↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉妹レンタル  作者: なんなん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
334/409

風鈴の木

五人は、音のない町の丘を登っていた。


丘の頂上には、昨日までなかったような大きな木が立っている。


枝には、数えきれないほどの風鈴が吊るされていた。


「こんなにたくさんあるのに……」


ナナが風鈴を見上げる。


「音がするのは、一つだけなんだね」


――チリン。


また一つだけ、風鈴が鳴った。


町から来た少年が、その音を聞いて木を指差す。


そして地面に文字を書いた。


【昔は、全部鳴っていた】


「じゃあ、どうして鳴らなくなったの?」


悠真が尋ねる。


少年は首を横に振った。


分からないらしい。


そのとき、木の幹に小さな文字が浮かび上がった。


【音は、聞こうとする人がいるから生まれる】


「どういう意味だろう?」


アヤが首をかしげる。


「音を出すだけじゃ足りないってことかな?」


ナナが考える。


「誰かが聞いてくれないと、音は意味を持たない……とか」


その瞬間、少年が地面に何かを書いた。


【聞く】


そして、自分の耳に手を当てる。


五人は静かになった。


風の音。


木の葉の揺れる音。


遠くを流れる川の音。


今まで聞こえなかった小さな音が、少しずつ聞こえてくる。


「……聞こえる」


ハルが驚いた。


「この世界にも、音はあったんだ!」


悠真も耳を澄ます。


すると、木の中からかすかな音が聞こえた。


――コン……。


「今のは?」


アヤが木の幹に耳を近づける。


――コン、コン。


まるで誰かが木の中から叩いているようだった。


「ここだ!」


ハルが指差す。


幹には小さな扉があった。


しかし、取っ手がない。


少年が近づいて、扉に耳を当てる。


そして、三回叩いた。


コン、コン、コン。


すると扉の向こうから――。


コン、コン、コン。


同じように三回返事があった。


「返事が返ってきた!」


ナナが驚く。


アヤが扉に手を置いた。


「誰かいるの?」


返事はない。


代わりに、風鈴が一つ鳴った。


――チリン。


その音に合わせるように、別の風鈴が鳴る。


――チリン。


さらにもう一つ。


――チリン。


次々と音が広がっていく。


「すごい……!」


ハルが笑顔になる。


やがて、丘全体に音が響き始めた。


風鈴。


鳥の声。


川のせせらぎ。


木々のざわめき。


町の鐘。


「音が戻ってきてる!」


ミオが喜ぶ。


音のない町にも、少しずつ音が戻っていった。


そして――。


町の少年が、初めて声を出した。


「……ありがとう」


五人は驚いた。


「声が!」


アヤが嬉しそうに笑う。


少年は自分の声を確かめるように、もう一度言った。


「ありがとう!」


町からも歓声が聞こえてくる。


「聞こえる!」


「声が戻った!」


「音がする!」


静かだった町が、一気に活気づいた。


少年は笑顔で悠真たちに頭を下げた。


「僕の名前は、ソラ」


「ソラくんか!」


ハルが握手をする。


「よろしく!」


ソラも笑った。


その瞬間、風鈴の木の一番高い枝に、一つの新しい風鈴が現れた。


そこには文字が刻まれていた。


【第二の世界――第一の音】


そして、その風鈴が鳴った。


――チリン。


すると遠くの空に、一本の虹色の道が現れた。


道の先には、巨大な山。


その山の頂上には、白く輝く建物が見える。


案内役の本が静かにページを開いた。


【次の物語――「歌う山」】


悠真たちは顔を見合わせる。


アヤが笑った。


「次は山だね!」


ナナも頷く。


「今度は、どんな音が待っているんだろう」


ハルはソラを見る。


「一緒に行く?」


ソラは少し考えてから、笑顔で頷いた。


「うん!」


こうして、第二の世界の最初の仲間が加わった。


そして五人だった旅は――六人の旅へと変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。