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まだ選ばれていない存在

【第二十の歴史――未来から生まれた現在】


新しく現れた門を、悠真たちはくぐった。


そこには青空が広がっていた。


草原。


川。


遠くには山。


一見すると、普通の世界に見える。


しかし、ミチがすぐに違和感に気づいた。


「……誰もいない」


街にも。


森にも。


川辺にも。


生き物の姿がない。


それなのに――


世界は動いている。


風が吹き、雲が流れ、川が流れている。


アスが空を見上げた。


「未来は、たくさんある」


ミライも頷く。


「でも、住民がいない」


記録者が本を開く。


【世界――存在】


【現在――存在】


【未来――無限】


【住民――未選択】


悠真が驚く。


「住民が……未選択?」


すると、空から小さな光が降りてきた。


光は草原の上で止まる。


『ここにいるよ』


全員が振り返る。


しかし、誰もいない。


『見えていないだけ』


ミチが尋ねる。


「君は誰?」


『まだ、誰でもない』


ハジメが首をかしげる。


「誰でもない?」


『うん。まだ、どんな存在になるか選んでいないから』


すると草原に無数の光が現れた。


小さな鳥になる光。


木になる光。


魚になる光。


人になる光。


星になる光。


そして、何にもならない光。


ソラが驚く。


「全部、未来の住民なの?」


記録者が答える。


「正確には、住民になる可能性です」


光たちは、それぞれ違う方向へ動き始める。


しかし、一つの光だけがその場に残った。


『僕は、まだ選べない』


名前のない少年が、その光の前に座った。


「僕も、最初は選べなかったよ」


『本当?』


「うん。名前も未来も決まってなかった」


光が少し明るくなる。


『じゃあ、僕もいつか選べる?』


「きっと」


そのとき、悠真の前に文字が浮かんだ。


【未来を選ぶためには、現在が必要】


悠真が考える。


「この世界では、未来の可能性が多すぎて、誰も自分の今を決められないのかもしれない」


イマが頷いた。


「今がないと、未来を選ぶ基準もないからね」


少年が光を見る。


「だったら……」


彼は光に手を伸ばした。


「まず、一緒に今を作ろう」


光が少年の手に触れた。


その瞬間――


草原に小さな花が咲いた。


たった一輪。


けれど、その花を見た光が嬉しそうに輝いた。


『これが……僕の今?』


「うん」


『じゃあ、僕はこの花を見ていた存在だったんだ』


その瞬間、世界中の光が一斉に輝いた。


【最初の選択――見る】


一つの光が鳥になった。


別の光が木になった。


さらに別の光が小さな動物になった。


世界に生命が増えていく。


そして最後に、最初の光がゆっくり人の姿になった。


白い服を着た、小さな子どもだった。


しかし、胸の紋章には――


【名前――未定】


と表示されている。


その子は花を見つめる。


「僕は……これから何になろう?」


悠真が笑う。


「それは、君が決めていい」


子どもは空を見上げた。


「じゃあ、まずは……この世界を見てみたい」


その瞬間。


【未来――探索】


という文字が浮かんだ。


記録者が本に書き込む。


【第二十の歴史――最初の住民候補】


しかし、次のページを開いた瞬間、記録者の表情が変わった。


「……これは?」


ページには、見たことのない文字が並んでいる。


【住民候補――一名】


【世界の未来――無限】


【しかし――】


最後の一行だけ、はっきり読めた。


【この世界には、最初から存在していた住民が一人いる】


悠真たちが顔を見合わせる。


「最初から?」


すると、遠くの山の上に人影が現れた。


その人影は、こちらを見ている。


名前も分からない。


姿もはっきりしない。


ただ、その胸には――


【住民――確定】


という紋章だけが輝いていた。


そして、その存在が静かに言った。


「やっと……未来から誰かが来た」


新しい謎が、第∞+3世界の彼方で動き始めた。

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