↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉妹レンタル  作者: なんなん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
337/409

笑わない街

虹色の橋を渡り終えると、六人の目の前に大きな街が現れた。


高い時計塔。


大きな広場。


たくさんの家。


パン屋や本屋、花屋まである。


一見すると、とても賑やかな街だった。


けれど――。


「……静かだね」


ナナがつぶやいた。


道を歩く人たちは、みんな黙っている。


子どもたちも遊んでいるのに、笑い声がない。


パン屋の店員も、花屋のおばあさんも、誰も笑っていなかった。


「こんにちは!」


アヤが元気よく挨拶する。


街の人たちは振り向く。


けれど、誰も返事をしない。


「本当に、誰も笑わない……」


ソラが不思議そうに周囲を見る。


すると、広場の中央にある噴水の前で、一人の少女が立ち止まった。


少女は六人を見ると、驚いたような顔をした。


「……旅の人?」


「そうだよ!」


ハルが答える。


少女は周囲を気にしながら、小声で言った。


「ここでは、笑ってはいけないの」


「えっ?」


アヤが驚く。


「どうして?」


少女は時計塔を見上げた。


「昔は、みんな笑っていた。でも、ある日から街の時計が止まってしまって……」


「時計が止まったことと、笑わないことに関係があるの?」


悠真が尋ねる。


少女は頷いた。


「時計が止まった日、街から『楽しい』という気持ちが消えたの」


ナナが時計塔を見る。


時計の針は、ずっと同じ場所を指している。


「じゃあ、時計を動かせば笑顔が戻るかもしれないね」


「それが……できないの」


少女は首を振った。


「時計塔の鍵がなくなってしまったから」


その瞬間、ハルが何かを見つけた。


「あれ!」


噴水の中に、金色の小さな鍵が沈んでいる。


「これじゃない?」


少女が目を見開く。


「本当だ……!」


アヤが噴水のそばへ行く。


しかし、鍵に手を伸ばした瞬間――。


カチン。


鍵が消えてしまった。


「えっ!?」


全員が驚く。


噴水の水面に文字が浮かび上がった。


【笑顔を取り戻した者だけが、この鍵を手にできる】


「笑顔を取り戻す?」


ミオが首をかしげる。


「でも、笑うこと自体ができなくなっているんだよね」


悠真は街の人々を見渡した。


すると、パン屋の前で一人の男の子が、転んでしまった。


誰も助けに行かない。


男の子は立ち上がり、服についた砂を払った。


ハルが駆け寄る。


「大丈夫?」


少年は頷いた。


「うん……」


ハルは少年の手を取った。


「じゃあ、一緒に行こう!」


少年は少し驚いた。


そして――。


ほんの少しだけ口元が緩んだ。


「……ふふ」


「今、笑った!」


アヤが叫ぶ。


その声を聞いて、街の人たちが振り返る。


少女も驚いている。


「笑った……」


すると噴水の水面に、小さな光が灯った。


カチッ。


金色の鍵が、今度は水の上に浮かび上がる。


「笑顔が戻ったから……?」


ナナが近づく。


しかし、鍵を取ろうとすると、また消えてしまった。


「まだ足りないみたい」


悠真が言った。


「一人だけじゃなくて、街全体の笑顔が必要なんだ」


六人は街を歩き始めた。


アヤはパン屋のお手伝いをしながら、店員と話した。


ナナは花屋のおばあさんの話を聞いた。


ミオは子どもたちと一緒に遊んだ。


ソラは街の人たちに、歌う山で聞いた歌を教えた。


ハルは転んだ子どもたちと遊んだ。


悠真は、それぞれの話を聞いた。


最初は誰も笑わなかった。


けれど――。


少しずつ。


本当に少しずつ。


街に笑顔が増えていった。


そして最後に、時計塔の鐘が――。


カーン……。


一度だけ鳴った。


街の人々が空を見上げる。


止まっていた時計の針が、ほんの少し動いた。


噴水から金色の鍵が浮かび上がる。


今度は消えなかった。


少女が鍵を手に取る。


「……これで、時計を動かせる!」


六人は時計塔を見上げた。


しかし、時計塔の扉には新しい文字が浮かんでいた。


【時計を動かすには、街で一番大切な笑顔を見つけてください】


少女が驚く。


「街で一番大切な笑顔……?」


悠真は街を見渡した。


まだ、誰もその答えを知らなかった。


そして時計塔の上から――。


「……助けて」


小さな声が聞こえた。


六人は顔を見上げた。


時計塔の一番上。


そこに、小さな影が立っていた。


笑顔を失った街の秘密は、まだ時計塔の中に眠っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。