最初の旅
第∞+3世界――。
ハジメが生まれ、「自分の世界を、自分で見つけるための世界」という目的が定められた。
悠真たちは、巨大な門の前に立っていた。
門には、白い文字でこう刻まれている。
『第∞+3世界――旅立ちの門』
その向こうには、どこまでも続く青空と、まだ誰にも歩かれていない道が見えていた。
ノノが門を見上げる。
「ここを越えたら、本当に旅が始まるんだね」
「うん」
悠真が頷いた。
「でも、この世界では旅をすること自体が、この世界を作ることになるみたいだ」
アカリが門の横にある石板を読む。
「『訪れた者も住民になる』……って書いてあるね」
キボウが首をかしげる。
「住民になるって、どういうこと?」
すると、ハジメが門の前に立った。
「たぶん……この世界に来た時点で、もう無関係ではいられないってことだと思う」
その瞬間。
門が淡く光った。
『訪問者を確認』
『存在を確認』
『未来を確認』
『第∞+3世界への接続を開始します』
光が悠真たちを包む。
そして――。
『住民登録を開始』
悠真が驚く。
「えっ、もう登録されるの?」
しかし、その直後。
『住民登録――保留』
全員が顔を見合わせた。
カイが魔導書を開く。
「どうやら、普通の住民登録とは違うみたいだ」
本のページに文字が浮かぶ。
『第∞+3世界の住民とは、この世界に影響を与える存在』
『ただし、役割は本人が決める』
ミライが笑った。
「なるほど。ここでも、自分で選べるんだ」
アスも門を眺めながら言う。
「未来探索者として、この世界を見てみたい」
キオクは静かに頷く。
「僕は、この世界の過去を記録してみたい」
イマは空を見上げた。
「私は……今を見ていたい」
トキは自分の時計を確認する。
「僕は時間の変化を見てみるよ」
レインは虹色の光を空へ飛ばした。
「私は、この世界の空を見守ろうかな」
オボロは少し考えてから答えた。
「忘れられそうなものを、覚えておく」
キボウは胸を張る。
「僕は、みんなが諦めそうになったときに応援する!」
アカリは笑う。
「私は、まだ知られていない可能性を探す!」
ミオは自分の胸に手を当てた。
「私は、自分の未来を選び続ける」
ノノは悠真を見る。
「私は……みんなと一緒に旅する」
悠真も笑った。
「じゃあ、僕はみんなと一緒に、この世界を見つける」
最後にハジメが言った。
「僕は、この世界そのものを見つけたい」
その瞬間――。
門が大きく開いた。
『役割――自由』
『未来――未定』
『住民登録――完了』
『第∞+3世界へようこそ』
一歩。
悠真たちは門を越えた。
すると、景色が一瞬で変わった。
目の前に巨大な街が現れた。
家。
学校。
図書館。
工房。
公園。
時計塔。
しかし――。
誰もいない。
「……街なのに、誰もいないね」
ノノが呟く。
カイが魔導書を開く。
『都市名――未定』
『住民数――1』
「住民数が一人?」
悠真が驚く。
全員がハジメを見る。
ハジメは苦笑した。
「僕……かな」
だが、その直後。
時計塔が鳴った。
――カーン。
――カーン。
――カーン。
三回目の鐘が鳴った瞬間。
街の中央に、小さな光が生まれた。
光はゆっくりと人の姿になっていく。
そして――。
一人の少年が現れた。
白い髪。
透明な瞳。
胸には∞+3の紋章。
少年は周囲を見回し、悠真たちを見つけると、不思議そうに首をかしげた。
「……ここは、僕の世界?」
ハジメが一歩前へ出る。
「君は、この世界で生まれたの?」
少年は少し考えた。
「分からない。でも……」
空を見上げる。
「君たちが来たから、僕は生まれた気がする」
カイの魔導書が激しく光った。
『新規住民――発生』
『発生条件――最初の旅人の到着』
悠真は目を丸くした。
「最初の旅人……?」
すると街の時計塔に、新しい文字が浮かび上がる。
『第一旅人――悠真』
そして、その下に続く。
『第二旅人――ノノ』
『第三旅人――カイ』
『第四旅人――アカリ』
次々と仲間たちの名前が表示されていく。
最後に――。
『旅人が世界を歩くたび、新しい住民が生まれます』
悠真は少年を見る。
「じゃあ……君は、僕たちが旅したから生まれたの?」
少年は頷いた。
「たぶん」
そして、少しだけ笑った。
「だから……僕も一緒に旅していい?」
その瞬間。
第∞+3世界の地図が空に広がった。
そこには、まだ名前のない場所が無数に存在していた。
『未知の森』
『未発見の海』
『名前のない山』
『記録されていない街』
そして、地図の一番奥。
黒い領域に、たった一つの文字が浮かんでいた。
『???』
ハジメがその文字を見つめる。
「……あそこだけ、世界そのものが隠してる」
記録者も地図を見ていた。
そして、初めて少し驚いた表情を見せる。
「……私の記録にもありません」
悠真が尋ねる。
「じゃあ、行ってみよう」
ノノが笑う。
「うん!」
こうして、第∞+3世界で最初の旅が始まった。
まだ名前のない少年も仲間に加わり――。
誰にも知られていない世界の奥へ。
一行は歩き始めた。
その瞬間、地図の『???』がゆっくりと文字を変えた。
『あなたの世界』
そして、その奥から声が聞こえた。
「――自分の世界を、見つけに来てください」




