まだ存在しない未来
白い空間に、悠真たちは立っていた。
そこには、道も建物も、空も大地もなかった。
ただ、何もない場所に、一つの小さな光だけが浮かんでいる。
「ここに、僕の未来を作ってもいい?」
光から聞こえた声に、悠真はうなずいた。
「もちろん。ここは、まだ存在しない未来なんだから」
ユイも静かに言った。
「誰かが決めた未来じゃなくて、自分で作っていけばいいんだよ」
すると、光が少しだけ明るくなった。
「じゃあ……最初に、何を作ればいい?」
悠真は周囲を見回した。
「それは、君が決めていい」
「……僕が?」
「うん」
光はしばらく考えた。
そして――。
ぽん。
白い空間に、小さな石が一つ現れた。
「石……?」
ユイが近づく。
「どうして石を選んだの?」
「わからない。でも……何もない場所に、何か一つあったら安心する気がした」
悠真は笑った。
「じゃあ、それが君の未来の最初の一歩だね」
その瞬間、石の周りから細い線が伸び始めた。
一本。
二本。
三本。
線は地面になり、小さな大地へと変わっていく。
「すごい……!」
その大地には、まだ名前がない。
そして、決められたルールもなかった。
ユイが地面を見ながら言う。
「この世界には、最初から決められた未来がないんだね」
「うん」
悠真は答えた。
「だからこそ、ここにいる人が未来を作れる」
すると、遠くにもう一つの光が現れた。
「ここ……入ってもいい?」
最初の光が答える。
「うん。一緒に未来を作ろう」
新しい光が大地に触れる。
すると、今度は小さな草が生えた。
さらに別の場所には、小さな水たまりができた。
「僕は水がある場所がいい」
「じゃあ、ここに川を作ろう」
「私は森がほしい」
「じゃあ、木を一本植えてみよう」
みんなが思い思いに未来を作っていく。
だが、悠真はふと気づいた。
「待って」
全員が振り返る。
「どうしたの?」
悠真は遠くを指差した。
そこには、何も作られていない場所が残っていた。
「そこだけ、ずっと白いままだ」
最初の光が言った。
「そこは……何も決めたくない場所にしてもいい?」
悠真は少し驚いた。
「もちろん」
すると、白い場所の中央に文字が浮かんだ。
【ここは、まだ決めない】
ユイが微笑む。
「未来を作ることと、まだ作らないことも一緒に存在できるんだ」
その言葉に応えるように、大地の向こう側に新しい道が生まれた。
しかし、その道の先には――。
黒い扉が立っていた。
扉には、まだ歴史番号すら書かれていない。
悠真が近づく。
「これは……?」
扉の向こうから、声が聞こえた。
「まだ存在しない未来を作ったなら……次は、その未来を誰が選ぶ?」
悠真は扉を見つめた。
ユイも隣に立つ。
そして、最初の光が小さくつぶやいた。
「未来を作っただけじゃ……終わりじゃないんだ」
黒い扉が、ゆっくり開き始める。
その先には――。
まだ誰にも選ばれていない、無数の未来が広がっていた。
そして扉の上に、新しい文字が浮かび上がる。
【第四十七の歴史――まだ存在しない未来】
さらに、その下にもう一つの文字が現れた。
【次の未来を、誰が選ぶ?】
悠真は静かに前を向いた。
「行こう」
新しい未来への旅が、始まろうとしていた。




