最初の約束
「葉っぱが……!」
ハルが嬉しそうに声を上げた。
巨大な木の枝先に生まれた一枚の葉。
それは淡い緑色に輝きながら、ゆっくりと揺れていた。
「『この世界で出会った人を、ひとりにしない』……」
ナナが箱から出てきた紙を読み返す。
ミオも静かに頷いた。
「だから、私の声が聞こえたのかもしれない」
「どういうこと?」
アヤが尋ねる。
「私、この森に来る前からずっと一人だったの。でも、ここで誰かの声を聞いた。ずっと『来て』って呼ばれていた」
ミオは木を見上げた。
「きっと、誰かと出会うためだったんだと思う」
そのときだった。
木の葉が一枚、また一枚と増えていく。
「わあ……!」
アヤが目を輝かせる。
しかし、途中で葉の成長が止まった。
「……あれ?」
ハルが不思議そうに木を見る。
すると、光の声が聞こえた。
「約束は、思い出すだけでは完成しない」
「じゃあ、何が必要なの?」
悠真が尋ねる。
光は答えた。
「約束を、今の世界でも続けること」
五人は顔を見合わせた。
「つまり……」
ナナがゆっくり言う。
「この世界で、誰かを一人にしないこと?」
「そういうこと」
光が答える。
その瞬間、ミオが一歩前へ出た。
「だったら、私から始める」
「ミオちゃん?」
「私、旅をしている間に、いろんな人と出会った。でも、忙しくなると、そのまま別れてしまうこともあった」
ミオは少し寂しそうに笑った。
「これからは、出会った人のことを忘れないようにする」
すると、木の枝に新しい葉が生まれた。
「一枚増えた!」
ハルが喜ぶ。
続いてアヤが手を挙げる。
「じゃあ私も!」
アヤは胸を張った。
「困っている人がいたら、できることを一緒に考える。レンタル姉妹としても、ずっと大切にしたいことだよね」
二枚。
さらに葉が増える。
ナナも続いた。
「私は……一人で悩んでいる人がいたら、ちゃんと話を聞く」
三枚。
悠真も笑った。
「僕は、出会った人と一緒に歩く。どこまで行けるか分からなくても」
四枚。
最後にハルが木の前に立った。
「僕は――この町を、帰ってきたいと思える場所にする」
その言葉と同時に、木全体が大きく光った。
枝が伸びる。
葉が次々と生まれる。
そして、森の奥まで光が広がっていった。
「すごい……!」
ミオが声を上げる。
巨大な木は、もう葉のない木ではなかった。
たくさんの葉が風に揺れている。
その葉の一枚一枚に、小さな光が宿っていた。
光の声が響く。
「最初の約束は、今ここで続き始めた」
すると、木の幹に新しい文字が浮かび上がった。
【第一章――出会い】
「第一章……?」
悠真が読み上げる。
「じゃあ、これから第二章、第三章って続いていくのかな?」
アヤが尋ねると、光は答えた。
「そう。この世界には、まだ始まったばかりの物語がある」
突然、森のさらに奥から鐘の音が聞こえた。
――カーン……。
一度。
そして二度。
三度。
ミオが地図を広げる。
すると、今まで何もなかった場所に新しい道が描かれていた。
その先には――。
【はじまりの図書館】
という文字。
「図書館……!」
ハルが目を輝かせる。
ナナも地図を覗き込んだ。
「この世界の物語が、全部そこに書かれているのかも」
悠真は新しい道を見つめた。
「行ってみよう」
五人は頷いた。
こうして、ひだまり町から始まった最初の冒険は、新しい場所へとつながっていく。
そのころ――。
森の奥、誰もいない小さな道の上で、一冊の本がひとりでに開いた。
最初のページには、こう書かれていた。
【この世界を訪れた者たちへ】
そして、その下に――。
まだ誰も知らない名前が、一つだけ記されていた。




