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姉妹レンタル  作者: なんなん


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202/409

第∞+2世界へ

キズナ号は、巨大な亀裂へ向かって進んでいた。


その先に見えているのは、まだ誰にも知られていない世界。


『第∞+2世界』


「本当に行くの?」


ノノが窓の外を見ながら尋ねる。


悠真はうなずいた。


「うん。ここまで来たんだ。見てみたい」


アカリが操縦席の表示を見る。


「でも、航路が安定してないよ」


シンが画面をのぞき込む。


「第∞+1世界の外側に、さらに世界がある……」


オボロがつぶやく。


「世界って、どこまで続くんだろう」


「それを確かめる旅になるのかもね」


悠真が答えた。


その瞬間――。


キズナ号が大きく揺れた。


「わっ!」


アオが手すりにつかまる。


「航路が閉じます!」


アカリが叫ぶ。


亀裂が少しずつ小さくなっていく。


「急ごう!」


悠真の声とともに、キズナ号が加速する。


そして――。


光の中へ飛び込んだ。


◆


静かだった。


キズナ号が着地した場所は、巨大な草原。


空は真っ白。


太陽も月もない。


けれど、地面には無数の小さな光が浮かんでいる。


ミライがその光を見つめた。


「……未来の音がしない」


キオクも辺りを見回す。


「過去も……ない」


アスが驚く。


「じゃあ、ここには何があるの?」


記録者が答えた。


「おそらく……『現在』だけです」


悠真は驚いた。


「現在だけ?」


「過去になる前。未来になる前。その間だけが存在する世界なのかもしれません」


そのとき。


一つの光が悠真の前へ飛んできた。


光の中に文字が浮かぶ。


『現在』


そして別の光。


『今』


さらにもう一つ。


『ここ』


三つの光が集まり、一人の小さな女の子の姿になった。


白い髪。


透明な瞳。


胸には、∞+2の紋章。


少女は悠真たちを見つめる。


「……あなたたちは?」


悠真が答える。


「僕たちは、第∞+1世界から来たんだ」


少女は首をかしげる。


「第∞+1……?」


「うん」


「そんな世界、知らない」


記録者が一歩前に出る。


「あなたは、この世界の住民ですか?」


少女は少し考えた。


「……わからない」


カイが魔導書を開く。


ページには、文字が一つずつ現れていく。


『第∞+2世界』


『住民――1』


『名前――未定』


『発生源――現在』


『過去――なし』


『未来――なし』


カイが目を見開いた。


「本当に……現在しかない」


少女は魔導書を見て尋ねた。


「それは何?」


「魔導書だよ」


「魔導書?」


少女は初めて見るものを不思議そうに眺める。


そして悠真に聞いた。


「未来って、何?」


悠真は少し考えた。


「まだ起きていないこと」


「過去は?」


「もう起きたこと」


少女は空を見上げる。


「じゃあ、私は?」


悠真は答えに迷った。


少女は続ける。


「私は何も知らない。昨日もない。明日もない」


「……」


「私は、今ここにいる。それだけ」


ミライが優しく言った。


「それなら……あなたは『今』なんじゃないかな」


少女はその言葉を繰り返した。


「……今」


すると、少女の胸の紋章が光った。


『存在――確認』


『現在――確定』


そして、新しい文字が現れる。


『名前を選択してください』


少女は悠真たちを見る。


「名前……?」


「自分で選んでいいんだよ」


悠真が言う。


少女はしばらく考えた。


「じゃあ……」


少女は空を見上げた。


「『イマ』がいい」


その瞬間。


真っ白だった空に、初めて青い色が広がった。


『第一住民――確定』


『名称――イマ』


『発生源――現在』


『第∞+2世界――存在開始』


「世界が……変わった」


アスが驚く。


草原に風が吹き始めた。


遠くに山が現れ、川が流れ始める。


そして空には、小さな太陽が生まれた。


イマは嬉しそうに笑った。


「今って……こんなに広いんだ」


悠真も笑う。


「うん」


しかし、その直後だった。


カイの魔導書が突然閉じた。


バタン!


「どうした!?」


悠真が驚く。


魔導書の表紙に、今まで見たことのない文字が浮かんでいた。


『警告』


『第∞+2世界に、存在しないはずの過去を検出』


キオクが振り返る。


「過去が……?」


イマの足元に、黒い影が現れた。


影の中から、声が聞こえる。


「……今だけでは、世界は続かない」


記録者が息をのむ。


「そんな……」


影が広がっていく。


「過去を持たない世界は、何度でも同じ現在を繰り返す」


悠真は影を見つめた。


「君は誰?」


影は答えない。


ただ、最後に一言だけ残した。


「私は――この世界が忘れた『昨日』」


そして消えた。


イマが不安そうに悠真を見る。


「ねえ……悠真」


「どうしたの?」


「私にも……昨日が必要なの?」


悠真は静かにうなずいた。


「たぶん。でも、それは誰かが決めるものじゃない」


「じゃあ……?」


悠真は笑った。


「一緒に探そう」


イマも笑った。


その瞬間、キズナ号の航行画面に新しい目的地が表示された。


『第∞+2世界――最初の過去』


そして、その場所を示す矢印の先には――。


まだ存在していないはずの、巨大な古代都市が浮かび上がっていた。


新たな旅が始まる。

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