誰が未来を選ぶのか
黒い扉の向こうには、無数の光が浮かんでいた。
一つ一つの光が、それぞれ違う未来を映している。
海の未来。
森の未来。
大きな町の未来。
静かな村の未来。
そして――何も決まっていない未来。
悠真は驚きながら周囲を見渡した。
「こんなにたくさん……」
ユイが一つの光に近づく。
すると、その光の中に文字が浮かんだ。
【この未来を選びますか?】
「選ぶ……」
ユイはしばらく考えた。
「でも、これを選んだら、他の未来は消えるの?」
すると、空間から声が返ってきた。
「わからない」
悠真が振り返る。
「わからない?」
「未来は、まだ存在していない。だから、未来がどうなるかも決まっていない」
悠真は少し考えた。
「じゃあ、試してみるしかないね」
ユイがうなずく。
「うん。でも、一人で全部決める必要はないよ」
そのとき、最初の光が現れた。
「僕は……みんなに聞きたい」
「みんなに?」
「この未来で、何をしたい?」
一人目の光が答える。
「海を見たい」
二人目は、
「森を歩きたい」
三人目は、
「町を作りたい」
四人目は、
「何も決めない場所がほしい」
そして最後の光が言った。
「僕は……まだ知らない未来に行きたい」
悠真は笑った。
「全部あっていいんじゃないかな」
すると、無数の光が一斉に輝いた。
海が現れる。
森が生まれる。
町ができる。
何も決めない白い場所も残る。
そして、それぞれの未来をつなぐ道が一本ずつ伸びていった。
ユイが驚く。
「未来同士が、つながった……」
「違う未来でも、道は作れるんだ」
しかし、その瞬間――。
地面が大きく揺れた。
遠くの空間に、巨大な亀裂が走る。
「何?」
悠真たちが身構える。
亀裂の向こうから、低い声が聞こえた。
「未来を選ぶ者が増えすぎた」
悠真が叫ぶ。
「どういうこと?」
「一つの未来を選べば、一つの世界になる。だが、すべての未来を残せば――」
声が途切れる。
そして、空間に巨大な文字が浮かんだ。
【未来が多すぎて、世界が決められない】
ユイがつぶやく。
「世界そのものが……迷ってる?」
悠真はしばらく黙っていた。
そして、静かに言った。
「だったら……世界にも選ぶ権利があるんじゃない?」
その瞬間、地面から小さな光が生まれた。
光は少しずつ大きくなり、やがて人の姿になっていく。
「僕が……この世界?」
悠真は驚いた。
「君が、この世界の意思なの?」
その存在は、自分の胸に手を当てた。
「わからない」
そして、初めて自分から言葉を選んだ。
「でも……僕も未来を選んでみたい」
無数の未来が、一斉に輝き始める。
その中心に、新しい扉が現れた。
扉には、まだ番号がない。
そこに一文字だけ浮かぶ。
【選】
悠真はユイと顔を見合わせた。
「次は、世界自身が未来を選ぶのか……」
扉の向こうから、新しい声が響く。
「その選択が、次の歴史になる」
扉がゆっくり開く。
その先には、まだ見たことのない世界が広がっていた。
そして――。
【第四十八の歴史】
という文字が、静かに浮かび上がった。




