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姉妹レンタル  作者: なんなん


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未来だけがある世界

「……誰か、来て」


黒い世界から聞こえた声。


悠真たちは、しばらく動けなかった。


記録者が本を開く。


【未確認世界】


【名前――なし】


【住民――なし】


【過去――なし】


【現在――なし】


【未来――あり】


「こんな世界……初めてです」


記録者が呟いた。


トキの時計も、その黒い世界を見た瞬間に止まった。


「時間が存在していない」


イマも目を閉じる。


「今も……感じない」


キオクが続ける。


「過去もありません」


アスが黒い世界を見つめる。


「でも、未来だけはある」


ミチが首をかしげた。


「未来だけが存在するって、どういうことなんだろう?」


そのとき、黒い世界から再び声がした。


「……僕は、ここにいる」


悠真が答える。


「君は誰?」


少しの沈黙。


「分からない」


「名前は?」


「ない」


「じゃあ、どんな場所にいるの?」


「それも……分からない」


少年は寂しそうに言った。


「ただ、未来だけが見えるんだ」


すると黒い世界に、一瞬だけ景色が浮かんだ。


巨大な町。


緑の森。


青い海。


無数の星。


そして――たくさんの人々。


しかし、次の瞬間には全部消えてしまう。


「未来には、全部ある」


声が続く。


「でも、そこへ行くための『今』がない」


悠真は考えた。


「だったら、僕たちが今を作ればいい」


その瞬間、黒い世界に小さな白い点が生まれた。


少年の声が震える。


「今……?」


イマが頷く。


「うん。今は、ここから始められる」


悠真たちは黒い世界へ足を踏み入れた。


しかし――


一歩進んだ瞬間、悠真の姿が消えた。


「悠真!」


ミチが叫ぶ。


だが、声だけが返ってくる。


「大丈夫! ここにいる!」


アカリが手を伸ばす。


すると、今度はアカリの姿が消えた。


「この世界では、存在がまだ確定していないんだ!」


記録者が気づく。


「この世界にとって、私たちは『未来の可能性』としてしか認識されていない!」


ハジメが言う。


「じゃあ、どうすれば存在できるの?」


その瞬間、黒い空間に文字が現れた。


【最初の現在を作ってください】


ミチが考える。


「どうやって?」


文字が変わった。


【誰かが、ここにいたいと思うこと】


少年の声が聞こえる。


「……僕が?」


悠真が答える。


「うん」


少年は長い間、黙っていた。


そして――


「僕は……ここにいたい」


その瞬間。


黒い世界に地面が生まれた。


白い草が一本。


次に二本。


やがて、一面に草原が広がった。


イマが笑う。


「今が、生まれた」


トキの時計が動き出す。


カチッ。


キオクの本にも、一行が刻まれる。


【最初の現在――ここにいたい】


少年の声が震える。


「僕が……世界の最初の今を作ったの?」


悠真が答える。


「そうだよ」


すると空に、無数の未来が再び浮かび始めた。


けれど今度は消えない。


町。


森。


海。


星空。


そして、一人の少年。


その少年の胸に、初めて小さな紋章が現れた。


【現在――存在】


名前の部分は空白。


しかし、未来の部分には文字が浮かぶ。


【未来――無限】


記録者が静かに読み上げる。


「この世界は、未来から始まったのではありません」


悠真が振り返る。


「じゃあ?」


「未来があったからこそ、『今を作りたい』という意思が生まれた」


少年が空を見上げる。


「未来が、今を呼んだんだ……」


その瞬間。


黒かった空が青く変わった。


そして巨大な文字が現れる。


【第十九の歴史――世界の未来】


【新たな現在――発生】


しかし、その下にもう一つの文字が浮かんだ。


【世界の名前――未定】


少年は笑った。


「この世界にも……名前が必要なのかな?」


悠真は首を横に振った。


「急がなくていいよ」


少年は頷いた。


「うん。いつか、自分で決める」


その瞬間、遠くの空に新しい門が現れた。


【第二十の歴史――未来から生まれた現在】


悠真たちは門を見つめる。


そして門の向こうから――


「次は、僕じゃない誰かの未来を見つけたい」


少年の声が響いた。


新しい世界の旅が、始まろうとしていた。

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