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忘れられた駅

「この地図だと……森の奥に駅があるみたい」


悠真は、白い鳥から受け取った地図を広げた。


アヤは森を見渡す。


「駅ってことは、昔は電車が走ってたのかな?」


「でも、今は線路も見えないよ……」


ナナが少し不安そうに言った。


三人は森の中へ入っていった。


しばらく歩くと、木々の間から古い線路が姿を現した。


「本当にあった!」


線路は草に覆われていた。


さらに進むと、小さな駅舎が見えてきた。


看板には、かすれた文字で、


【なつかし駅】


と書かれている。


「変わった名前だね」


悠真が笑う。


アヤが駅舎の扉を開ける。


ギィィ……。


中には古いベンチと時計、そして切符売り場が残っていた。


しかし、人の姿はない。


「誰もいないね」


ナナがベンチに座る。


その瞬間――


カチッ。


駅の時計が動き始めた。


「えっ?」


止まっていたはずの時計の針が、ゆっくり進んでいく。


そして、ちょうど十二時になる。


カン、カン、カン……。


遠くから電車の音が聞こえてきた。


「電車!?」


三人がホームへ走る。


森の向こうから、淡い光に包まれた列車が近づいてきた。


けれど、列車はホームに止まらない。


そのまま、三人の前を静かに通り過ぎていった。


車内にはたくさんの人が乗っていた。


子ども。


お年寄り。


学生。


仕事へ向かう人。


みんな楽しそうに話している。


「昔の記憶なんだ……」


悠真がつぶやく。


すると、ホームの掲示板に文字が浮かんだ。


――「この駅には、たくさんの『またね』が残っています」


ナナが首をかしげる。


「またね……?」


アヤが駅舎の中を調べる。


すると、壁に無数の小さな紙が貼られていた。


『また明日ね』


『次の休みに会おう』


『元気でね』


『またこの駅で』


一枚一枚が、昔この駅を利用した人たちの言葉だった。


「駅って、出会いだけじゃなくて……別れの場所でもあったんだね」


悠真が言う。


ナナは一枚の紙を見つめた。


『おばあちゃん、また来るね』


その文字の下には、日付が書かれていた。


「この人は……本当に戻ってきたのかな?」


三人は駅の古い記録を探した。


すると、最後のページに答えがあった。


そこには、


『何年も後になって、あの子はこの駅に戻ってきました』


と書かれている。


『駅はもう使われていませんでした』


『それでも、ベンチに座って、昔のことを思い出しました』


『そして言いました』


『ただいま』


ナナが目を細める。


「……帰ってくることも、記憶をつなぐことなんだね」


アヤがうなずく。


「うん。だからこの駅は、誰かを待ってるんじゃなくて、帰ってくる人のために残ってるのかも」


そのとき、ホームに再び光の列車が現れた。


今度は、ゆっくりと駅に止まる。


ドアが開いた。


車内には誰もいない。


代わりに、座席の上に一冊の小さなノートが置かれていた。


悠真が手に取る。


表紙には、


――『忘れられた場所を訪ねる人へ』


と書かれていた。


開くと、新しい依頼が現れた。


【依頼――思い出を失った人に、帰る場所を見つけてください】


「帰る場所……」


悠真はノートを見つめる。


アヤはすぐに立ち上がった。


「よし! 次のお仕事だね!」


ナナも小さく笑った。


「誰かが帰る場所を探しているなら……私たちも一緒に探したい」


三人は駅を後にした。


森を抜けると、夕暮れの空が広がっていた。


その向こうには、見知らぬ町の明かり。


悠真は思い出帳と新しいノートを抱え直す。


「今度は、誰かの『ただいま』を探す旅だね」


アヤとナナがうなずく。


レンタル姉妹の新しい依頼は、また一つの記憶へとつながっていく。


――そして、その依頼人は、まだ自分の帰る場所を思い出せずにいた。

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