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最初の住民

山の上に立つ人影。


その胸には、


【住民――確定】


という文字が輝いていた。


悠真たちは、ゆっくり山道を登っていく。


名前のない少年も、その後ろをついてくる。


「あなたは、この世界の人なの?」


少年が尋ねた。


人影は振り返った。


白い服を着た、少年とも少女とも分からない存在だった。


「そうです」


記録者が本を開く。


しかし、ページには名前が表示されない。


【名前――記録不能】


キオクも首を振った。


「過去の記憶がありません」


トキの時計も、その人物の前では動かない。


「時間の記録もない」


イマが言う。


「今は……ある。でも、いつから今なのか分からない」


アスが未来を見る。


「未来も、見えない」


ミライが驚く。


「それって……」


人影は静かに答えた。


「私は、この世界が生まれる前から存在しています」


悠真たちは驚いた。


「世界が生まれる前から?」


「はい」


人影は山の向こうを見つめる。


「この世界には、未来だけがありました」


「未来だけ?」


「そして私は、その未来を見ていました」


すると空に映像が浮かんだ。


まだ何もない世界。


空もない。


大地もない。


時間もない。


その中に、一つだけ光が浮かんでいる。


それが――この人物だった。


「私は未来を見ていました」


映像の中で、無数の世界が生まれては消えていく。


「しかし、どの未来にも『今』がありませんでした」


悠真が尋ねる。


「だから、この世界を作ったの?」


人影は首を横に振る。


「私には世界を作る力はありません」


「じゃあ、どうして?」


「待っていたのです」


「何を?」


人影は悠真を見る。


「誰かが、『ここにいたい』と言う瞬間を」


その言葉を聞いて、名前のない少年が息をのんだ。


「……それって、僕と同じだ」


人影は微笑んだ。


「そうです」


少年が近づく。


「あなたは、僕より先にここにいたの?」


「はい」


「じゃあ……あなたは、この世界の最初の住民?」


「違います」


人影は静かに答えた。


「私は、この世界の最初の『待つ者』です」


その瞬間、記録者の本が大きく光った。


【住民――確定】


という文字が、


【存在――待機】


へと変化する。


記録者が驚く。


「住民ではなかった……?」


人影は頷く。


「私は誰かを待つために存在していました」


ミチが尋ねる。


「誰を?」


人影は、名前のない少年を見る。


「あなたです」


少年が目を見開く。


「僕?」


「あなたが未来から来ることを、私はずっと待っていました」


悠真たちは顔を見合わせる。


少年は戸惑いながら聞く。


「どうして僕を?」


人影は答える。


「あなたが来れば、この世界に『現在』が生まれると知っていたからです」


少年の胸の紋章が輝いた。


【未来――探索】


その文字の下に、新しい一文が現れる。


【現在――共有】


少年は、人影に手を伸ばした。


「じゃあ……今から一緒に生きよう」


人影はしばらくその手を見つめた。


そして――


初めて、その手を握った。


その瞬間。


山に花が咲いた。


川の水が光った。


空に新しい星が生まれた。


そして、人影の胸に初めて文字が現れる。


【住民――確定】


【名前――未定】


【未来――開始】


人影は自分の胸を見る。


「……名前が」


悠真が笑う。


「これから決めればいいよ」


人影は空を見上げた。


「そうですね」


その瞬間、空に新しい門が出現した。


【第二十一の歴史――待っていた者】


しかし門には、もう一つの文字があった。


【この者の名前を決めるのは、誰?】


全員が門を見つめる。


人影は静かに首を横に振った。


「私自身が決めます」


その瞬間、門が開いた。


その先には――


名前を決めるための、巨大な白い世界が広がっていた。


第∞+3世界の新たな歴史が、始まろうとしていた。

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