帰る未来をつくる者
新しく生まれた町に、初めての朝が訪れた。
まだ名前のない町。
けれど、道があり、家があり、小さな広場もある。
悠真たちは広場に集まっていた。
「これから、この町をどうする?」
ユイが尋ねる。
町を作った存在は、しばらく考えてから答えた。
「みんなが帰ってこられる町にしたい」
名前を探し続けている影が頷く。
「じゃあ、帰る道をたくさん作ろう」
「うん!」
四人は町の外へ向かった。
海へ続く道。
森へ続く道。
未来へ続く道。
そして、遠くの世界へ続く道。
どの道も、最後には町へ戻ってくるように作った。
ユイが笑う。
「これなら、どこへ行っても帰ってこられるね」
ところが、そのとき――
一本だけ、町へ戻らない道が現れた。
「……あれ?」
悠真が近づく。
道はまっすぐ遠くへ伸びている。
どこにもつながっていない。
町を作った存在が言った。
「この道は、僕が作ってない」
すると道の先から声が聞こえた。
「僕が作った」
四人が振り返る。
そこには、小さな光が立っていた。
「僕は、帰りたくない」
ユイが尋ねる。
「帰る場所が嫌いなの?」
「違う」
光は首を振った。
「帰る場所は好き。でも、ずっと同じ場所にいるのは嫌なんだ」
悠真は少し考えた。
「じゃあ、この道はどこへ行くの?」
「分からない」
「それでもいいの?」
「うん。分からない場所へ行ってみたい」
その瞬間、町の中心にあった石碑が光った。
【帰ることと、出発することは両立する】
文字がさらに続く。
【帰る場所があるから、遠くへ行ける】
悠真は笑った。
「なるほど」
ユイも頷く。
「帰る場所があるって、ずっとそこにいなきゃいけないってことじゃないんだね」
町を作った存在も頷いた。
「じゃあ、この道も残そう」
新しい道が町の地図に加わった。
その瞬間――
町の外から、次々と光がやってきた。
海へ行っていた者。
森へ行っていた者。
別の世界を旅していた者。
みんな、それぞれの場所から戻ってきた。
「ただいま!」
「おかえり!」
「また来たよ!」
町が少しずつ賑やかになっていく。
記録者の声が響いた。
【第四十五の歴史――帰る未来をつくる者】
そして、新しい文章が刻まれる。
【帰る未来とは、戻ることだけを意味しない】
【いつでも出発でき、いつでも戻れる未来である】
町を作った存在は、空を見上げた。
「この町にも……名前が必要かな?」
名前を探し続けている影が答える。
「決めたいと思ったときに決めればいいよ」
「うん」
存在は笑った。
そのとき、町の外から声が響いた。
「町の名前を決める前に、相談したいことがあります!」
悠真たちが振り返る。
そこには、見知らぬ住民たちが立っていた。
「僕たちは、この町をもっと大きくしたい」
「私は、小さな町のままがいい」
「僕は、別の場所にも町を作りたい」
「私は、町を作らず旅をしたい」
意見はそれぞれ違っていた。
町を作った存在は困った顔をする。
「全部は無理なんじゃ……」
悠真が静かに言った。
「本当に?」
「え?」
「一つだけに決めなくてもいいんじゃないかな」
その言葉に、町の地図が大きく広がった。
町の隣に、新しい土地が生まれる。
その先に、別の町を作れる場所も現れる。
さらに遠くには、旅人だけが通る道もできた。
ユイが驚く。
「未来が増えてる!」
記録者が告げる。
【未来は、一つに決めなくてもいい】
そして、新しい門が現れた。
【第四十六の歴史――一つに決めない未来】
悠真は門を見つめる。
「次は、みんなの違う未来をどうやって一緒に残すか……か」
ユイが笑う。
「行ってみよう!」
四人は、新しい門へ歩き出した。
その後ろでは、まだ名前のない町が、少しずつ大きくなっていた。




