忘れられた約束の島
笑顔を取り戻した街を出発した悠真たちは、地図を頼りに湖を目指していた。
「この先に大きな湖があるはずだよ」とミオが地図を確認する。
「その真ん中に、忘れられた約束の島があるんだね」とナナ。
「うん! どんな約束なのか、早く知りたいな!」とアヤは元気よく歩いた。
ハルは、道端に咲く小さな花を見つけて立ち止まった。
「この世界には、まだ知らない場所がたくさんあるんだね」
「だから、みんなで旅をするのが楽しいんだよ」と悠真は笑った。
ソラも大きくうなずいた。
「知らない場所に行けば、知らなかった音にも出会えるからね」
やがて森を抜けると、目の前に青く澄んだ湖が広がった。
湖の中央には、小さな島が浮かんでいる。その島には古い灯台が立っており、最上階から淡い光が放たれていた。
しかし、湖には船が一隻もなかった。
「どうやって島へ渡ろう?」とミオが尋ねた。
そのとき、水面に白い文字が浮かび上がった。
【約束を思い出した者だけが、渡る道を見つけられる】
「約束を思い出す……?」と悠真。
アヤは腕を組んで考えた。
「誰かと交わした約束を思い出せばいいのかな?」
ナナは静かに湖を見つめた。
「でも、私たちは、この島に来るのは初めてだよね。私たちが忘れた約束じゃないのかもしれない」
ハルは湖のそばにしゃがみ、水面に手を伸ばした。
すると、湖の中から小さな光が現れた。
光は六人の周りをくるくると回り、やがて一人の少女の姿になった。
少女は古い青色の服を着て、手には小さな貝殻を握っていた。
「こんにちは。わたしはルナ。この島の灯台を守っているの」
「ルナさん、どうして島へ渡れないの?」とソラが尋ねた。
ルナは悲しそうに灯台を振り返った。
「ずっと昔、わたしには大切な友達がいたの。その子と、灯台の明かりを毎晩一緒に見るって約束したんだ」
「その友達は、今どこにいるの?」とミオ。
「分からないの。ある日、その子は島を離れて、それきり帰ってこなかった。わたしはずっと待っていたけれど……いつの間にか、その子の名前まで思い出せなくなってしまったの」
ルナの手の中で、貝殻がかすかに光った。
「でも、どうして約束を忘れてしまったんだろう?」と悠真が尋ねる。
「長い時間がたつうちに、約束を守ることだけが大切になってしまったの。友達が帰ってこない理由を考えるのが怖くて、ただ待ち続けていたんだと思う」
ハルはルナの隣に座った。
「待つことは大切だけど、待っている間にも、いろんなことが起きるよ。友達のことを大切に思っている気持ちは、約束を守ることだけで決まるわけじゃないと思う」
ルナは驚いたようにハルを見た。
その瞬間、湖の水面に一本の光の道が現れた。
島へと続く、透明な橋だった。
「道ができた!」とアヤ。
「ルナさん、僕たちも一緒に行くよ」と悠真は手を差し出した。
ルナは少し迷ってから、その手を取った。
六人と一人は光の橋を渡り、島へと向かった。
島に着くと、灯台の扉がひとりでに開いた。
内部の壁には、二人の子どもが並んで灯台を見上げている絵が描かれていた。
その下には、見慣れない文字が刻まれていた。
【約束の相手は、灯台の最後の光の中に眠る】
「最後の光……。いったい、どういう意味なんだろう?」とナナ。
ルナは貝殻を胸に抱きしめた。
「この灯台の一番上には、特別な明かりがあるの。でも、わたし一人では、ずっと点けることができなかった」
そのとき、灯台の階段の上から、懐かしそうな声が聞こえてきた。
「ルナ……。やっと、ここまで来てくれたんだね」
ルナは目を見開いた。
「その声……まさか!」
階段の先に、もう一つの小さな光が現れた。
そして、その光は、ゆっくりと人の姿へと変わり始めた。
――ルナが忘れてしまった約束の相手とは、いったい誰なのだろうか。




