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これから

門の向こうへ進むと、そこには空も大地もなかった。


あるのは、どこまでも続く白い道。


道の両側には無数の扉が並んでいる。


【明日の自分】


【十年後の自分】


【誰かと歩く未来】


【一人で歩く未来】


【まだ存在しない未来】


そして、一番奥には何も書かれていない扉があった。


ミチが首をかしげる。


「何も書いてないね」


記録者が調べる。


「記録もありません」


イマも言った。


「今もありません」


トキの時計も動かない。


「時間も……まだ始まっていない」


アスが扉を見る。


「未来も見えない」


悠真は、その扉に近づいた。


すると扉に文字が浮かぶ。


【これから】


失われた名前の少年がつぶやいた。


「これが……僕の未来?」


「たぶん違うよ」


悠真は答える。


「これは、君だけの未来じゃない」


扉が大きく震えた。


【ここから先は、誰にも決められていない】


ミオが目を輝かせる。


「じゃあ、本当に何も決まってないんだ」


「うん」


少年はしばらく扉を見つめていた。


「……だったら」


少年が扉に手を置く。


「僕は、みんなと一緒に進みたい」


その瞬間、白い道に一本の線が現れた。


ミチの道。


ソラの道。


アオの道。


そして、二人の名前のない少年たちの道。


さらに悠真たち全員の道が一本につながっていく。


記録者が驚く。


「未来が……共有されています」


キオクが静かに笑う。


「名前がなくても、未来はつながる」


そのとき、失われた名前の少年の胸にあった【名前――未定】が変化した。


【名前――これから】


少年は驚く。


「名前が……」


悠真は首を振った。


「まだ正式な名前じゃないよ」


「でも、今の君が選んだ言葉なんだと思う」


少年はその文字を見つめる。


そして笑った。


「……これから」


その言葉を口にした瞬間、世界中の扉が一斉に開いた。


そこには無数の未来が広がっていた。


森へ進む未来。


海へ進む未来。


空へ進む未来。


新しい世界を作る未来。


誰かと出会う未来。


そして――まだ誰にも想像できない未来。


ハジメが空を見上げる。


「この世界……また大きくなってる」


すると、世界の中央に巨大な時計が現れた。


時計の針が動き始める。


一秒。


二秒。


三秒。


そして文字が浮かぶ。


【第十三の歴史――これからの名前】


【未来は、名前によって決まらない】


【名前は、未来へ進む自分を呼ぶための言葉】


悠真は少年を見る。


「君は、これからどんな自分になりたい?」


少年は少し考えた。


そして答えた。


「……まだ分からない」


「でも――」


少年は白い道の先を指差した。


「分からない未来を、探してみたい」


その瞬間、空に新しい星が生まれた。


星には、たった一つの言葉。


【探す】


そして遠くから、聞いたことのない声が響いた。


「ならば次は――」


「まだ誰も名前をつけていない世界を、見つけてください」


全員が顔を見合わせる。


ミチが笑う。


「また新しい旅だね」


悠真も頷いた。


「行こう」


白い道の先に、新しい門が開く。


そこには――


【第十四の歴史――名前のない世界】


と書かれていた。

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