最初のお客さま
「最初のお客さま……?」
ハルは、ひだまり町の入口に立ったまま、長い道の向こうを見つめていた。
遠くから、何かがこちらへ近づいてくる。
コツ……コツ……。
小さな足音だった。
「誰か来るよ!」
ナナが教える。
アヤは町の入口まで走っていった。
「ひだまり町へようこそ!」
「まだ早いよ、アヤ」
悠真が笑う。
「姿が見えてからにしよう」
「そ、そうだった!」
アヤが少し照れながら戻ってくる。
やがて、道の向こうから一人の女の子が歩いてきた。
背中には小さなかばん。
手には古い地図。
女の子は町を見つけると、驚いた顔をした。
「……町?」
ハルが前へ出る。
「こんにちは!」
女の子は少し驚いたあと、笑った。
「こんにちは。ここって……ひだまり町?」
「うん!」
「本当にあったんだ……」
女の子は地図を広げた。
そこには何もない場所に、薄い線で小さな印が描かれている。
「この世界を旅していたら、地図に突然この町が現れたの」
「突然?」
悠真が聞く。
「うん。さっきまで何も描かれていなかったのに……」
女の子は地図を指差した。
そこには、確かに【ひだまり町】と書かれている。
アヤが目を輝かせる。
「じゃあ、この町ができたから地図にも載ったんだ!」
「たぶん……」
女の子は少し恥ずかしそうに言った。
「実は、お願いがあるの」
ハルが聞く。
「お願い?」
「私、旅の途中でずっと一人だったの。だから……少しだけ、誰かと一緒に過ごしたくて」
その言葉を聞いたナナが、優しく笑った。
「それなら、ここにいていいよ」
「え?」
「ひだまり町は、みんなが集まるための町だから」
ハルも大きく頷く。
「一緒にご飯を食べよう!」
「ご飯?」
「まだ何を作るか決めてないけど!」
アヤが笑った。
「そこから始めればいいんだよ!」
四人は町の中央へ向かった。
しかし――。
女の子が突然立ち止まった。
「……あれ?」
「どうしたの?」
悠真が振り返る。
女の子は地図を見ている。
さっきまで何もなかった場所に、一本の道が描かれていた。
その道は、ひだまり町から遠く離れた場所へ続いている。
そして、その先には――。
【???の森】
という文字が浮かんでいた。
「森……?」
ハルが首をかしげる。
アヤが地図をのぞき込む。
「この世界には、まだ知らない場所があるんだね」
「うん……」
女の子は地図を握った。
「実は、私もその森を探していたの」
悠真が尋ねる。
「何かあるの?」
女の子は首を横に振った。
「わからない。でも、森の奥から声を聞いたことがあるの」
「声?」
ナナが聞き返す。
「うん。『ここに来て』って……」
その瞬間。
町の中央にある大きな木が、突然ざわざわと揺れ始めた。
風は吹いていない。
葉の間から、一枚の紙が落ちてくる。
悠真が拾い上げた。
そこには新しい依頼が書かれていた。
【???の森へ行き、呼んでいる声の正体を探してください】
ハルが目を輝かせる。
「冒険だ!」
アヤも笑った。
「ひだまり町の最初の依頼だね!」
ナナは少し緊張しながらも頷いた。
「みんなで行こう」
最初のお客さまを迎えたばかりのひだまり町。
その町に、最初の冒険の依頼が届いた。
そして――。
森の奥では、まだ誰も知らない何かが、静かに彼らを待っていた。




