↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
307/401

まだ見ぬものを育てる者

悠真たちは、無数の光が灯る道を進んでいた。


道の先には、何もない。


空も、大地も、建物もない。


ただ、たくさんの小さな光だけが浮かんでいる。


ミチが周囲を見回した。


「ここは……世界なの?」


案内役の光が答える。


「まだ世界になっていない場所です」


「まだ?」


「はい。ここにあるのは、未来になるかもしれない可能性だけです」


一つの光が悠真の前まで飛んできた。


「僕は、何になれるの?」


悠真は少し考えた。


「分からないよ」


「え?」


「でも、分からないからこそ、これから決められるんじゃないかな」


光は嬉しそうに揺れた。


すると、その光の下に小さな地面が生まれた。


草が一本。


次に小さな石。


そして水たまり。


「すごい!」


ユイが声を上げる。


しかし、別の光が近づいてきた。


「僕は、何にもなりたくない」


悠真はうなずく。


「それもいいと思う」


「本当に?」


「うん。何かになることだけが未来じゃないから」


その光は、その場に静かに浮かんだ。


すると、その周囲だけ穏やかな風が吹き始める。


そこには何も生まれなかった。


けれど、不思議と心地よい場所になった。


ミチが笑う。


「何もないのに、ちゃんと未来になってる」


そのとき、遠くから大きな光が現れた。


「私は、みんなの未来を一つにしたい」


大きな光が言った。


すると、あちこちの光が一つの場所へ引き寄せられ始める。


海を望む光。


森になりたい光。


町を作りたい光。


まだ決めない光。


それぞれの光が、無理に一つになろうとしていた。


「待って!」


悠真が叫ぶ。


大きな光が止まる。


「どうして?」


「みんな違う未来を持ってるから」


「一つになったほうが、きっと大きな世界になる」


「でも、大きくなることが正しいとは限らないよ」


悠真の言葉に、光たちが静かになる。


ユイが続けた。


「一緒にいることと、同じになることは違うんじゃない?」


すると、光と光の間に細い道が現れた。


海の光と森の光をつなぐ道。


町の光と静かな光をつなぐ道。


それぞれの未来を変えずに、行き来できる道だった。


「これなら……」


大きな光がつぶやく。


「違うままでも、一緒にいられる」


その瞬間、無数の光が一斉に輝いた。


何もなかった空間に、たくさんの世界が生まれていく。


けれど、その中央には一つだけ、何も生まれない場所が残った。


悠真が近づく。


そこには小さな文字が浮かんでいる。


【まだ、誰にも望まれていない未来】


「ここだけ、何もないね」


ミチが言う。


すると、空間の奥から声が聞こえた。


「僕は……望まれなかったから、ここにいるの?」


悠真は静かに答えた。


「違うよ」


「じゃあ、どうして?」


「まだ、君自身が何を望んでいるのか分からないだけかもしれない」


しばらく沈黙が続く。


やがて声が返ってきた。


「……僕は、誰かに望まれる未来じゃなくて、自分で望む未来を探したい」


その瞬間、何もなかった場所に一本の道が現れた。


道の先には、まだ何もない。


だからこそ、どこへでも行ける。


空に新しい文字が浮かび上がった。


【未来は、誰かに望まれるだけのものではない】


そして――


【自分で望む未来も、これから育てられる】


最後に、次の歴史が刻まれる。


【第八十三の歴史――自分で望む未来を探す者】


悠真は新しい道を見る。


しかし、その道の先には、今までとは違う景色が見えていた。


そこには――


「……未来が、消えてる?」


ユイが驚く。


道の先にあるのは、真っ白な空間。


未来の可能性すら存在しない場所だった。


悠真は、その白い空間を見つめる。


「今度は……未来がない場所なのかもしれない」


そして、一行はゆっくりと、その白い世界へ向かって歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。