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姉妹レンタル  作者: なんなん


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206/409

時間の外から来た住民

時間の塔の上空を、一筋の白い光が走っていた。


光はゆっくりと地上へ降りてくる。


悠真たちは、その行方を見つめていた。


「来るよ!」


アオが叫ぶ。


光が地面に触れた瞬間――。


パァァァッ!


まばゆい光の中から、一人の少年が現れた。


白い髪。


透明な瞳。


そして胸元には、第∞+2世界の紋章。


しかし、今までの住民とは少し違っていた。


その紋章の中心には、小さな時計のマークがある。


「こんにちは」


少年は、静かに言った。


「……僕は、どこから来たんだろう?」


記録者がすぐに白い羽を取り出した。


「記録します」


羽が光る。


だが――。


何も書かれない。


記録者の表情が変わった。


「……記録できません」


「え?」


悠真が驚く。


記録者が何度も羽を動かす。


しかし白い本には、文字が一つも現れなかった。


「存在しているのに、記録できない……」


キオクが少年を見つめる。


「過去にもいない」


イマも続ける。


「今にも……いない?」


ミライが首をかしげる。


「未来にもいないの?」


少年は困ったように笑った。


「たぶん……全部違うんだと思う」


アスが少年に近づく。


「じゃあ、君は何なの?」


少年は少し考えた。


そして時間の塔を見上げた。


「僕は……時間の外にいたんだと思う」


その言葉と同時に、塔の時計が止まった。


カチッ。


世界から音が消える。


風も止まった。


雲も止まった。


アオが動こうとするが、体が動かない。


「な、なんだこれ……!」


悠真も声を出そうとする。


しかし声すら止まっている。


ただ一人。


少年だけが動いていた。


少年は悠真たちの間を歩き、静かに言った。


「怖がらなくていいよ」


「僕が時間を止めたんじゃない」


「時間が、僕を認識できていないだけなんだ」


少年が指を鳴らす。


パチン。


時間が動き始めた。


風が吹く。


雲が流れる。


アオがその場に座り込んだ。


「びっくりした……」


ノノが少年を見る。


「あなたは、時間そのものに含まれていないの?」


「うん」


少年は頷いた。


「僕には過去がない」


「現在もない」


「未来もない」


「じゃあ……君は何なの?」


悠真が尋ねる。


少年は少しだけ笑った。


「それを知りたくて、ここへ来たんだ」


すると、時間の塔の最上階から一枚の紙が落ちてきた。


悠真が拾う。


そこには、たった一行だけ書かれていた。


『時間の外側に存在する者――発生』


記録者が驚く。


「これは……私の記録ではありません」


紙の裏を見る。


そこには新しい文字が浮かび上がった。


『記録する前に存在したもの』


「そんなこと……」


記録者が言葉を失う。


キオクが静かに言った。


「記録される前に存在していたなら……」


イマが続ける。


「この子は、私たちより前からいたってこと?」


少年は首を振った。


「違うよ」


そして悠真を見る。


「僕は、みんなより前にいたんじゃない」


「みんなが時間を作ったから、僕が生まれたんだ」


悠真は驚いた。


「時間を作ったから?」


少年は頷く。


「時間が生まれる前には、過去も現在も未来もなかった」


「だから、その外側にあった可能性も存在できた」


「僕は、その可能性だった」


アカリが目を輝かせる。


「新しい可能性!」


「うん」


少年は笑った。


「でも、まだ僕には名前がない」


するとイマが近づいた。


「名前、自分で決めていいんだよ」


少年は少し考えた。


時間の塔を見る。


そして悠真たちを見る。


「じゃあ……」


少年は笑った。


「『トキ』にする」


その瞬間。


塔の鐘が鳴った。


カァァァン――!


白い文字が空に浮かぶ。


『第∞+2世界――第六住民』


『名称――トキ』


『発生源――時間の外側』


『過去――なし』


『現在――なし』


『未来――未定』


そして最後に――。


『時間との接続――開始』


トキの胸の時計が動き始めた。


チクン。


チクン。


小さな音が世界中に響く。


その瞬間、記録者の白い本に初めて文字が現れた。


『第一記録』


『時間の外側にいた存在、トキ』


記録者は微笑んだ。


「……ようやく、記録できました」


だが次の瞬間。


本に、さらに一行が浮かび上がった。


『注意』


『トキが時間に接続したことで、時間の外側への道が開きました』


悠真が顔を上げる。


時間の塔の壁に、今まで存在しなかった扉が現れていた。


扉にはこう書かれている。


『時間の外』


トキがその扉を見つめる。


「……ここから先に、僕がいた場所がある」


悠真は仲間たちを見る。


そして、扉へ向かって歩き出した。


「行こう」


扉の向こうから、誰かの声が聞こえた。


「――時間を作った者たちよ」


「ようこそ」


「ここは、時間が生まれる前の場所です」


扉が、ゆっくりと開き始めた。

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