↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉妹レンタル  作者: なんなん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
203/409

存在しないはずの過去

第∞+2世界。


白い空の下、悠真たちはキズナ号を古代都市へ向けて進めていた。


まだ存在していないはずの都市。


けれど、遠くから見えるその姿は、何百年も前からそこにあったようだった。


「変だね……」


ノノが窓の外を見る。


「さっきまで何もなかったのに」


「この世界では、過去が存在していないからだと思う」


記録者が答えた。


「『過去が必要だ』と認識されたことで、過去になる可能性のあるものが現れ始めているのでしょう」


アスが都市を指差した。


「あれも、誰かの記憶なのかな?」


キオクが首を振る。


「まだ分からない」


その隣で、イマは黙って都市を見つめていた。


「……あそこ、知ってる気がする」


「行ったことがあるの?」


悠真が尋ねる。


「ううん。でも……懐かしい」


イマ自身も不思議そうだった。


◆


古代都市に入ると、道の両側に巨大な建物が並んでいた。


広場。


図書館。


学校。


工房。


そして中央には、巨大な時計塔。


しかし、すべてが静まり返っている。


人は誰もいない。


「誰もいないのに、街だけがある……」


アカリがつぶやく。


カイが魔導書を開く。


『古代都市』


『建設時期――不明』


『住民――0』


『記録――存在せず』


「やっぱり過去がない」


そのとき。


イマが一軒の建物を指差した。


「あそこ」


「何かある?」


「呼ばれてる」


悠真たちは建物へ入った。


そこは図書館だった。


何千冊もの本が棚に並んでいる。


だが、すべて白紙。


ノノが一冊を開く。


何も書かれていない。


カイも別の本を開く。


やはり白紙。


「記録がない……」


すると、イマが一冊の本を手に取った。


表紙には文字が刻まれていた。


『昨日』


「昨日……」


イマが本を開く。


すると、白紙だったページに一文字ずつ文字が浮かび上がる。


『この世界には、最初の日があった』


「!」


全員が息をのむ。


さらに文章が続いていく。


『最初の日、この世界には何もなかった』


『空も、大地も、時間もなかった』


『ただ一つだけ――』


そこで文章が途切れた。


「続きは?」


アスがページをめくる。


しかし、次のページも白紙。


キオクが本を見つめる。


「何かが抜けている」


「何が?」


悠真が尋ねる。


キオクは胸に手を当てた。


「最初の日に、誰かがいた」


その瞬間――。


図書館の奥から、足音が聞こえた。


コツ……。


コツ……。


全員が振り返る。


誰もいない。


けれど、床には濡れた足跡が続いている。


「足跡……?」


ミライがつぶやく。


足跡は図書館の奥へ向かっている。


悠真たちは慎重に進んだ。


すると、巨大な扉にたどり着いた。


扉にはこう書かれている。


『最初の日』


悠真が扉に手を触れる。


ゴゴゴゴ……。


扉が開く。


その先にあったのは――何もない部屋。


ただ中央に、小さな椅子が一つ置かれている。


そして椅子の上には、一枚の紙。


イマが拾う。


紙には、たった一行だけ書かれていた。


『最初の日、私はここで「今」を選んだ』


イマが目を見開く。


「私……?」


記録者が紙を見つめる。


「この筆跡は……」


「知ってるの?」


悠真が尋ねる。


記録者は首を横に振った。


「いいえ。ですが、この記録は私より古い」


その瞬間。


部屋の壁に、映像が浮かび上がった。


真っ白な世界。


そこに、一つの小さな光が生まれる。


光はゆっくり動き――。


『今』


という文字を選んだ。


すると世界が始まった。


大地が生まれ。


空が生まれ。


時間が動き始める。


そして最後に――。


光が一人の少女になった。


それは、イマだった。


「私……?」


イマは驚いて映像を見つめる。


しかし、映像の最後に一つだけ違う場面が現れた。


イマが生まれた直後。


誰かが彼女の前に立っていた。


白い服。


顔は見えない。


その人物はイマに何かを渡している。


それは――小さな時計だった。


そして声が響く。


『いつか、過去を探す者が来る』


『そのとき、この時計を渡してください』


映像が消えた。


悠真たちは黙り込む。


「誰なんだ……?」


悠真がつぶやく。


するとイマの手の中に、突然、小さな時計が現れた。


カチ。


カチ。


時計が動き始める。


そして文字盤に、一つの名前が浮かんだ。


『記録者』


全員が記録者を見る。


記録者は驚いた表情をしていた。


「……私?」


その瞬間、時計の針が逆回転を始める。


カチカチカチカチ――。


そして、時計から声が響いた。


『記録者へ』


『あなたにも、まだ思い出していない最初の日があります』


記録者の表情が変わる。


「私の……過去?」


時計の針が止まった。


そして扉の向こうに、さらに新しい道が現れる。


『記録者の最初の日』


悠真は記録者を見る。


「行こう」


記録者はしばらく黙っていた。


やがて、小さくうなずいた。


「……はい」


こうして一行は、第∞+2世界だけではなく――。


記録者自身の失われた過去を探す旅へ進むことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。