変わり続ける者
扉の向こうには、不思議な広場が広がっていた。
そこには三人の人影が立っている。
一人は幼い姿。
一人は今の姿。
そしてもう一人は、少し先の未来を思わせる姿だった。
三人は互いを見つめていた。
「……僕は、誰?」
幼い姿の存在が尋ねる。
すると、今の姿の存在が答えた。
「僕も、君だよ」
「え?」
「そして、あっちにいるのも……僕なんだと思う」
未来の姿の存在が、静かにうなずいた。
「たぶんね」
悠真たちは驚いて三人を見た。
「三人とも同じ存在なの?」
すると三人は、それぞれ違う答えを返した。
「僕は昔の僕」
「僕は今の僕」
「僕は、これからの僕」
悠真は少し考えた。
「じゃあ、どれが本当の君なの?」
三人は顔を見合わせた。
そして、誰も答えなかった。
その瞬間、広場の中央に文字が浮かび上がる。
【本当の自分を、一つに決めますか?】
さらに、その下に三つの選択肢が現れた。
【昔】
【今】
【これから】
しかし、幼い姿の存在が首を横に振った。
「一つだけなんて、選べないよ」
今の姿も続ける。
「昔の僕がいたから、今の僕がいる」
未来の姿も言った。
「今の僕がいるから、僕の未来がある」
すると文字が変わった。
【昔も、今も、これからも】
三つの姿が、同時に光り始める。
だが、そのとき――。
広場の奥から声が聞こえた。
「変わらないほうが、安心じゃない?」
全員が振り返る。
そこには、真っ白な扉があった。
扉には、
【変わらない未来】
と書かれている。
扉がゆっくり開く。
その先には、何も変化しない世界が広がっていた。
木は成長しない。
川も流れない。
空も変わらない。
そして住民たちは、ずっと同じ姿のまま立っている。
「ここでは、何も変わらない」
声が響く。
「失うこともない。迷うこともない。間違えることもない」
悠真は静かに世界を見つめた。
「でも……進むこともない」
その言葉に、世界が一瞬だけ揺れた。
三人の姿のうち、未来の姿が前へ進む。
「僕は変わりたい」
今の姿も歩き出す。
「僕も」
そして幼い姿も続いた。
「僕も、変わってみたい」
三人が手を重ねる。
すると、止まっていた世界に小さな風が吹いた。
木の葉が一枚、落ちる。
川が流れ始める。
空に雲が生まれる。
そして、三人の姿も少しずつ変化していく。
幼い姿は少しだけ成長し、
今の姿は新しい表情を見せ、
未来の姿はまだ知らない姿へ変わっていく。
広場に新しい文字が浮かんだ。
【変わることは、自分を失うことではない】
続いて、
【昨日の自分も】
【今日の自分も】
【まだ見ぬ自分も】
そして最後に、
【すべて、自分の物語】
悠真は笑った。
「変わるって、終わることじゃないんだね」
その瞬間、三人の姿が一つの光になった。
光の中から、新しい道が伸びていく。
道の先には、まだ見たことのない世界。
そして看板には――
【第七十四の歴史――自分を見つけ続ける者】
と書かれていた。
悠真は仲間たちを見る。
「行こう」
新しい世界への扉が、ゆっくりと開いた。




