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名前と未来

第十の歴史――名前と未来。


巨大な時計の奥にある扉を抜けると、悠真たちは広大な世界に出た。


そこには、無数の道があった。


道の始まりには、それぞれ名前が書かれている。


【ソラ】


【アオ】


【ミチ】


そして、まだ名前のない二人の前には――


【未】


【??】


という二つの道が伸びていた。


「名前によって道ができてる……」


ミチが驚く。


しかし、道はどこにもつながっていない。


その先はすべて、白い霧に包まれていた。


記録者が本を開く。


「この世界では、名前を持つことによって未来への入口が生まれるようです」


「でも、未来そのものは見えないんだね」


イマが言った。


トキが時計を見る。


「未来は、まだ決まっていないから」


そのとき――。


ソラの道が突然、三方向に分かれた。


【森】


【海】


【空】


ソラが驚く。


「僕の未来が三つに分かれた!」


悠真が笑う。


「名前を決めたからって、未来が一つに固定されるわけじゃないんだ」


ソラは三つの道を眺める。


「じゃあ……どれを選べばいいの?」


「好きな道を選んでもいいし、今は選ばなくてもいい」


悠真の言葉に、ソラは少し考えた。


そして――。


「全部見てみたい!」


ソラが三つの道を順番に歩く。


すると三つの未来が重なり、一つの大きな道になった。


【ソラ――探索する未来】


「未来って、こんなふうにもできるんだ!」


ソラは嬉しそうだった。


その様子を見ていた二人の仮住民も、自分たちの道を見る。


最初の少年が尋ねた。


「僕の道は……【未】って書いてある」


もう一人も言う。


「僕のは【??】だ」


すると突然、二人の道が動き始めた。


【未】の道は右へ。


【??】の道は左へ。


二人は別々の方向へ進みかけた。


「待って!」


ミチが声をかける。


「どうしたの?」


「この道、名前を決めていないから別れてるんじゃない」


「え?」


ミチは二つの道を見つめる。


「たぶん……二人がまだ自分の未来をどうするか決めてないから、道も自由なんだと思う」


二人は顔を見合わせた。


「じゃあ……」


最初の少年が言った。


「名前を決めたら、この道は一つになるの?」


「分からない」


ミチは首を振った。


「でも、試してみることはできるよ」


しかし、二人はすぐには名前を決めなかった。


「まだ、僕たちは探したい」


「うん。名前を決める前に、もっといろんな世界を見たい」


その瞬間――。


二人の道が、別々のまま空へ伸びていく。


そして途中で、一本の橋によってつながった。


記録者が驚く。


「これは……」


橋に文字が浮かぶ。


【名前を持たない者同士でも、未来を共有できる】


悠真は静かに笑った。


「名前が違っても、名前がなくても、一緒に未来を作れるんだね」


ハジメが頷く。


「この世界らしいね」


そのとき、巨大な時計が鳴った。


ゴーン……。


一度。


二度。


三度。


空に新しい文字が現れる。


【第十の歴史――名前と未来】


さらに、その下へ続きが表示された。


【名前は未来を決めない】


【名前は未来を選ぶための出発点】


そして――。


【未来は、一人で完成させなくてもいい】


ミチが空を見上げる。


「また、みんなの道がつながっていく」


悠真たちの足元から、一本の巨大な道が現れた。


その道は、ソラ、アオ、ミチ、そして二人の仮住民の道をすべてつないでいる。


しかし、その先には巨大な白い壁が立っていた。


壁には一つだけ文字がある。


【名前を失った未来】


「名前を……失った未来?」


キオクが壁に近づく。


「記録がありません」


記録者も首を振った。


「私の記録にもありません」


トキの時計まで止まった。


イマが小さくつぶやく。


「過去にもない」


ミライが続ける。


「未来にもない……」


悠真は壁を見る。


「じゃあ、この先には何があるんだろう?」


その瞬間。


壁の向こうから、小さな声が聞こえた。


「……僕の名前を、知りませんか?」


全員が振り向く。


白い壁に、一つの影が浮かんだ。


しかし、その影には顔も名前もない。


ただ胸元に、小さな紋章だけが光っていた。


【第∞+3世界――未登録】


そして、壁に新たな文字が浮かび上がる。


【第十一の歴史――失われた名前】


悠真は仲間たちを見る。


「行こう」


白い壁が、ゆっくりと開き始めた。


その先には――。


名前を失った未来が待っていた。

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