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第二十七の歴史ーー最初の問い

扉の向こうには、何もなかった。


空もない。


地面もない。


時間もない。


ただ、真っ白な空間が広がっている。


悠真が一歩踏み出す。


「ここは……」


記録者が本を開く。


しかし、ページには何も書かれない。


「記録できません」


キオクも周囲を見渡す。


「僕の記憶にもない」


イマが静かに言った。


「今も……ないみたい」


トキの時計も動かない。


アスが目を閉じる。


「未来も、まだ生まれていない」


ミチが不思議そうに尋ねた。


「じゃあ、ここには何があるの?」


その瞬間。


白い空間に、一文字だけ浮かんだ。


【?】


悠真はその文字を見る。


「……問い?」


すると、どこからともなく声が聞こえた。


「そう」


全員が振り返る。


誰もいない。


声だけが続く。


「世界が生まれる前には、答えはありませんでした」


「でも、問いだけはあった」


【どうして?】


二つ目の文字が現れる。


【ここにいるのは誰?】


三つ目。


【どこへ行くの?】


四つ目。


【何を見つけたい?】


ミチが驚く。


「これ……今まで僕たちが探してきたことと同じだ」


悠真が頷く。


「もしかして、第∞+3世界は最初から『答え』を持っていたんじゃなくて……」


「問いを探すために生まれた?」


その瞬間、白い空間に小さな光が生まれた。


光はゆっくり大きくなり、少年の姿になる。


胸には、まだ何の紋章もない。


少年は悠真たちを見る。


「僕は、誰?」


悠真はすぐには答えなかった。


少年自身が探すべきことだからだ。


するとミチが一歩前へ出る。


「僕たちも、ずっと探してきたよ」


「何を?」


「自分が誰なのか」


少年はミチを見る。


「見つかった?」


ミチは笑った。


「まだ」


少年は少し驚いたあと、笑った。


「じゃあ、僕も一緒に探していい?」


「もちろん」


その瞬間、少年の胸に小さな光が生まれた。


【探索】


しかし、まだ名前はない。


まだ過去もない。


未来も決まっていない。


それでも――


少年はそこに立っていた。


記録者の本に初めて一行が現れる。


【存在――確認】


悠真は静かに笑った。


「名前がなくても、未来が決まってなくても……存在できるんだ」


記録者が頷く。


「はい」


すると、白い空間に巨大な円が現れた。


円の中には、これまでの歴史が映し出されていく。


第∞+3世界の発生。


ハジメ。


発見。


ミチ。


未来。


名前。


町。


そして――


今、ここにいる少年。


最後に円の中心へ、一つの文字が浮かぶ。


【問い】


少年がそれを見つめる。


「僕は……最初の問いなの?」


声が答える。


「違います」


少年が首をかしげる。


「では、何?」


「君は、問いを受け継ぐ者」


悠真たちが顔を見合わせる。


声は続けた。


「世界は、答えを見つけるたびに終わるのではありません」


「新しい問いを生み出すことで、続いていく」


少年の足元に一本の道が現れた。


道の先には、無数の扉。


【なぜ?】


【どうして?】


【もし?】


【誰と?】


【どこへ?】


【これから?】


そして、一番奥には真っ白な扉。


そこには何も書かれていない。


少年はその扉を見る。


「この扉は?」


悠真が答える。


「まだ誰も決めてない扉なんじゃないかな」


少年は少し考える。


そして、その扉へ歩き出した。


すると――


町の方向から、鐘の音が聞こえた。


カン――。


カン――。


記録者の本が大きく開く。


【第二十七の歴史――最初の問い】


【問いは、世界を始める】


【答えは、次の問いを始める】


その文字が刻まれた瞬間、白い空間が大きく揺れた。


遠くに、巨大な世界が浮かび上がる。


それは今まで見たどの世界よりも大きかった。


しかし、その世界には――


まだ名前がない。


まだ住民もいない。


まだ歴史もない。


少年が呟く。


「……あの世界は何?」


声は答えなかった。


代わりに巨大な文字が現れる。


【第∞+3世界――次の世界】


悠真が目を見開く。


「次の世界……?」


その瞬間、町の時計が逆向きに動き始めた。


そして、空に新しい門が開く。


【第二十八の歴史――次の世界を選ぶ者】


少年は悠真たちを見る。


「僕も行っていい?」


悠真は笑った。


「もちろん。一緒に行こう」


まだ名前のない少年。


まだ名前のない世界。


そして、まだ誰も知らない未来。


新しい旅が始まった。

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