決められた未来
第∞+3世界。
巨大な扉の前に、悠真たちは立っていた。
扉には、
【決められた未来】
と刻まれている。
ミチはその文字を見つめた。
「……僕、少し怖いです」
悠真が隣に立つ。
「怖かったら、ゆっくりでいいよ」
ミチは頷き、扉を押した。
ギィィィ……。
扉の向こうには、一本の長い道があった。
しかし、これまでの道とは違っていた。
道の両側には、すでに未来の景色が完成している。
立派な街。
大きな森。
青い海。
星空の下に広がる村。
そして、そのすべての場所に――ミチの姿がいた。
「これは……僕?」
一番近くの景色では、ミチが街の人々を案内している。
別の景色では、森を探索している。
海を旅しているミチもいる。
空を飛ぶ乗り物に乗っているミチもいる。
どの未来も楽しそうだった。
けれど、ミチは首を横に振った。
「全部……僕の未来なの?」
記録者が答える。
「正確には違います」
「え?」
「これは『決められた未来』です。すでに誰かによって一つに決められた場合の可能性を示しています」
ミチは黙り込んだ。
そのとき、一つの景色が目の前に現れた。
そこには、ひとりで立つミチがいた。
周囲には誰もいない。
空も、森も、海もない。
ただ、決められた道だけが続いている。
ミチは悲しそうに言った。
「僕は……これには行きたくない」
すると、道が揺れ始めた。
【未来を選択してください】
文字が浮かぶ。
ミチの前に三つの選択肢が現れた。
【与えられた未来を選ぶ】
【未来そのものを拒む】
【新しい未来を作る】
ミチは三つ目を見つめた。
「新しい未来を……作る?」
ハジメが微笑む。
「ミチならできると思う」
ミチはしばらく考えた。
そして、三つの選択肢のどれにも触れなかった。
「……僕は、これも選ばない」
悠真が驚く。
「選ばない?」
「はい」
ミチは前を向いた。
「未来を作るって言っても、今ここで全部決めちゃったら、それもまた『決められた未来』になっちゃうと思うんです」
静寂が広がった。
ミチは続ける。
「だから僕は……その時、その時に考えたいです」
すると――。
三つの選択肢が光になって消えた。
そして、真っ白だった道の先に、小さな一本の道が生まれた。
【その時、自分で選ぶ】
記録者が静かに読み上げる。
「未来の新しい定義を確認しました」
空いっぱいに文字が浮かぶ。
【未来とは、決められた場所ではない】
【未来とは、選び続ける道である】
その瞬間、ミチの胸の紋章が強く輝いた。
さらに、未来の木から一枚の新しい葉が舞い落ちる。
葉には、こう書かれていた。
【ミチ――選び続ける者】
ミチはその葉を大切そうに受け取った。
「これが……僕の未来」
悠真が笑う。
「うん。きっとそれでいいんだよ」
すると突然――。
世界全体が揺れた。
ゴゴゴゴゴ……。
アカリが空を見上げる。
「何か来る!」
未来の木が大きく揺れ、まだ存在していなかった巨大な枝が空へ伸びていく。
枝の先に、ひとつの扉が現れた。
その扉には――
【第四の歴史――誰かと選ぶ未来】
と書かれていた。
ミチは扉を見上げた。
「……次は、誰かと一緒に未来を選ぶんですね」
悠真は頷いた。
「行こう」
一行が扉へ向かって歩き始める。
その後ろで、未来の木が静かに成長していった。
そして誰にも気づかれない場所で――。
まだ名前のない、新しい葉が一枚だけ芽吹いていた。
その葉には、
【???】
とだけ書かれていた。




