最初の歴史
空に浮かんだ文字。
『第一住民アオが誕生した理由を決定してください』
悠真たちは、静かにアオを見つめていた。
「生まれた理由……か」
悠真がつぶやく。
アオは不思議そうに首をかしげた。
「ぼくが生まれた理由って、そんなに大事なの?」
カイが魔導書を開く。
「この世界には、まだ過去がほとんど存在していない。だからアオの誕生理由が、この世界における最初の歴史になる」
「じゃあ……僕たちが決めるの?」
ノノが尋ねる。
すると記録者が姿を現した。
「いいえ」
全員が振り返る。
「この世界の歴史を決めるのは、世界そのものです」
「世界そのもの?」
「あなたたちが選んだこと。アオが選んだこと。そして、これから生まれる存在たちの選択。それらが重なって、歴史になります」
悠真は空を見上げた。
「じゃあ、アオが生まれた理由も……」
「アオ自身が選べます」
アオが驚いた顔をする。
「ぼくが?」
記録者はうなずいた。
すると、アオの前に三つの光が現れた。
『誰かを待つため』
『世界を守るため』
『自分の未来を探すため』
アオは三つの光を見つめる。
「どれも、なんだか違う気がする」
「違う?」
「ぼくは、誰かに言われたから生まれたんじゃないと思う」
悠真が微笑む。
「じゃあ、どうして?」
アオはしばらく考えた。
そして、空を指差した。
「星を見たかったから」
「星を?」
「うん。まだ何もなかった場所で、ぼくは星の光を感じたんだ」
アオの言葉に反応して、空に小さな星が一つ生まれた。
「それから、誰かと一緒に星を見たいと思った」
もう一つ。
「知らない場所へ行ってみたいと思った」
さらに一つ。
「そして……自分が何者なのか知りたいと思った」
三つの星が輝く。
その瞬間、空の文字が変化した。
『第一の歴史――確定』
『第一住民アオは、未来を知るためではなく、未来を探すために生まれた』
悠真は驚いた。
「未来を……探すため」
ユラが静かに笑う。
「それなら、この世界らしいですね」
アカリもうなずいた。
「未来が決まっていない世界だからこそ」
シンが空を見上げる。
「未来を探す存在が最初に生まれた」
すると、大地に一本の道が現れた。
その道は町を抜け、森を越え、遠くの山へ続いている。
アオが目を輝かせる。
「この道……どこへ続いてるの?」
記録者が答えた。
「それは、まだ決まっていません」
「じゃあ……」
アオは一歩、道へ進んだ。
「行ってみたい!」
その瞬間。
『歴史――第一段階完了』
『未来探索者――誕生』
『新たな住民発生条件を解放します』
町のあちこちで、小さな光が次々と浮かび始めた。
一つ。
二つ。
十。
百――。
ノノが目を丸くする。
「えっ……住民が生まれるの!?」
カイの魔導書に、新しい文字が高速で刻まれていく。
『第∞+1世界』
『住民数――2』
『新規住民発生――開始』
そして最後に、見たことのない一文が記された。
『第二住民候補――外部世界より接続』
悠真の表情が変わる。
「外部世界?」
記録者が、初めて驚いたように空を見上げた。
「……そんなことは、記録されていません」
その瞬間。
第∞+1世界の空に――
見覚えのある星が現れた。
それは、かつて悠真たちが旅してきた世界の星だった。
「まさか……」
悠真は空を見つめる。
すると星から、一筋の光が落ちてきた。
そして、その光の中から――
誰かの声が聞こえた。
「……ここは、どこ?」
第∞+1世界に、最初の「外から来た存在」が現れようとしていた。




