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姉妹レンタル  作者: なんなん


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未来を決めないことを選んだ世界

【第五十七の歴史】


新しい扉を開けると、そこには静かな世界が広がっていた。


空は薄い青色。


風はほとんど吹いていない。


川も流れているが、とてもゆっくりだった。


ユイが周囲を見渡す。


「ここ……時間が止まってるの?」


世界の意思が答えた。


「止まっているのではありません」


悠真が聞く。


「じゃあ?」


「急いでいないのです」


三人が歩いていくと、小さな町が見えてきた。


町には家がある。


畑もある。


広場もある。


けれど、住民たちは何かを急いで決めようとはしていなかった。


ある住民は空を眺めている。


別の住民は川の流れを見ている。


一人は何もせず、ベンチに座っている。


悠真が尋ねた。


「みんな、何をしているの?」


一人の住民が答えた。


「未来を決めていないんだ」


「どうして?」


「まだ、自分が何をしたいのかわからないから」


ユイが尋ねる。


「不安じゃないの?」


住民は少し考えた。


「最初は不安だった。でも、無理に決めた未来を後悔するより、考える時間が必要なこともあるって気づいたんだ」


そのとき、町の中央にある時計が鳴った。


一回。


二回。


しかし、針はほとんど動かなかった。


悠真が時計を見上げる。


「この町の時間も、ゆっくりなんだね」


「うん」


住民が笑う。


「ここでは、考える時間も未来の一部だから」


すると、町の端に小さな女の子のような光が現れた。


「私は……まだ決めたくない」


悠真はうなずく。


「いいと思うよ」


「でも、みんなに遅れてしまう」


ユイが首を横に振った。


「未来に、早いも遅いもないよ」


光は少し安心したように輝いた。


その瞬間、町の時計が一度だけ大きく鳴った。


カチッ。


針が少し進む。


「時間が動いた!」


住民たちが驚く。


世界の意思が言った。


「この世界では、誰かが自分の気持ちを決めたとき、時間も前へ進むようです」


悠真は笑った。


「じゃあ、決めないことも止まっていることじゃないんだ」


そのとき――。


町の中央に大きな道が現れた。


道の先には三つの扉がある。


【今すぐ決める】


【もう少し待つ】


【決めないまま進む】


住民たちは三つの扉を見つめる。


「どれが正しいんだろう?」


悠真は答えた。


「正しいものを探すんじゃなくて、自分に合うものを選べばいいんじゃないかな」


一人の住民は【今すぐ決める】へ。


別の住民は【もう少し待つ】へ。


そして、あの小さな光は――。


【決めないまま進む】


を選んだ。


すると、三つの扉はすべて開いた。


「全部つながってる!」


ユイが驚く。


悠真はうなずいた。


「未来を決める道と、待つ道と、決めないまま進む道。全部、未来なんだ」


町の時計が、今度は大きく動いた。


カチッ。


カチッ。


カチッ。


町の時間が少しずつ進み始める。


そして空に文字が浮かんだ。


【未来を決めないことは、未来を捨てることではない】


その下には――。


【考える時間も、未来を作る】


と刻まれた。


しかし、その瞬間。


町の外に、真っ白な道が一本現れた。


道の先には何もない。


ただ、遠くから声が聞こえる。


「僕は……決めることも、決めないこともできない」


悠真が顔を上げる。


「どういうこと?」


声は答えなかった。


代わりに、道の上に新しい文字が浮かんだ。


【第五十八の歴史――選べない未来】


ユイが悠真を見る。


「今度は、未来を選べない人の世界……」


悠真は新しい道を見つめた。


「行ってみよう」


三人は、ゆっくりと白い道を歩き始めた。


その先には、まだ誰にも選ばれていない未来が待っていた。

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