空に残された記憶
「空にある記憶って、どうやって探すの?」
港へ戻る船の上で、悠真は思い出帳を眺めていた。
アヤは空を飛んでいく白い鳥を指差す。
「たぶん、あの鳥が知ってるんじゃないかな?」
「でも、鳥さんは飛ぶのが速いよ……」
ナナが心配そうに言う。
すると白い鳥が突然、三人の船の上空を旋回した。
そして――
ポトッ。
一枚の白い羽根を落としていった。
「わっ!」
悠真が受け取る。
羽根には、小さな文字が浮かび上がっていた。
――「風の丘へ」
「場所が分かった!」
アヤが地図を広げる。
「島の北側に、風の丘っていう場所があるよ!」
三人は島へ戻り、風の丘を目指して歩き始めた。
丘の頂上には、古い展望台があった。
そこからは海と本土、そして空が一望できる。
しかし、何もない。
「ここで何をすればいいんだろう?」
ナナが首をかしげる。
そのとき、強い風が吹いた。
ヒュウウウ……。
思い出帳のページが勝手にめくられる。
そして、真っ白なページに文字が現れた。
――「空を見上げて」
三人は空を見上げた。
青空の中に、雲が集まり始める。
やがて雲は一つの形になった。
それは――巨大な飛行船だった。
「飛行船……?」
悠真が驚く。
すると空から声が聞こえた。
『昔、この島には空を飛ぶ船がやってきていました』
「声がする!」
アヤが辺りを見回す。
『飛行船は島と遠くの町を結んでいました。人々は空から景色を眺め、遠くの人々と交流しました』
雲の飛行船がゆっくり動く。
その周りには、昔の人々の姿が映し出された。
子どもたちが手を振っている。
町の人たちが笑っている。
空から荷物を運ぶ人もいる。
ナナは静かに眺めていた。
「空にも……人と人をつなぐものがあったんだね」
すると、雲の景色が変わった。
飛行船が見えなくなる。
人々も消える。
そして最後に、小さな女の子だけが残った。
『飛行船がなくなったあと、みんなは空を見なくなりました』
女の子は空を見上げる。
『でも、空はなくなりませんでした』
アヤが微笑んだ。
「……素敵な言葉だね」
『だから、いつか誰かが思い出してくれることを願って、ここに記憶を残しました』
そう言うと、女の子の姿は光になった。
その光は三人の手元へ降りてきた。
光が思い出帳に触れる。
すると新しいページが現れた。
――『空を見上げる人がいる限り、空の記憶は消えない』
悠真は空を見上げた。
「記憶って、場所に残るだけじゃないんだね」
「うん」
ナナが答える。
「誰かが思い出した瞬間にも、残っていくんだと思う」
アヤは大きく伸びをした。
「じゃあ今回も依頼達成!」
その瞬間。
空の彼方から、何かが飛んできた。
白い鳥だった。
今度は三人の前に降り立つ。
足には小さな封筒が結びつけられていた。
「また依頼かな?」
悠真が封筒を開く。
中には一枚の紙。
【依頼――忘れられた駅を探してください】
「駅?」
アヤが目を輝かせる。
「今度は陸の上だね!」
ナナが紙の裏を見る。
そこには小さな地図が描かれていた。
地図の先には――
「……森?」
悠真がつぶやく。
三人は顔を見合わせた。
海。
橋。
空。
そして今度は、森の中にある忘れられた駅。
レンタル姉妹の記憶探しは、さらに新しい場所へ向かおうとしていた。
「よし!」
アヤが元気よく歩き出す。
「次の記憶を探しに行こう!」
ナナもその後を追う。
悠真は思い出帳を大切にしまい、二人と一緒に歩き始めた。
――次に待っているのは、誰にも使われなくなった古い駅。
そこには、まだ誰かを待ち続けている記憶が残っていた。




