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姉妹レンタル  作者: なんなん


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第三十二の歴史ーー違う未来が出会う場所

扉の向こうには、不思議な光景が広がっていた。


空中に、無数の道が浮かんでいる。


道の一つは海へ。


一つは森へ。


一つは空へ。


さらに別の道は、未来の町へ続いている。


しかし、どの道も途中で途切れていた。


ユイが呟く。


「……これが、違う未来?」


記録者が本を開く。


【それぞれの未来は存在している】


【しかし、互いに交わることができない】


ミチが一本の道へ近づく。


「どうして?」


道に触れた瞬間、文字が浮かぶ。


【選択が違うから】


悠真は考えた。


「選択が違うと、一緒になれないの?」


すると、遠くから声がした。


「違う」


全員が振り返る。


一つの道の上に、少年が立っていた。


「選択が違うからじゃない」


少年の向こう側には、もう一人の少年がいる。


二人は互いを見ている。


しかし、二人の間には深い空白があった。


「僕たちは、同じ未来を選ばなかった」


一人が言う。


「だから、道が分かれた」


もう一人が続ける。


「でも……」


二人は同時に言った。


「もう一度、話したい」


ユイが驚く。


「二人は、友達だったの?」


二人は頷いた。


「ずっと一緒だった」


「でも、ある日、別々の未来を選んだ」


「それは悪いことじゃなかった」


「それぞれに行きたい場所があったから」


ミチが言った。


「じゃあ、どうして今、つながりたいの?」


二人は少し黙った。


そして、一人が答えた。


「離れてみて分かったんだ」


「何が?」


「違う未来を選んでも……」


もう一人が言葉を続ける。


「一緒に話すことは、できるんじゃないかって」


その瞬間。


二人の道の間に、小さな光が生まれた。


しかし、すぐに消えてしまう。


記録者が確認する。


「まだ、道がつながる条件が足りません」


悠真が尋ねる。


「何が必要なの?」


記録者は本を読む。


【相手の未来を変えようとしないこと】


【自分の未来も変えられないと思わないこと】


【ただ、相手の未来を知ろうとすること】


ユイが頷いた。


「それなら……できるかもしれない」


二人の少年が互いを見る。


最初の少年が言った。


「君は、どんな未来を選んだの?」


もう一人が答える。


「海へ行く未来」


「僕は森へ行く未来」


「楽しい?」


「うん」


「僕も」


二人は初めて笑った。


すると――


二本の道の間に橋が現れた。


ミチが目を輝かせる。


「つながった!」


しかし、橋の中央で光が止まる。


【共有開始】


その文字の下に、


【ただし、未来の統合は行わない】


と表示された。


悠真が頷く。


「二人の未来を一つにするんじゃない」


「違う未来のまま、つながるんだね」


その瞬間、橋が完成した。


海の未来と森の未来。


二つの道は、それぞれ別の方向へ続いている。


けれど、その途中に橋がある。


いつでも会える。


いつでも話せる。


いつでも別々の道へ戻れる。


ユイは橋を渡りながら言った。


「これなら、僕にも分かる」


悠真が尋ねる。


「何が?」


「未来を共有するって、同じ場所に行くことじゃないんだ」


ユイは二つの道を見た。


「違う場所へ行っても、相手の未来を大切にできることなんだ」


町の時計が遠くで鳴った。


カン――。


記録者の本に新しい文字が刻まれる。


【第三十二の歴史――違う未来が出会う場所】


【未来は、一つになる必要はない】


【違う未来のまま、つながることができる】


そのとき。


二人の少年の間にあった橋から、小さな光が飛び立った。


光は空へ上がり、一つの星になった。


星には、


【つながり】


という文字が浮かぶ。


すると、周囲の無数の未来にも次々と橋が生まれ始めた。


海と森。


町と空。


一人の未来と、みんなの未来。


名前を決めた未来と、まだ名前を決めていない未来。


それぞれの未来が、互いを尊重したままつながっていく。


しかし――


その瞬間、世界の一番奥で大きな音がした。


ドォン――。


悠真たちが振り返る。


無数の未来のさらに向こうに、巨大な黒い空間が開いている。


そこには、一本の道だけが浮かんでいた。


記録者が本を見る。


「……この道だけ、記録がありません」


キオクも首を振る。


「過去がない」


イマが言う。


「今もない」


トキの時計も動かない。


アスが空を見上げる。


「未来すら……見えない」


ユイが黒い空間を見る。


「じゃあ、あの道は何?」


すると黒い空間から声が聞こえた。


「僕は……どの未来にも選ばれなかった」


悠真たちは息をのむ。


声が続く。


「だから、どこにも行けない」


そして、空に新しい文字が現れた。


【第三十三の歴史――選ばれなかった未来】


悠真はその道を見つめた。


「……行こう」


ユイが頷く。


「今度は、僕も一緒に行く」


二人は黒い道へ向かって歩き始めた。


その先には――


まだ誰にも選ばれていない、ひとつの未来が待っていた。

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