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姉妹レンタル  作者: なんなん


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第二十八の歴史ーー次の世界を選ぶ者

巨大な門の向こうに、まだ名前のない世界が浮かんでいた。


その世界は、これまでのどの世界とも違っていた。


空があるようにも見える。


海があるようにも見える。


しかし、まだ何も決まっていない。


悠真たちは門の前に立った。


「……あの世界、本当に存在しているのかな?」


ミチが尋ねる。


記録者は本を開いた。


ページには一文字だけ。


【可能性】


「存在しているとも、存在していないとも記録できます」


「難しいな……」


ソラが苦笑する。


そのとき、名前のない少年が門に近づいた。


「僕には、あの世界が呼んでいるように感じる」


悠真が尋ねる。


「何て呼んでるの?」


少年は首を横に振った。


「分からない。ただ……」


少年は胸に手を当てる。


「『来て』って言ってる気がする」


すると門に文字が浮かんだ。


【次の世界を選んでください】


門の先に、三つの世界が現れる。


一つ目。


青い海に囲まれた世界。


【海の世界】


二つ目。


巨大な森に覆われた世界。


【森の世界】


三つ目。


何も見えない白い世界。


【未定の世界】


アオが驚く。


「三つから選ぶんだ」


しかしミチは首を傾げた。


「本当に三つだけなのかな?」


その言葉に反応するように、空中に四つ目の光が生まれた。


【新しい世界】


さらに五つ目。


【自分たちで作る世界】


そして六つ目。


【まだ存在しない世界】


ソラが目を丸くする。


「増えた!」


記録者が言った。


「選択肢を見つけること自体が、新しい選択肢を生み出しています」


悠真は笑った。


「やっぱり、この世界らしいね」


すると、巨大な文字が現れる。


【一つを選んでください】


悠真たちは黙り込んだ。


海。


森。


未定。


新しい世界。


自分たちで作る世界。


まだ存在しない世界。


どれも魅力的だった。


けれど、名前のない少年は一番奥の光を見ていた。


【まだ存在しない世界】


「僕は、これがいい」


悠真が尋ねる。


「どうして?」


「まだ誰も見たことがないから」


少年は答えた。


「僕は、自分が誰なのかもまだ分からない。でも……だからこそ、まだ誰も知らない場所へ行ってみたい」


ミチが頷く。


「僕も賛成」


ソラも手を上げる。


「僕も!」


アオも続く。


「行ってみよう」


一人、また一人と賛成する。


すると【まだ存在しない世界】の光が大きくなった。


しかし――


突然、光が消えた。


「え?」


少年が驚く。


記録者の本に文字が浮かぶ。


【まだ存在しない世界は、選択できません】


悠真が尋ねる。


「どうして?」


【存在していないからです】


沈黙。


少年は少し俯いた。


「じゃあ……行けないんだ」


そのとき、悠真が言った。


「だったら、作ればいい」


全員が悠真を見る。


「存在していないなら、存在させればいいんじゃない?」


ミチの目が輝いた。


「世界を作るってこと?」


「うん。でも、一人で作るんじゃない」


悠真は全員を見る。


「ここにいるみんなで作る」


その瞬間、消えたはずの光が再び現れた。


今度は、小さな光だった。


【世界――発生準備】


さらに文字が増える。


【必要条件】


【最初の場所】


【最初の時間】


【最初の問い】


【最初の住民】


そして最後に、


【世界の名前】


「全部、決めないといけないの?」


名前のない少年が尋ねる。


悠真は笑った。


「全部決める必要はないよ」


「え?」


「決めないことも、この世界の選択にできる」


すると光が大きく輝いた。


【最初の場所――未定】


【最初の時間――未定】


【最初の問い――未定】


【最初の住民――未定】


【世界の名前――未定】


何も決まっていない。


それなのに――


光の中に、最初の地面が生まれた。


ほんの小さな白い足場。


少年がそこへ一歩踏み出す。


「……ここに、いる」


その言葉と同時に、空が生まれた。


青でもない。


白でもない。


見る人によって色が変わる、不思議な空。


そして、遠くに星が一つ生まれた。


記録者が震える声で読む。


【世界――発生】


悠真は息をのんだ。


「本当に……始まった」


しかし次の瞬間。


空に巨大な文字が現れた。


【世界の最初の問いを決めてください】


全員が空を見上げる。


少年が考える。


そして――


「僕は、これを聞きたい」


少年は空に向かって言った。


「この世界では、誰が最初に『自分の未来』を選ぶの?」


すると、世界全体が大きく揺れた。


星が一つ。


二つ。


三つ。


無数に増えていく。


そして、その星々の中から――


一つだけ、少年の方へ落ちてきた。


光が人の形になる。


まだ姿も名前も決まっていない、新しい存在。


その存在が目を開ける。


そして最初に言った。


「……僕は、誰?」


悠真たちは顔を見合わせた。


名前のない少年が、静かに笑った。


「また、問いから始まったね」


記録者の本に、新しい文字が刻まれる。


【第二十八の歴史――次の世界を選ぶ者】


【世界は、選ばれるだけではない】


【選ばれた瞬間から、次の選択を生み出していく】


そして空に、まだ誰も読めない文字が浮かんだ。


【第二十九の歴史――最初の未来】


新しく生まれた存在が、悠真たちを見つめる。


「僕の未来を……一緒に探してくれる?」


悠真は頷いた。


「もちろん」


まだ名前のない世界。


まだ名前のない住民。


そして、まだ存在しない未来。


新しい世界の物語が、ここから始まる。

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