これからも続く物語
悠真たちは、最後の道を歩いていた。
道の両側には、これまで出会った世界が広がっている。
名前を探した世界。
未来を選んだ世界。
選び直した世界。
未来がなかった世界。
今を取り戻した世界。
そして、まだ始まったばかりの新しい世界。
ミチが振り返る。
「本当に、たくさん旅したね」
ユイもうなずく。
「数えきれないくらい」
悠真は笑った。
「でも、まだ知らない世界もきっとある」
その言葉に、案内役の光が静かに輝いた。
「その通りです」
道の先に、小さな丘が現れた。
丘の上には一本の木。
その木には、これまでの歴史を表す無数の光が実っている。
第一の歴史。
第二の歴史。
第三の歴史。
そして――
第八十八の歴史。
その先には、まだ番号のない枝が伸びている。
悠真は驚いた。
「次の歴史が……もうある」
「はい」
「誰が作るの?」
案内役の光は、悠真たちではなく、その先にいる新しい世界の住民たちを見つめた。
「これから出会う者たちです」
その瞬間、新しい世界から小さな声が聞こえた。
「僕は、ここにいていい?」
悠真は答えた。
「もちろん」
別の声。
「まだ何になるか分からない」
「分からなくてもいいよ」
また別の声。
「途中で変わってもいい?」
「うん」
さらに声が続く。
「選び直しても?」
「もちろん」
たくさんの声が重なっていく。
悠真は気づいた。
この旅で探していたものは、決まった答えではなかった。
自分で問い続けること。
変わり続けること。
誰かと違っていてもいいこと。
そして、まだ知らない未来へ進めること。
丘の上の木が大きく揺れた。
空に最後の文字が浮かぶ。
【第八十九の歴史――これからも続く物語】
その文字を見たミチが笑った。
「第八十九?」
「うん」
ユイが空を見上げる。
「じゃあ、第九十もあるの?」
悠真は答えた。
「きっとあるよ」
「その次は?」
「そのまた次も」
すると、空に無数の数字が現れた。
【第九十】
【第九十一】
【第九十二】
【第∞】
そして数字さえ消えていく。
残ったのは、たった一つの言葉。
【これから】
悠真は、その文字を見つめた。
「物語は、終わらないんだね」
案内役の光が答える。
「一つの旅が終わっても、次の物語は始まります」
悠真は仲間たちを見る。
「じゃあ……帰ろうか」
ミチがうなずく。
「うん!」
ユイも笑う。
「また新しい世界に出会うためにね」
三人は丘を下りていく。
その後ろで、木の枝から新しい小さな芽が出た。
まだ名前はない。
まだ形も決まっていない。
けれど確かに、そこには新しい物語が始まっていた。
――第∞+3世界。
長く続いた「歴史を探す旅」は、ここで一つの区切りを迎えた。
けれど、世界は今日も変わり続ける。
誰かが問い、
誰かが選び、
誰かが迷い、
誰かが新しい道を作る。
そして、その一歩がまた、新しい歴史になる。
悠真たちの姿が遠ざかっていく。
空には、最初の星が輝いていた。
その星に刻まれていた言葉は――
【次の物語へ】
――第∞+3世界編・完。




