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名前を待つ光たち

白い世界に、無数の光が浮かんでいた。


一つ。


十。


百。


数え切れないほどの光。


それぞれが、まだ名前を持っていない。


名前のない少年が驚く。


「こんなにたくさん……」


待っていた者も、光を見つめている。


「私が待っていたのは、一人だけではなかったのですね」


そのとき、一つの光がこちらへ近づいてきた。


『僕も、名前がほしい』


別の光が続く。


『私も、自分が誰なのか知りたい』


さらに別の光。


『でも、名前を決めるのが怖い』


悠真は光たちに話しかける。


「名前は、急いで決めなくてもいいよ」


光たちが揺れる。


『じゃあ、いつ決めればいいの?』


「自分が『この名前で進みたい』と思ったときでいい」


ミチが続けた。


「名前はゴールじゃない。未来へ進むための最初の一歩だから」


その言葉を聞いて、一つの光が人の姿になった。


小さな男の子だった。


胸には、


【名前――未定】


と表示されている。


男の子は自分の手を見る。


「僕……人になった」


ソラが笑う。


「どんな感じ?」


「分からない。でも、歩いてみたい」


男の子が一歩進む。


その瞬間、足元に小さな道が生まれた。


アオが驚く。


「自分で歩いたから、道ができたんだ」


記録者が本に記録する。


【名前を持たない存在――自分の行動によって未来を発生】


男の子は嬉しそうに笑う。


「じゃあ、もっと歩く!」


二歩。


三歩。


五歩。


歩くたびに道が伸びていく。


他の光たちも、その道を見つめていた。


『僕も歩いてみたい』


『私も』


『一緒に行っていい?』


男の子が振り返る。


「もちろん!」


すると、光たちが次々に人や動物、鳥、植物へと姿を変えていった。


けれど、誰一人として名前を決めてはいない。


それでも、みんな歩いている。


イマが嬉しそうに言った。


「今が、どんどん増えてる」


トキの時計も忙しく動く。


カチッ、カチッ、カチッ。


「時間も生まれている」


キオクの本には新しいページが次々と増えていく。


【第一歩】


【第二歩】


【最初の出会い】


【一緒に歩いた】


そして――


【まだ名前はない】


記録者は、その一文を見て微笑んだ。


「名前がないことも、立派な歴史になるのですね」


突然、世界が揺れた。


白い空間の中央に、巨大な樹が現れる。


枝には無数の葉。


しかし、葉には名前ではなく、


【これから】


【いつか】


【まだ】


【未定】


という文字が書かれている。


ハジメが樹を見上げた。


「未来の樹……?」


記録者が調べる。


「これは……『名前の前の歴史』を記録する樹です」


そのとき、一枚の葉が落ちた。


【まだ】


名前のない男の子が、その葉を拾う。


すると葉が光り、少年の胸の紋章に吸い込まれた。


【未来――まだ決めない】


少年は笑った。


「これ、僕の未来にする」


悠真が頷く。


「いいと思う」


すると、別の光が声を上げた。


『僕も、自分の未来を決めたい!』


さらに、


『私も!』


『僕も!』


『一緒に探したい!』


無数の声が重なる。


世界が大きく輝いた。


そして空に新しい文字が浮かぶ。


【第二十二の歴史――名前を待つ者たち】


【未来――それぞれに存在】


待っていた者は、みんなを見つめていた。


「私も……もう待つだけではありません」


名前のない少年が尋ねる。


「じゃあ、何をするの?」


待っていた者は笑った。


「一緒に歩きます」


その瞬間、待っていた者の胸に新しい光が宿った。


【名前――自分で選ぶ】


まだ名前は決まらない。


しかし、確かな変化だった。


そして遠くに、新しい門が現れる。


【第二十三の歴史――最初の町】


光たちは門を見つめる。


『町を作るの?』


『名前がないのに?』


悠真は笑った。


「名前がなくても、町は作れるよ」


ミチが頷く。


「だって、町を作るのに必要なのは、名前じゃないから」


ハジメが続ける。


「ここにいたい、って思うことだよ」


無数の光が一斉に輝いた。


そして、白い世界の中央に――


まだ名前のない、小さな町が生まれた。


第∞+3世界に、新しい歴史が始まろうとしていた。

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