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姉妹レンタル  作者: なんなん


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名前をつくる場所

新しく生まれた道を、悠真、ユイ、そして名前のない影は歩いていた。


道の先には、巨大な建物があった。


壁も屋根もない。


ただ、空中に無数の文字が浮かんでいる。


「ここが……名前をつくる場所?」


ユイが見上げる。


「みたいだね」


影は少し緊張していた。


「名前って……どうやって決めるの?」


悠真は答えた。


「自分で決めてもいいし、誰かに呼ばれて決まることもある。でも――」


「でも?」


「最後に『この名前でいい』って思うのは、自分なんじゃないかな」


影は黙って、浮かんでいる文字を眺めた。


【ア】


【カ】


【ミ】


【ユ】


【ソ】


【ラ】


【ナ】


【ヒ】


文字が集まったり離れたりして、たくさんの名前の候補を作っていく。


影は一つの名前を見つめた。


「これ……いいかも」


そこには、


【ハル】


と書かれていた。


「ハル……」


影が声に出してみる。


すると、胸の光が少し強くなった。


「なんだか……あたたかい」


ユイが笑った。


「じゃあ、それでいいんじゃない?」


しかし影は首を横に振った。


「まだ分からない」


「そっか」


悠真は無理に勧めなかった。


すると、建物の奥から声が聞こえた。


『名前は、すぐに決めなくてもいい』


三人が振り返る。


そこには大きな本が置かれていた。


本の表紙には、


【名前を持つ前の記録】


と書かれている。


悠真が本を開く。


そこには、これまで出会ってきた存在たちの記録が並んでいた。


名前をすぐに決めた者。


時間をかけて決めた者。


最後まで名前を保留した者。


そして――


【名前を自分で選ぶことを待っている者】


影はそのページを見つめた。


「僕だけじゃないんだ」


「うん」


ユイが頷く。


「名前を決める時間も、その人の未来なんだと思う」


その言葉を聞いた瞬間、影の前に小さな扉が現れた。


扉には、


【決める】


【保留する】


【探し続ける】


の三つの選択肢が書かれている。


影は長い間、扉を見つめていた。


そして――


【探し続ける】


を選んだ。


すると、扉は消えずに、そのまま開いた。


「……これでいい」


影は初めて、自分の選択を自分で認めた。


その瞬間、胸の光から一文字が浮かび上がる。


【名】


しかし、それだけだった。


「名前そのものじゃない……」


悠真が言う。


「でも、大きな一歩だよ」


記録者の声が響いた。


「新しい記録を確認」


【第三十七の歴史――名前を探し続ける者】


さらに、その下に一文が刻まれる。


【名前は、決めた瞬間だけ始まるのではない。探している時間もまた、その人の歴史である】


影は文字を見つめた。


「僕、いつか自分の名前を決める」


悠真は笑った。


「その時は、教えてね」


「うん」


すると突然、建物全体が揺れた。


ユイが振り返る。


「何?」


空中に浮かんでいた文字が、一斉に一方向へ流れていく。


そして遠くに、巨大な門が現れた。


門には見たことのない文字が浮かんでいる。


【第三十八の歴史――名前を持たない世界】


悠真が目を見開いた。


「名前がない世界……?」


その瞬間、門の向こうから大量の声が聞こえてきた。


「僕たちは誰?」


「私は何?」


「名前がなくても、存在できる?」


「名前がない未来は、どうなる?」


影が悠真を見る。


「……行ってみたい」


悠真は頷いた。


「うん。みんなが待っているみたいだ」


三人は巨大な門へ向かって歩き始めた。


そして門が開いた瞬間――


そこには、名前を持たない者たちだけが暮らす、


見たことのない世界が広がっていた。

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