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どの未来にも属さない者

【第五十五の歴史】


白い空間の中央に、一つの光が浮かんでいた。


海の未来にも属さない。


森の未来にも属さない。


町にも、旅にも属さない。


ただ、そこにいる。


悠真が声をかける。


「君は、どんな未来がほしい?」


光はしばらく黙っていた。


「わからない」


ユイが近づく。


「じゃあ、何も決めなくてもいいんじゃない?」


「でも……みんなには未来がある」


光は少し寂しそうに言った。


「僕だけ、どこにも属していない」


悠真は首を横に振った。


「属していないことと、存在していないことは違うよ」


光が少し明るくなる。


「違う?」


「うん。君はここにいる。それだけでも、君自身の未来の始まりだと思う」


すると、光の足元に小さな円が現れた。


【ここにいる】


ユイが微笑む。


「最初の一歩だね」


光は円の中に入った。


すると、白い空間に小さな道が一本現れた。


しかし、その道はどこにもつながっていない。


光が言った。


「この道は、どこへ行けばいい?」


悠真は答える。


「君が決めればいい」


「でも、僕はどの未来にも行きたくない」


「だったら、行かなくてもいい」


「え?」


「その場所にいる未来を作ればいいんだよ」


光は驚いた。


「動かない未来……?」


「そうじゃない」


ユイが続ける。


「どこかへ行かないことも、君が選んだなら立派な未来だよ」


その瞬間、道の先に小さな広場ができた。


ベンチが一つ。


木が一本。


そして、空を見上げられる場所。


光はその場所を見つめた。


「ここなら……落ち着く」


すると、遠くから別の光がやってきた。


「ここにいてもいい?」


最初の光は少し迷った。


そして答えた。


「うん。でも、いつでも帰っていいよ」


新しい光が広場に入る。


二つの光は、少し離れた場所に座った。


それぞれが自分の場所を持ちながら、一緒にいる。


悠真はその様子を見て笑った。


「これも一つの未来だね」


ところが、突然――。


広場の地面に亀裂が入った。


「何?」


ユイが驚く。


亀裂の向こうから、無数の文字が浮かび上がる。


【所属する】


【所属しない】


【戻る】


【進む】


【残る】


【旅立つ】


文字が次々と現れては消えていく。


光が不安そうに言った。


「僕は、どれか一つを選ばないといけないの?」


悠真はすぐに答えた。


「そんなことはないよ」


「でも、未来は選ぶものなんじゃないの?」


「未来は選ぶこともできる。でも――」


悠真は目の前の光を見つめた。


「選ばないことを選ぶこともできる」


すると、すべての文字が消えた。


最後に残ったのは、一つだけ。


【自分で決める】


光がその文字を見る。


そして初めて、自分から言った。


「僕は……僕の未来を、僕が決めたい」


その瞬間、白い空間が大きく変わった。


広場の周囲に新しい景色が生まれる。


山。


川。


草原。


そして、遠くには町。


しかし、それらはどこにも属していない。


すべてが新しく作られたものだった。


「僕の未来……?」


「うん」


悠真がうなずく。


「君だけの未来だよ」


空に新しい文字が浮かぶ。


【第五十五の歴史――どの未来にも属さない者】


そして、その下にさらに文字が現れる。


【どの未来にも属さないことも、一つの未来になる】


ユイが空を見上げた。


「また新しい世界が生まれたね」


すると遠くに、見たことのない門が現れた。


門には――。


【第五十六の歴史――自分だけの未来を作る者】


と書かれている。


門の向こうから、まだ聞いたことのない声が響いた。


「僕も……自分だけの未来を作ってみたい」


悠真は笑った。


「じゃあ、一緒に行こう」


新しく生まれた未来を後にして、悠真たちは次の扉へ向かった。


まだ存在しない未来は、また一つ増えようとしていた。

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