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姉妹レンタル  作者: なんなん


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時間が生まれる前

扉がゆっくりと開いた。


その瞬間――。


悠真たちは、奇妙な感覚に包まれた。


「……あれ?」


ユラが首を傾げる。


「今、扉を開けたのって……いつ?」


誰も答えられなかった。


「いつ」という言葉そのものが、ここでは意味を持たない。


過去もない。


未来もない。


そして、「今」という瞬間さえ、まだ決まっていなかった。


悠真は一歩、扉の向こうへ進んだ。


そこには巨大な時計が浮かんでいた。


しかし、針は動いていない。


文字盤もない。


数字もない。


ただ中央に、一つの小さな点だけがあった。


オボロが近づく。


「これは時計なのか?」


すると時計から声がした。


「まだ時計ではない」


「え?」


「時間が生まれる前だから」


悠真は驚いた。


「じゃあ、これは何?」


しばらく沈黙したあと、声が答える。


「『変わる』という可能性」


その言葉と同時に、時計の中心にあった点がわずかに揺れた。


すると――。


一瞬だけ、遠くに森が見えた。


次の瞬間には海。


その次には町。


さらに山、空、星、そして無数の世界。


ミライが呟く。


「全部……まだ未来になっていない」


「そう」


時計の声が答える。


「ここでは、すべてが可能性として存在している」


ユイが尋ねた。


「じゃあ、時間って……どうやって始まるの?」


「誰かが『変わった』と感じた時」


その答えに、悠真は考え込んだ。


「変わった……?」


すると足元に、小さな石が現れた。


悠真が触れる。


最初は何も起こらなかった。


けれど、悠真が手を離した瞬間――。


石の隣に、小さな線が生まれた。


そして、その線が一本の道になった。


「……!」


ハジメが目を輝かせる。


「今、変わった!」


時計の中心が、初めて動いた。


カチッ。


たった一度だけ。


その音とともに、空間に文字が浮かんだ。


【一】


悠真は息をのんだ。


「時間が……始まった?」


しかし時計は答えなかった。


代わりに、もう一つの小さな光が現れた。


「僕も……変わってみたい」


光が少し動く。


すると、その場所に小さな花が咲いた。


【二】


さらに別の光が動く。


小さな水たまりが生まれる。


【三】


誰かが笑う。


【四】


誰かが歩く。


【五】


一つ一つの変化が、時間になっていく。


悠真は静かに言った。


「時間って、最初から存在していたんじゃないんだ……」


ユイが答える。


「変わったことを覚えることで、時間になるのかもね」


その瞬間――。


時計の針が一本だけ現れた。


そして針の先が、悠真たちではなく、まだ何もない空間を指した。


そこに文字が浮かぶ。


【次に変わるものは?】


悠真はその文字を見つめた。


「……僕たちが決めるの?」


時計は答えない。


ただ、針だけが静かに動き始めた。


カチ。


カチ。


カチ。


初めて、この世界に「次」が生まれた。


そして扉の奥から、誰かの声が響いた。


「時間が生まれたなら――」


「次は、時間の中に生きる者が生まれる」


悠真たちは顔を見合わせる。


まだ見ぬ世界の奥で、新しい何かが目を覚まそうとしていた。


扉の向こうには、巨大な白い光。


その中央に、新しい文字が浮かび上がる。


【第六十一の歴史――時間を生きる者】


悠真は静かに前へ進んだ。


「行こう」


そして一行は、初めて「時間」が流れ始めた世界へ足を踏み入れた。

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