つながりたいのに方法がわからない未来
【第五十三の歴史】
霧の中を進む悠真たち。
目の前には、何本もの道があった。
けれど――。
どの道も、途中で途切れている。
「どうして道が消えてるんだろう?」
ユイが尋ねる。
世界の意思が道の端を調べる。
「この道は、最初から最後まで作られていません」
悠真がしゃがみ込む。
「途中までしか作れなかったのかな?」
そのとき、近くから声がした。
「違うよ」
霧の中から、一人の住民が現れた。
「僕たちは、道の先に誰がいるのか知らないんだ」
「だから、道を作れない?」
「うん」
悠真は少し考えた。
「じゃあ、道を作る前に、声を届けてみたら?」
住民は首をかしげる。
「声?」
悠真は霧の向こうへ向かって叫んだ。
「ここにいるよ!」
しばらくすると――。
遠くから返事が聞こえた。
「……ここにいるよ!」
ユイが驚く。
「返事があった!」
すると、二つの声の間に、小さな光の点が生まれた。
光は少しずつ伸びていく。
やがて一本の道になった。
「声が道になった……」
住民が驚く。
悠真は笑った。
「最初から大きな道を作る必要はなかったんだ」
別の住民が霧の向こうから叫ぶ。
「ここにいるよ!」
さらに別の声。
「僕もいる!」
「私も!」
あちこちから声が返ってくる。
一つ。
二つ。
三つ。
たくさんの声が響き合う。
すると、途切れていた道が次々につながっていった。
しかし、一人の住民だけは声を出さなかった。
悠真が近づく。
「どうしたの?」
「僕は……何を言えばいいかわからない」
「じゃあ、『わからない』でいいんじゃない?」
「それでもいいの?」
「うん」
住民は少し勇気を出して言った。
「……わからない」
すると、その声からも小さな光が生まれた。
「僕にも道ができた……」
ユイが笑う。
「何を話すかより、まず『ここにいる』って伝えることが大事なのかもね」
世界の意思が続ける。
「つながりとは、同じ言葉を話すことではないのですね」
その瞬間、霧が晴れた。
目の前には、大きな広場が現れていた。
そこには、たくさんの住民が集まっている。
誰も同じではない。
話したい人。
静かにいたい人。
まだ迷っている人。
一人で歩きたい人。
誰かと歩きたい人。
それでも、全員の足元には一本ずつ道がある。
そして、その道の一部が互いにつながっていた。
広場の中央に文字が浮かぶ。
【つながるために、同じになる必要はない】
さらに新しい文字が現れる。
【ここにいると伝えることから、未来は始まる】
悠真は静かにうなずいた。
「これで、この未来も一歩進んだね」
ところが――。
広場の中央に突然、巨大な光が現れた。
光の中には、これまでの世界で生まれた未来が次々と映し出される。
海。
森。
町。
旅。
一人で歩く道。
みんなで歩く道。
まだ決めない未来。
そして、そのすべてをつなぐ無数の道。
ユイが息をのむ。
「全部の未来が……一つにつながろうとしてる?」
悠真は光を見つめた。
「でも、全部を一つにする必要はない」
すると光の中から声が響いた。
「では、違う未来をつないだ先には、何がある?」
悠真たちは答えを探す。
しかし、まだ誰にも答えはわからない。
光の向こうに、新しい扉が現れた。
扉には――。
【第五十四の歴史――違う未来がつながる場所】
と刻まれていた。
悠真は扉に手を伸ばす。
「行ってみよう」
扉の向こうから、無数の未来の声が聞こえてきた。
「僕たちは、どこへつながるんだろう?」
悠真はその問いに答えるため、ゆっくり扉を開いた。




