これからの自分と出会う者
悠真たちは、町の中央にある大きな家の前に立っていた。
扉には、
【これからの自分】
と書かれている。
悠真がそっと扉を開ける。
ギィィ……。
中には、何もなかった。
机も椅子もない。
ただ、部屋の中央に一つの鏡が置かれている。
「鏡?」
ミチが近づく。
すると鏡の表面が波のように揺れた。
そして――。
そこに悠真の姿が映った。
「……僕?」
しかし、鏡の中の悠真は動かない。
「こんにちは」
悠真が声をかける。
鏡の中の悠真が、ゆっくり口を開いた。
「こんにちは」
ユイが驚く。
「未来の悠真なの?」
鏡の中の悠真は首を横に振った。
「違うよ」
「じゃあ、誰?」
「僕は、これからの可能性の一つ」
悠真は鏡を見つめた。
「僕が必ずこうなるわけじゃない?」
「うん」
「じゃあ、未来を教えてくれるの?」
「それもできない」
鏡の中の悠真は笑った。
「未来は、まだ決まっていないから」
すると鏡の中に、いくつもの景色が映り始めた。
知らない町。
見たことのない森。
遠くに浮かぶ島。
たくさんの光が集まる場所。
そして、誰もいない静かな草原。
どれも未来の可能性だった。
「こんなにあるんだ……」
ミチがつぶやく。
「未来は一つじゃない」
鏡の中の悠真が言った。
「でも、どの未来にも共通しているものが一つある」
「何?」
悠真が尋ねる。
鏡の中の悠真は、自分自身を指差した。
「選び続ける、ということ」
その瞬間、部屋の壁に新しい扉がいくつも現れた。
【進む】
【戻る】
【立ち止まる】
【探す】
【誰かと行く】
【一人で行く】
そして最後に――
【まだ決めない】
悠真は全部の扉を見渡した。
「どれを選んでもいいんだね」
「うん」
「間違えたら?」
「そのときは、また選べばいい」
ユイが笑う。
「なんだか、今までの世界と同じだね」
その言葉に、鏡が大きく輝いた。
すると鏡の中から、一人の小さな光が現れた。
光は部屋の中央に浮かび、悠真たちを見つめる。
「僕も……選んでいいの?」
悠真はうなずいた。
「もちろん」
「でも、何を選べばいいか分からない」
「それなら、分からないっていう選択もあるよ」
光はしばらく考えた。
そして、小さな声で言った。
「じゃあ……今は、ここにいたい」
その瞬間、部屋に床が生まれた。
窓が生まれた。
小さな椅子も生まれた。
光のための場所が、少しずつ出来上がっていく。
「自分で選んだから、世界も変わったんだ」
ミチが驚く。
すると家全体が揺れ始めた。
外を見ると、町の景色まで変化している。
昨日の家。
今日の家。
これから建つ家。
それらが混ざり合いながら、新しい町を作っていく。
そして空に巨大な文字が浮かんだ。
【これからの自分は、今の自分から始まる】
悠真はその文字を見上げた。
「未来の自分に会うって、未来を決めることじゃないんだね」
「そう」
鏡の中の悠真が答える。
「未来の自分と出会うことで、今の自分が何を選ぶのかを考えるんだ」
やがて鏡は静かに消えた。
その場所には、新しい扉だけが残っている。
扉には――
【第七十七の歴史――選び直せる未来】
と書かれていた。
悠真は扉に手をかける。
すると、向こう側から声がした。
「一度選んだ未来を、もう一度選び直してもいいんだよ」
悠真は少し驚いた。
そして仲間たちを見る。
「……行こう」
扉がゆっくり開く。
その先には、かつて選ばなかった未来が、静かに待っていた。




