星から来た訪問者
「……ここは、どこ?」
空から落ちてきた光の中から、声が聞こえた。
悠真たちは顔を見合わせる。
やがて光が薄れていき、一人の少年が姿を現した。
年齢は悠真たちと同じくらいに見える。
髪は銀色。
瞳には、遠い星のような小さな光が浮かんでいた。
「大丈夫?」
悠真が声をかける。
少年は周囲を見回した。
「うん……たぶん」
「名前は?」
「……わからない」
カイが魔導書を開く。
しかし、ページには何も書かれない。
「記録不能?」
カイが眉をひそめる。
すると、記録者が静かに現れた。
「彼は、この世界の住民ではありません」
「じゃあ、どこから来たの?」
ノノが尋ねる。
記録者は空を指差した。
「第∞+1世界の外側――あなたたちがこれまで旅してきた世界からです」
悠真が驚く。
「外の世界から、ここへ来たってこと?」
「正確には……外の世界から『選ばれて』来ました」
少年が振り返る。
「選ばれた?」
「はい」
記録者が答えた。
「第∞+1世界が、初めて『未知』を受け入れた結果です」
アカリが目を輝かせる。
「未知を受け入れたから、新しい存在が来たんだ!」
シンも納得したようにうなずく。
「つまり、この世界は自分だけで完結する世界じゃない」
「その通りです」
すると少年が悠真の前まで歩いてきた。
「あなた……知ってる」
「僕を?」
「うん。でも、どこで会ったのかは思い出せない」
オボロが少年を見る。
「記憶がないの?」
「少しだけある。でも、ほとんど夢みたいなんだ」
少年が空を見上げる。
「星がいっぱいあって……誰かと一緒に旅をしていた」
悠真は少し驚いた。
それは、自分たちの旅にも似ていた。
その瞬間、少年の胸に小さな光が灯る。
『外部接続――安定』
『第二住民候補――確定』
『世界外からの来訪者を、正式な住民として登録します』
ノノが嬉しそうに笑った。
「じゃあ、ここで暮らせるんだ!」
「……僕が?」
少年は少し戸惑った。
「でも、僕には帰る場所があるかもしれない」
その言葉に、悠真はすぐ答えなかった。
ここに残ることを押しつけるわけにはいかない。
しばらくして、悠真は言った。
「帰りたいなら、帰る方法を探そう」
少年が目を丸くする。
「いいの?」
「もちろん。ここにいるか、帰るか。それを決めるのは君だから」
少年は微笑んだ。
「ありがとう」
その瞬間、空に新しい扉が現れた。
『帰還』
その隣には、もう一つの扉。
『滞在』
そして、そのさらに横には――
『まだ決めない』
「三つ目がある……」
ミオがつぶやいた。
記録者が言う。
「それが、第∞+1世界の新しい力です」
「新しい力?」
「未来を一つに決めないという、最初の選択。その結果、この世界では『決めない』という選択も、未来として認められるようになったのです」
少年は三つの扉を見つめる。
そして――。
「僕は……まだ決めない」
扉は消えなかった。
むしろ、三つの扉すべてが残った。
悠真が笑う。
「それでいいと思う」
「うん」
少年は空を見上げた。
「じゃあ、名前も……まだ決めなくていい?」
「もちろん」
その言葉に、世界が大きく反応した。
『第二住民――仮登録』
『名前:未定』
『未来:未定』
『選択権:本人』
アオが嬉しそうに少年の隣へ立った。
「じゃあ、一緒に星を見よう!」
「……うん!」
二人が空を見上げる。
すると、今まで存在しなかった星が一つだけ、ゆっくりと輝き始めた。
カイの魔導書に、最後の一文が刻まれる。
『第∞+1世界――未知との接続を確認』
しかし、その直後。
さらに別の文字が浮かび上がった。
『第三住民候補――発生』
悠真が振り返る。
「えっ……もう次が?」
遠くの山の向こう。
まだ誰もいない場所から――
大きな鐘の音が響いた。
ゴォォォン……。
記録者が、初めて険しい表情を見せる。
「……これは、予定にはありませんでした」
悠真たちは鐘の鳴った方向を見る。
第∞+1世界で、次の住民が生まれようとしていた。




