう。みんなと一緒なら、きっと星を取り戻せる気がする」
やがて、七人は山道の途中にある石造りの門へたどり着いた。
門の中央には、星形のくぼみが七つ並んでいる。
その下には、不思議な文字が刻まれていた。
**【星見の丘へ進みたければ、自分だけの星を見つけなさい】**
「自分だけの星……。ステラが言っていた試練だね」
悠真が文字を読み上げた。
すると、門の向こうから小さな光が七つ飛んできた。
光は七人の前に一つずつ浮かび、それぞれ違う色に輝いている。
赤、青、緑、黄色、紫、銀色、そして白。
「この光を選べばいいのかな?」
ナナが手を伸ばしかけた、そのときだった。
門の上から、ステラの声が響いた。
「急いで選んではいけません。自分の星は、見た目の美しさで決めるものではありません」
「じゃあ、どうやって選ぶの?」
ハルが尋ねる。
「あなたたちが、本当に大切にしているものを思い浮かべてください。その思いに応える光が、あなたの星となるでしょう」
声が消えると、七つの光がゆっくりと回り始めた。
悠真は目を閉じた。
自分が大切にしているもの。
それは、仲間たちと一緒に冒険してきた時間だった。
楽しかったことも、困ったことも、みんなで乗り越えてきた。
「ぼくが大切にしたいのは、仲間とのつながりだ!」
悠真がそう言うと、銀色の光が彼の手元へ飛んできた。
光は小さな星の形に変わり、悠真の手のひらに浮かんだ。
「やった! 選べたよ!」
続いて、アヤも目を閉じた。
「私が大切にしたいのは、誰かの気持ちに寄り添うこと」
すると、青い光がアヤの前で輝いた。
ナナは、困ったときにも一緒に考えてくれる仲間を思い浮かべた。
彼女のもとには、緑色の光がやってきた。
「私にとって大切なのは、みんなと一緒に答えを見つけることね」
ハルは、みんなの笑顔を思い浮かべた。
「ぼくは、みんなが笑っていられることが大切!」
黄色の光が、ハルの頭の上でくるくる回った。
ミオは、新しいことを知る喜びを思い浮かべた。
「知らない世界を知って、みんなと驚き合うことが好き!」
紫色の光が、ミオの手のひらに収まった。
ソラは、これまでの旅で交わした約束を思い出した。
「僕が大切にしたいのは、どんなときでも約束を忘れないことだよ」
赤い光がソラの前に浮かび、星の形に変わった。
最後に、ルミが目を閉じた。
彼女は、星空プラネタリウムで初めて星を見た日のことを思い出していた。
幼いころ、ドームいっぱいに広がる星を見て、夢中になって空を指さした。
そのとき、案内係のお姉さんが優しく言ったのだ。
『星は遠くにあるけれど、見上げる人の心をつないでくれるのよ』
「私が大切にしたいのは……星を見たときの感動を、誰かに伝えること」
白い光がルミの前で輝いた。
七人がそれぞれの星を手にすると、石造りの門がゆっくりと開いた。
ゴゴゴゴ……。
門の向こうには、頂上へ続く階段が広がっていた。
「みんな、選べたね!」
ルミがうれしそうに笑った。
しかし、悠真が階段の一段目に足をかけた瞬間、七つの星が同時に震えた。
そして、門の文字が書き換わった。
**【第一の試練、通過】**
その下に、さらに新しい文字が浮かび上がる。
**【第二の試練――星を失った者の願いを聞きなさい】**
「星を失った者……?」
ソラが不思議そうにつぶやいた。
すると、階段の上から、かすかな泣き声が聞こえてきた。
「ぼくの星……どこに行っちゃったの……?」
七人は顔を見合わせた。
階段の先に、一人の小さな男の子が座り込んでいた。
男の子は手のひらをじっと見つめている。
そこには、星の形をした小さな空洞があった。
「君、どうしたの?」
悠真がそっと声をかけた。
男の子は顔を上げた。
「ぼく、星をなくしちゃったんだ。あの星がないと、大切な人に会えないんだよ……」
ルミが息をのんだ。
「まさか、この子も星の結晶と関係があるの?」
男の子は、山頂にある古い天文台を指さした。
「ぼくの星は、あそこにある。でも、ぼく一人じゃ取り戻せないんだ」
そのとき、遠くの天文台の窓に、青白い光が一瞬だけ灯った。
悠真たちは、男の子の隣に腰を下ろした。
「大丈夫。ぼくたちが一緒に探すよ!」
悠真の言葉に、男の子は小さくうなずいた。
星見の丘に隠された試練は、まだ始まったばかりだった。




