未来を探す者
「……僕も、未来を探していい?」
何もなかった空間から聞こえた声。
悠真たちは、声のした方向を振り返った。
そこには、小さな光が浮かんでいた。
まだ人の姿にはなっていない。
ミチがゆっくり近づく。
「もちろんだよ」
光が少しだけ揺れた。
「でも……僕には何もない」
「何もない?」
「名前もない。過去もない。未来もない」
キオクが静かに答える。
「それは、何もないということではありません」
光がキオクを見る。
「どういうこと?」
「まだ、始まっていないだけです」
その言葉を聞いた瞬間。
光が強く輝いた。
すると、空間に一枚の白い紙が現れた。
そこには三つの項目が書かれている。
【名前】
【過去】
【未来】
しかし、どれも空白だった。
少年――いや、まだ少年とも呼べない存在は、紙を見つめる。
「僕は……どれから決めればいいの?」
悠真が答える。
「決めなくてもいいんじゃないかな」
「え?」
「名前からでもいい。未来からでもいい。何もしないことを選んでもいい」
ハジメが笑った。
「この世界は、最初からそういう場所だったからね」
その瞬間、白い紙の中央に新しい文字が現れた。
【最初の質問】
そして、その下に一行。
【あなたは、何を知りたい?】
光はしばらく黙っていた。
そして、小さな声で言った。
「……僕は、自分が誰なのか知りたい」
その瞬間。
光が人の姿へと変わった。
白い髪。
白い服。
胸には、第∞+3世界の紋章。
まだ名前はない。
けれど、確かに一人の存在として立っていた。
イマが嬉しそうに言う。
「今、ここにいるね」
「うん……」
トキの時計が進む。
カチッ。
キオクの本に、新しい記録が刻まれる。
【新しい存在――発生】
そして、その下に続く。
【理由――自分を知りたいという質問】
ミライが驚く。
「質問から、存在が生まれた……」
記録者が頷く。
「第∞+3世界の原点と同じです」
「どういうこと?」
「この世界は、『どうして?』という質問から始まりました」
記録者は新しいページを開く。
「そして今、この存在は『自分は誰?』という質問から始まった」
少年は自分の手を見る。
「僕の未来は……?」
すると、目の前に一本の道が現れた。
しかし、道の先には何もない。
ミチが笑う。
「まだ、決まってないんだね」
「うん」
「じゃあ、一緒に探そうよ」
少年は少し考えた。
そして頷いた。
「……うん」
その瞬間。
少年の前に、三つの小さな光が現れた。
【名前を探す】
【過去を探す】
【未来を探す】
しかし、少年はすぐには選ばなかった。
「全部……探したい」
悠真が笑う。
「それも、一つの選択だね」
三つの光が一つにつながった。
すると、道の先に巨大な扉が現れる。
そこには新しい文字。
【第十六の歴史――自分を探す者】
扉の向こうから、まだ存在していない未来の風が吹いてくる。
少年は一歩前へ進んだ。
「僕は、自分が誰なのか知りたい」
そして、振り返る。
「みんなと一緒に」
悠真たちも、その後を歩き出す。
その瞬間。
扉の向こう側で、まだ誰にも知られていない世界が動き始めた。
そして遠くから――
「……あなたの名前を、知っています」
謎の声が響いた。
全員が立ち止まる。
少年が振り返った。
「僕の……名前を?」
声は答える。
「はい」
そして扉の奥に、一文字だけが浮かび上がった。
【???】
まだ、その名前は読めなかった。




