心を閉ざした少年
翌朝。
新しい町の広場には、スマイルキャラバン号が停まっていた。
子どもたちは絵本を読んだり、折り紙で遊んだりして楽しそうに過ごしている。
「今日は昨日より人が多いね!」
さくらが笑顔で言う。
「うん!」
あかりも元気よく返事をした。
しかし、ひまりは広場の向こうを見つめていた。
「……あの子。」
昨日見かけた少年が、電柱の陰からこちらを見ている。
悠真も気づき、ゆっくり近づいた。
「おはよう。」
少年は少し驚いたが、すぐに目をそらした。
「……何。」
「よかったら、一緒に遊ばない?」
「遊ばない。」
少年は短く答える。
「俺、一人でいいから。」
そう言って立ち去ろうとしたとき、あかりが走ってきた。
「待って!」
「今日は紙飛行機大会をやるんだよ!」
「優勝したら手作りメダルがもらえるんだから!」
少年は首を横に振る。
「いらない。」
そのまま歩き去ってしまった。
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午後。
町のパン屋さんで休憩していると、お店の人が話しかけてきた。
「あの子は**蓮**っていうんだ。」
「去年、お父さんの仕事の都合でこの町に引っ越してきたんだけど、なかなか友達ができなくてね。」
悠真たちは静かに話を聞いた。
「だから一人でいることが多いんですね。」
ひかるがつぶやく。
パン屋さんはうなずいた。
「本当は優しい子なんだけど、自分から話しかけるのが苦手なんだよ。」
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夕方。
悠真は河原で一人、石を投げている蓮を見つけた。
「また会ったね。」
「……。」
蓮は黙ったまま川を見つめている。
悠真も隣に座った。
しばらく何も話さない。
やがて蓮がぽつりと口を開いた。
「期待すると、つらいから。」
「え?」
「みんな『仲良くしよう』って言う。」
「でも、いつかいなくなる。」
「だから最初から一人のほうが楽なんだ。」
悠真は静かにうなずいた。
「そう思ってしまうこともあるよな。」
「でもさ。」
悠真は川面を見ながら続けた。
「俺も昔、『一人のほうが気楽だ』って思っていた時期があった。」
「だけど、人と出会って、一緒に笑った思い出は今でも残ってる。」
「別れがあっても、思い出までなくなるわけじゃない。」
蓮は悠真の言葉を黙って聞いていた。
そのとき、川の向こうから元気な声が聞こえる。
「悠真ー!」
さくらたち五人が手を振っていた。
「夕ご飯できたよー!」
あかりが大きく叫ぶ。
悠真は笑って立ち上がる。
「蓮。」
「よかったら、一緒に食べないか?」
蓮は少し迷ったあと、小さくうなずいた。
「……少しだけ。」
その小さな一歩が、新しい友情の始まりになることを、まだ誰も知らなかった。




