新しい物語
新しい世界には、まだ何もなかった。
けれど、誰もそれを寂しいとは思わなかった。
「ここから、何を作ろうか?」
ミチが尋ねる。
悠真は空を見上げる。
「みんなで決めてもいいし、一人ずつ決めてもいい」
ユイが地面に小さな線を描いた。
すると、その線が道になった。
別の光が木を作る。
また別の光が小さな池を作る。
誰かは何も作らず、静かに座る。
それぞれが違うことをしている。
それでも、世界は少しずつ広がっていく。
やがて中央に一つの大きな広場ができた。
広場の中央には石碑が立つ。
そこには、
【この世界には、決められた始まり方はありません】
と刻まれていた。
続いて、
【ここにいることから始めてもいい】
【誰かと始めてもいい】
【一人で始めてもいい】
【まだ始めなくてもいい】
悠真は石碑を見つめる。
「ずっと探してきた答えって、最初から一つじゃなかったんだね」
案内役の光が答えた。
「はい」
「未来も、名前も、時間も、世界も……」
悠真はこれまでの旅を思い出す。
「全部、自分で決めることもできる。でも、決めないこともできる」
ユイが笑う。
「そして、途中で変えてもいい」
ミチが続ける。
「一人で決めなくてもいい」
その瞬間、これまで旅してきた世界の光が空から降りてきた。
一つ。
また一つ。
それぞれの世界の思いが、新しい世界へ届いていく。
【ここにいる】
【自分で選ぶ】
【変わっていい】
【戻ってもいい】
【進んでもいい】
【まだ分からなくてもいい】
たくさんの言葉が星になった。
そして最後に――。
一番大きな星が空に浮かんだ。
そこには、
【これから】
とだけ書かれている。
悠真はその星を見上げる。
「これで、この世界の歴史が始まったんだね」
しかし、石碑の裏側を見ると、まだ何も書かれていない。
ミチが驚く。
「裏は真っ白だ!」
悠真は笑った。
「それは、これから生きる人たちが書いていく場所なんだよ」
すると石碑の前に、新しい扉が現れた。
今までとは少し違う。
扉には、歴史の番号もない。
ただ――
【次へ】
と書かれていた。
悠真は扉に手をかける。
そのとき、案内役の光が言った。
「悠真」
「なに?」
「この旅を始めたときと、今では……何か変わりましたか?」
悠真は少し考える。
「変わったよ」
「何が?」
「たぶん、変わっていいって分かったこと」
扉が光る。
そして、世界全体に最後の道が現れた。
その先には、まだ誰にも見つけられていない場所がある。
悠真は仲間たちと歩き出した。
次が、この長い歴史の最後の一歩になる。
そして――新しい物語の最初の一歩にもなる。




