つながることと一人でいること
今回は第242話。つながっていない未来の町で、「つながること」と「一人でいること」の両方を大切にする展開です。
【第五十二の歴史】
悠真たちは、誰ともつながっていない未来の町に入った。
町には家がある。
広場もある。
道もある。
けれど、不思議なことに――誰も道を歩いていなかった。
ユイが小さな家の前で立ち止まる。
「ここには人が住んでいるの?」
すると、家の中から声がした。
「いるよ」
扉が開く。
一人の住民が顔を出した。
「でも、外にはあまり出ないんだ」
「どうして?」
その住民は少し考えて答えた。
「誰かとつながったら、自分の未来まで変えられてしまいそうだから」
悠真は黙って話を聞いた。
「つながることが怖いんだね」
「うん」
ユイが尋ねる。
「じゃあ、ずっと一人でいたい?」
住民は首を横に振った。
「それも……わからない」
すると、別の家からも声がした。
「僕もそう」
「私も」
町のあちこちから、住民たちの声が聞こえてくる。
誰もが、つながりたい気持ちと、自分の未来を守りたい気持ちの両方を持っていた。
世界の意思が言った。
「では、この町では『つながらない自由』も必要なのでは?」
悠真はうなずいた。
「うん。そして、『つながりたいときにつながる自由』も必要だと思う」
その瞬間、町の中央に一本の道が現れた。
しかし、その道には途中で大きな分かれ道がある。
右には、
【一緒に行く】
左には、
【一人で行く】
と書かれていた。
住民たちは驚いた。
「どちらを選んでもいいの?」
悠真が答える。
「もちろん」
一人の住民が右の道へ進んだ。
別の住民は左へ進む。
そして、しばらく歩いたところで――。
二本の道は、少し離れた場所で再びつながった。
ユイが笑った。
「一人で進んでも、いつか誰かと会えるんだね」
「うん。でも、会わなくてもいい」
悠真は道の先を見る。
「大切なのは、どちらを選ぶかを自分で決められることだと思う」
すると、町の中央にあった広場が変化し始めた。
半分は大きな集会所になった。
もう半分には、小さな一人用の家がいくつも並んだ。
そして、その間には自由に行き来できる道が作られた。
町の住民たちが少しずつ外へ出てくる。
「今日は一緒に話したい」
「僕は今日は一人でいたい」
「明日は一緒に行こうかな」
それぞれが自分の未来を選び始めた。
すると、空に文字が浮かぶ。
【つながることは、同じになることではない】
さらに、その下に――。
【離れていても、未来はつながる】
世界の意思が静かに言った。
「この町は、ようやく自分の未来を見つけたのかもしれません」
悠真は町を見渡した。
「うん。でも、まだ完成じゃない」
ユイが振り返る。
「どうして?」
悠真は町の外を指差した。
そこには、一本だけ誰にも使われていない道があった。
道の先には、白い霧が広がっている。
そして霧の中から、かすかな声が聞こえた。
「僕は……つながりたいのに、つながる方法がわからない」
悠真は一歩、道へ進んだ。
「じゃあ、今度はその方法を探そう」
ユイと世界の意思も後に続く。
霧の向こうに、新しい世界が姿を現す。
そこには、道はあるのに――。
どの道も、途中で消えていた。
空に新しい文字が浮かぶ。
【第五十三の歴史――つながる方法を知らない未来】
悠真は霧の中を見つめた。
「次は、この未来の番だね」
三人は、消えていく道の先へ歩き始めた。




