はじまりの図書館
「はじまりの図書館……」
悠真たちは、森の奥へ続く道を歩いていた。
先頭を歩くハルが、何度も地図を確認する。
「もうすぐだよ!」
「楽しみだね!」
アヤも嬉しそうだ。
やがて木々が途切れ、目の前に大きな建物が現れた。
それは塔のように高い図書館だった。
壁は白く、屋根は青い。
入口には大きな時計があり、針は止まっていた。
「こんな大きな建物、いつの間にできたんだろう?」
ナナが驚く。
ミオは首をかしげた。
「私がこの辺りを通ったときには、何もなかったよ」
「この世界は、必要になった場所が生まれてくるのかもしれないね」
悠真が言った。
五人が入口へ近づくと、扉がひとりでに開いた。
ギィィ……。
「いらっしゃい」
中から声がした。
「誰?」
アヤが尋ねる。
すると、受付の奥から一冊の本がふわふわと飛んできた。
「えっ、本が飛んでる!」
ハルが目を丸くする。
本は受付の机の上に着地した。
表紙には――。
【はじまりの図書館】
と書かれている。
「私はこの図書館の案内役です」
本が話した。
「本がしゃべった!」
アヤが驚く。
「驚かれることには慣れています」
本が淡々と答えた。
ナナが思わず笑った。
「面白い図書館だね」
案内役の本はページを開いた。
すると、空中に大量の文字が浮かび上がった。
【この世界で生まれた物語】
【出会い】
【町】
【約束】
【旅】
【友情】
【発見】
そして、その中に一つだけ、文字のないページがあった。
「このページは?」
悠真が尋ねる。
本は静かに答えた。
「まだ物語が始まっていない場所です」
「まだ始まっていない?」
「はい」
本のページがめくられる。
そこには大きな白い地図が描かれていた。
地図の中央には、ひだまり町。
???の森。
そして、はじまりの図書館。
しかし、その先は真っ白だった。
「この世界は、まだここまでしかできていません」
ハルが地図を見つめる。
「じゃあ、これから僕たちが行った場所が、地図に増えていくの?」
「その通りです」
ハルの目が輝いた。
「じゃあ、もっといっぱい作ろう!」
「待って」
悠真が笑う。
「場所を作るだけじゃなくて、そこで出会った人たちの物語も大切にしよう」
「うん!」
ハルが頷いた。
すると、本のページが突然勢いよくめくれ始めた。
バラバラバラッ!
「どうしたの?」
ナナが驚く。
一冊の本から、青い光が飛び出した。
光は空中で一枚の紙になった。
【緊急のお知らせ】
全員が顔を見合わせる。
紙には続きが書かれていた。
【世界のどこかで、最初の物語が消えかけています】
「物語が……消える?」
ミオが不安そうに聞く。
案内役の本が答える。
「この世界では、忘れられた物語が消えてしまうことがあります」
「それを止めるには?」
悠真が尋ねる。
本は一冊の古い本を棚から取り出した。
表紙には――。
【最初の物語】
と書かれている。
しかし、その本の中身は真っ白だった。
「この本に、最初の物語を書き戻さなければなりません」
アヤが本を受け取る。
「じゃあ、その物語を探しに行こう!」
ナナも頷いた。
「私たちが出会った人たちの物語も、きっと力になるよ」
ハルは拳を握った。
「ひだまり町のみんなにも教えよう!」
ミオも笑った。
「私も一緒に行く」
五人が図書館を出ようとした、そのとき。
止まっていた入口の時計が――。
カチッ。
動き始めた。
そして時計の針が示した時刻は、
【十二時】
だった。
その瞬間、図書館の奥に隠されていた扉が開く。
その先には、地下へ続く長い階段。
壁には一つの文字が浮かんでいた。
【最初の物語は、地下に眠る】
悠真たちは顔を見合わせた。
アヤが笑う。
「なんだか、また大冒険になりそうだね」
五人は階段を下り始めた。
まだ誰も知らない。
この地下に眠る物語が――この世界そのものの秘密につながっていることを。




