星を失ったプラネタリウム
思い出博物館での冒険を終えた悠真、アヤ、ナナ、ハル、ミオ、ソラの六人は、新しい扉をくぐった。
まばゆい光が消えると、目の前には静かな町が広がっていた。
空は深い藍色に染まっている。
しかし、不思議なことに、夜空には星が一つもなかった。
「えっ……? 星がないよ!」
ハルが空を見上げて叫んだ。
「月も見えないね。空全体が真っ暗だ……」
アヤも心配そうに空を見つめる。
町の中央には、丸い屋根を持つ大きな建物が建っていた。入口には、銀色の文字でこう書かれている。
**『星空プラネタリウム』**
「次の物語は、ここみたいだね」
悠真が建物に近づくと、入口の扉がひとりでに開いた。
中は広いホールになっていた。壁には星座の絵が飾られ、中央には大きなドーム型の観覧室へ続く通路がある。
ところが、館内には誰もいなかった。
「こんにちはー! 誰かいませんかー?」
ミオが呼びかける。
返事はない。
そのとき、奥の部屋から、カタカタと機械が動く音が聞こえてきた。
「誰かいるのかな?」
ソラを先頭に、六人は音のする部屋へ向かった。
そこには、たくさんの歯車やレンズが組み合わさった、大きな投影装置が置かれていた。
その前に、一人の少女が座り込んでいる。
少女は薄紫色の服を着て、星形の髪飾りをつけていた。
「君、大丈夫?」
悠真が声をかけると、少女はゆっくりと顔を上げた。
「あなたたちは……旅人?」
「うん。ぼくは悠真。こっちはアヤ、ナナ、ハル、ミオ、それからソラだよ」
悠真が紹介すると、少女は小さくうなずいた。
「私はルミ。このプラネタリウムの案内係なの」
「ルミちゃん、どうしてこんなに困っているの?」
ナナが尋ねた。
ルミは動かなくなった投影装置を見つめた。
「このプラネタリウムは、町のみんなに星空を見せる場所なの。でも、三日前に突然、空から星が消えてしまったの。それと同時に、装置も動かなくなってしまった……」
「星が消えたって、どういうこと?」
ミオが驚いた。
「私にもわからない。でも、星がなくなってから、町の人たちは夜空を見上げなくなったの。みんな、星を眺める楽しさを忘れてしまったみたい」
ルミは悲しそうにうつむいた。
「明日には、最後の星空上映会をする予定だったのに……」
「最後の上映会?」
アヤが聞き返した。
「装置が直らなければ、プラネタリウムは閉館することになっているの」
その言葉を聞いて、ハルが勢いよく立ち上がった。
「そんなの、もったいないよ! ぼくたちも手伝う!」
「本当に……?」
「もちろん!」
六人はさっそく、投影装置を調べ始めた。
ソラは歯車の動きを確認し、ナナは壁に貼られた設計図を調べた。アヤとミオは部屋の隅にある箱を開け、ハルは装置の周りを一生懸命に探した。
やがて、悠真が装置の中央にある空洞を見つけた。
「ここ、何かを入れる場所みたいだよ!」
ルミが近づき、空洞をのぞき込んだ。
「これは……星の結晶を入れる場所だわ!」
「星の結晶?」
「そう。プラネタリウムの投影装置は、星の結晶が放つ光を使って、ドームいっぱいに星空を映し出すの。でも、結晶がなくなっている……」
ルミは首を横に振った。
「結晶がないと、装置を動かすことはできないの」
そのとき、ナナが設計図の裏に、小さな地図が描かれているのを見つけた。
「みんな、これを見て!」
地図には、町の外にある山と、その頂上に建つ古い天文台が描かれていた。
地図の下には、こう記されている。
**『星の結晶は、星見の丘に眠る』**
「星見の丘へ行けば、結晶が見つかるかもしれないね!」
悠真が言った。
ルミは少し迷ったあと、顔を上げた。
「私も一緒に行く。星の結晶のことなら、私が一番よく知っているから」
「よし、決まりだね!」
ハルが笑顔で答えた。
こうして、六人はルミとともに星見の丘を目指すことになった。
町の外へ出ると、遠くに細長い山道が見えた。
その先には、古い天文台が月明かりもない空の下に、静かにたたずんでいる。
七人が山道を歩き始めたときだった。
突然、空のはるか上から、小さな光が一つ落ちてきた。
光は七人の目の前に降り立ち、小さな鳥の姿に変わった。
羽は銀色で、胸元には星形の模様が輝いている。
「あなたたちが、星を探しに来た旅人たちですね?」
鳥が、澄んだ声で話しかけてきた。
ルミが驚いて目を見開く。
「あなたは……星の案内人、ステラ!」
ステラと呼ばれた鳥は、静かにうなずいた。
「星の結晶を取り戻したいのなら、星見の丘へ向かいなさい。ただし、そこには大切な試練が待っています」
「試練って、どんなもの?」
ソラが尋ねた。
ステラは、真っ暗な空を見上げた。
「自分が一番大切にしている星を、見つけることです」
その言葉を残すと、ステラは再び光となり、夜空へ飛び去っていった。
悠真たちは顔を見合わせた。
「自分が一番大切にしている星……?」
ミオがつぶやく。
星が一つもない夜空。
失われた星の結晶。
そして、星見の丘に待つ謎の試練。
七人の新しい冒険が、いよいよ始まろうとしていた。




