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姉妹レンタル  作者: なんなん


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196/413

過去から来た住民

「ゴゴゴゴゴ……」


鐘楼の地下から響く音は、少しずつ大きくなっていた。


悠真たちは階段を下りていく。


アオとミライも、その後をついてくる。


「この下に、何があるんだろう?」


アオが不安そうに尋ねた。


「分からない。でも、確かめよう」


悠真が答える。


地下深くまで進むと、そこには巨大な扉があった。


扉には古い文字が刻まれている。


『存在しなかった過去』


カイが魔導書を開いた。


「やっぱり……この世界には存在しなかったはずの『過去』が、ここにある」


「どうして?」


ノノが尋ねる。


記録者が答えた。


「あなたたちが、この世界に歴史を与えたからです」


「僕たちが?」


「はい。最初の選択、アオの誕生、ミライの選択……それらが積み重なり、過去が生まれました」


すると扉が開いた。


その向こうには、巨大な部屋が広がっていた。


壁一面に映像が浮かんでいる。


最初の大地。


最初の海。


最初の星。


そして――誰もいなかった世界。


「これが……第∞+1世界の過去?」


ミオがつぶやく。


しかし、その映像の中央だけが黒く塗りつぶされていた。


カイが近づく。


「ここだけ記録がない」


その瞬間。


黒い部分から、声が聞こえた。


「……僕は、ここにいた」


全員が振り返る。


黒い影がゆっくりと人の姿になっていく。


少年だった。


髪も服も、影のように黒い。


けれど、その瞳だけは優しい光を宿している。


「君は誰?」


悠真が尋ねる。


少年は答えた。


「分からない」


「名前は?」


「それも、分からない」


ミライが少年を見る。


「あなたは……いつからここにいたの?」


少年は少し考えた。


「この世界が、まだ世界になる前から」


記録者が驚いた。


「そんな存在は、私の記録にはありません」


「だから僕は『過去』なんだと思う」


少年が笑う。


「誰にも記録されていないけれど、確かにここにいた」


悠真は少年の言葉を聞いて、あることに気づいた。


「もしかして……君は、この世界ができる前の『最初の記憶』?」


少年はうなずいた。


「たぶん」


その瞬間、壁に文字が浮かんだ。


『第四住民――存在を確認』


『発生源:過去』


『名前:未定』


『役割:未定』


アオが嬉しそうに近づく。


「じゃあ、君もこの世界の住民なんだ!」


少年は驚いた。


「僕が?」


「うん!」


アオの笑顔を見て、少年の表情が少し明るくなる。


しかし、記録者は静かに言った。


「一つ問題があります」


「何?」


「彼が存在すると、この世界には『過去が現在に影響する』という法則が生まれます」


シンが考え込む。


「つまり、過去の出来事によって、今の世界が変わる?」


「そうです」


すると突然、地下室の景色が変わった。


先ほどまで緑だった地上の森が、一瞬で砂漠になる。


町も消えた。


時計塔も消えた。


アオが驚く。


「世界が変わった!」


少年が苦しそうに頭を抱える。


「ごめん……僕が思い出すたびに……過去が決まってしまう」


悠真は少年の肩に手を置く。


「謝らなくていい」


「でも……」


「過去を決めることも、君一人の責任じゃない」


悠真は仲間たちを見る。


「この世界は、みんなの選択でできている」


そして少年に尋ねた。


「君はどうしたい?」


少年はしばらく黙っていた。


やがて、初めて自分から言葉を選んだ。


「……僕も、この世界の未来を見たい」


その瞬間。


砂漠が消えた。


森が戻る。


町も戻る。


そして空に、巨大な文字が浮かんだ。


『第四住民――未来を選択』


『過去と未来の接続――成立』


少年の胸に、小さな星が灯る。


「……名前も、自分で決めたい」


悠真が笑う。


「もちろん」


少年は空を見上げた。


過去を抱えながら、それでも未来へ進むための名前。


「僕は……」


長い沈黙のあと、少年は微笑んだ。


「キオク」


その名前が地下室いっぱいに響いた。


『第四住民――キオク』


『過去の記憶――正式登録』


『第∞+1世界――歴史、安定』


しかし、安堵したその瞬間。


カイの魔導書が勝手に開いた。


ページには、これまで存在しなかった一文が刻まれていた。


『第五住民――未来から到着』


悠真が目を見開く。


「未来から……?」


ミライが空を見上げた。


すると世界の空に、まだ存在していないはずの巨大な月が現れた。


そして、その月から――


「……やっと、ここまで来た」


誰かの声が響いた。


第∞+1世界に、過去だけではなく――


未来からも住民がやって来ようとしていた。

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