↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
229/405

自分で自分を呼ぶ

巨大な扉が開いた。


その向こうには、これまでの第∞+3世界とは違う景色が広がっていた。


そこは、空だった。


空も、大地も、海もない。


ただ無数の白い光が浮かび、その一つ一つに小さな文字が刻まれている。


【ソラ】


【未】


【??】


そして、まだ何も書かれていない無数の光。


「ここが……第八の歴史?」


ハジメが辺りを見回す。


記録者が本を開いた。


「はい。しかし、この場所には少し変わった規則があります」


「どんな規則?」


悠真が尋ねる。


記録者は一行を読み上げた。


【自分で自分を呼んだ者だけが、ここに存在できる】


「自分で……自分を呼ぶ?」


ミチが首をかしげた。


すると、空間の奥から声がした。


「そうだよ」


ソラだった。


ソラは自分の胸に手を当てる。


「僕は、ソラって呼んだとき、自分がここにいるって分かったんだ」


「じゃあ、名前を決めることは、自分の存在を確かめることでもあるんだね」


イマが言った。


そのとき――。


一つの白い光が震え始めた。


「……ぼくは……」


光から、小さな声が聞こえる。


「ぼくは、まだ名前が分からない」


光の前に白い紙が現れた。


そこには何も書かれていない。


「無理に決めなくていいよ」


悠真が言う。


「うん……」


光はしばらく考えた。


そして、小さな声で言った。


「じゃあ……今は、ぼくって呼ぶ」


白い紙に文字が浮かぶ。


【ぼく】


記録者が驚く。


「これは……正式な名前ではありません」


「でも、自分で自分を呼んだ」


キオクが言った。


すると光が大きく輝いた。


【存在――確認】


【自己認識――確認】


【名前――未定】


【未来――継続】


光は嬉しそうに言った。


「ぼく……ここにいる」


その瞬間、無数の光から声が上がった。


「私も!」


「僕も、自分を呼んでみる!」


「私もここにいる!」


次々と光が輝いていく。


【わたし】


【ぼく】


【ここ】


【まだ】


【これから】


どれも正式な名前ではない。


けれど、それぞれが自分自身を呼ぶための言葉だった。


トキの時計が動き始める。


「時間が進んでいる」


アスが空を見上げる。


「未来も増えてる」


ミライが微笑んだ。


「名前が決まっていなくても、未来は始められるんだね」


二人の仮住民も、自分たちの紙を見る。


【未】


【??】


最初の少年が小さくつぶやいた。


「……僕も、自分を呼んでみようかな」


もう一人が頷く。


「うん」


最初の少年は目を閉じた。


「僕は……僕」


紙の【未】が淡く光った。


だが、名前には変わらない。


代わりに、新しい文字がその下に現れた。


【自分――確認】


もう一人も言った。


「僕も……僕」


【自分――確認】


二人の紋章が光る。


ミチは嬉しそうに笑った。


「名前がなくても、自分は見つけられるんだね」


悠真も頷いた。


「そして、自分を見つけたあとで、いつか名前を選べばいい」


すると、空間の中央に巨大な本が現れた。


表紙には、


【第八の歴史――自分で自分を呼ぶ】


と書かれている。


本がゆっくり開く。


最初のページには、こう記されていた。


【名前は、存在の終点ではない】


【名前は、存在の始まりでもある】


【そして――】


最後の一文が浮かび上がる。


【自分を呼ぶ声が、未来への最初の一歩になる】


その瞬間。


遠くに、一つの巨大な扉が現れた。


しかし、その扉には名前がない。


文字もない。


ただ、中央に一つだけ空白の場所がある。


記録者が言った。


「この扉……名前がないのではありません」


悠真が近づく。


「じゃあ、何なの?」


記録者は静かに答えた。


「誰かが、自分で名前をつけるのを待っているのです」


ハジメが扉を見る。


ミチも見る。


ソラも見る。


そして、まだ名前を持たない二人の少年も見る。


扉の空白が、ゆっくりと輝いた。


そこに文字が現れる。


【第九の歴史――名前を選ぶ者】


悠真はみんなを見る。


「行こう」


扉の向こうには、まだ誰も知らない未来が待っていた。


そして――。


二人の仮住民の胸にも、小さな光が灯った。


名前は、まだない。


けれど、自分自身を呼ぶ声は、もう生まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。