灯台に帰ってきた友達
灯台の階段の上に現れた光は、ゆっくりと人の姿に変わっていった。
そこに立っていたのは、ルナと同じくらいの年頃の少年だった。少年は薄い緑色の服を着て、首から小さな星形の飾りを下げていた。
「ルナ、久しぶり」
少年が微笑むと、ルナは息をのんだ。
「あなた……本当に、あなたなの?」
「うん。ぼくはレイだよ」
ルナの手から、青い貝殻がぽろりと落ちた。
「レイ……! ずっと、ずっと待っていたの!」
ルナは駆け寄ろうとした。しかし、レイの姿は淡い光に包まれていて、近づくほどに薄くなってしまう。
「待って。どうして、今まで帰ってこなかったの?」
ルナの声には、喜びだけでなく、長い間抱えていた寂しさも混じっていた。
レイは静かにうつむいた。
「ごめんね。ぼくは、あの日に島を出たあと、遠くの世界へ行ってしまったんだ。そこで道に迷って、帰り方が分からなくなったんだよ」
「それなら、どうして連絡してくれなかったの?」
「ぼくの声は、島まで届かなかったんだ。でも、ずっと約束を覚えていた。毎晩、灯台の光を思い出していたよ」
悠真たちは顔を見合わせた。
「レイは、約束を忘れていたわけじゃなかったんだね」とミオ。
「うん。でも、約束を守れなかったことが、ずっと心残りだったんだ」とレイ。
アヤは腕を組み、少し考えてから言った。
「だったら、今から約束をやり直せばいいんじゃない?」
「えっ?」とルナとレイが同時に声を上げた。
「昔と同じようにできなくてもいいんだよ。今、二人がここで会えたんだから、新しい約束を作ることだってできるでしょ?」
ナナも、そっと二人に歩み寄った。
「ずっと待っていたルナの気持ちも、帰りたくても帰れなかったレイの気持ちも、どちらも大切だと思うの」
ソラは灯台の窓から湖を見下ろした。
「遠く離れていても、相手を思い出すことはできる。でも、思い出すだけじゃなくて、これからどうしたいかを話し合うことも大切なんだね」
ハルはルナに尋ねた。
「ルナは、これからレイとどうしたい?」
ルナはしばらく考えた。
「……毎晩、灯台で待つだけじゃなくて、これからはレイといろんな場所を見てみたい。二人で新しい思い出を作りたい!」
レイは、うれしそうに笑った。
「ぼくも! 今度は、ちゃんと帰ってくる方法を一緒に考えたい」
二人が手を取り合った瞬間、灯台の最上階から、まばゆい光があふれ出した。
カチリ。
灯台の古い装置が動き始め、長い間眠っていた光が、湖の向こうまで照らした。
その光に触れたレイの姿が、少しずつはっきりしていく。
「わっ、レイの姿が変わってきた!」とミオ。
「約束が、新しい力になったんだね」とハルが目を輝かせた。
レイは自分の手を見つめた。
「ありがとう。これなら、ぼくも島にいられる!」
ルナは青い貝殻を拾い、レイに差し出した。
「これ、覚えている? 昔、二人で湖のほとりで見つけた貝殻だよ」
「ああ! ぼくが半分に割ろうとして、割れなくて困った貝殻だ!」
「そうそう! 結局、二人で大切に持っておこうって決めたんだよね」
二人は顔を見合わせて笑った。
そのとき、灯台の壁に金色の文字が浮かび上がった。
【忘れられた約束――再会】
続いて、島の中央に小さな箱が現れた。
箱のふたには、こう書かれていた。
【次の世界へ進む者へ。約束は、過去に縛られるためではなく、未来をつくるためにある】
悠真が箱を開けると、中には星形の地図が入っていた。
地図の中央には、雲の上に浮かぶ町が描かれている。
その町の名前は、【空の郵便町】。
「空の郵便町か……。今度は、どんな場所なんだろう?」と悠真。
「手紙を届ける町なのかな?」とナナ。
アヤは地図を掲げた。
「よーし! 次は空の町へ出発だね!」
ルナとレイは、灯台の前で六人を見送った。
「みんな、本当にありがとう!」とルナ。
「またいつか、ここに遊びに来てね!」とレイ。
悠真たちは手を振り返し、光の橋を渡って島を後にした。
湖の岸に戻ると、星形の地図がふわりと浮かび上がり、空へ向かって一本の光を放った。
その光の先には、雲を突き抜けるほど高い階段が伸びていた。
そして、階段の入り口には、誰かが置いた小さな手紙が一通。
封筒には、赤い文字でこう書かれていた。
【届け先が分からない手紙を、届けてください】
悠真は封筒を手に取った。
「どうやら、次の冒険はこの手紙から始まるみたいだね」
六人は顔を見合わせ、雲の上へ続く階段を見上げた。
――空の郵便町で、宛先のない手紙が待っている。




