もう一人の住民
小さな光は、悠真たちの目の前でゆっくりと大きくなっていった。
「……近づいてくる」
ノノがつぶやく。
光はふわふわと宙を漂いながら、悠真の前で止まった。
すると――
パッ!
光が弾けた。
中から現れたのは、小さな男の子だった。
白い髪。
青く透き通った瞳。
そして胸元には、∞+1の形をした小さな紋章。
男の子は周囲を見回した。
「ここ……どこ?」
悠真が答える。
「第∞+1世界だよ」
「第∞+1……?」
男の子は首をかしげる。
ユラが一歩前へ出た。
「あなたは、この世界で生まれたの?」
男の子は少し考えてから頷いた。
「たぶん……」
「たぶん?」
ミオが驚く。
男の子は自分の胸に手を当てた。
「僕には、名前も記憶もない。でも……」
彼は悠真たちを見た。
「みんなが来るのを待っていた気がする」
その瞬間。
カイの魔導書が勝手に開いた。
ページに文字が浮かぶ。
『第∞+1世界・第二住民』
『発生条件――最初の選択』
カイが目を見開いた。
「最初の選択が、住民を生み出した……?」
アカリが笑う。
「つまり、悠真たちが世界の未来を一つに決めなかったから、この子が生まれたんだ!」
シンが静かに言う。
「選ばなかった未来にも、存在する意味がある……ということか」
オボロが男の子を見る。
「名前がないなら、名前をつけないと」
悠真は少し考えた。
「君は……何か好きなものはある?」
男の子は空を見上げた。
そこには、まだ一つしか星がない。
「星」
「星が好き?」
「うん。まだ一つしかないけど……いつか、いっぱいになったらいいな」
悠真は微笑んだ。
「じゃあ、君の名前は――」
その瞬間、ユラが口を開いた。
「『ホシ』……はどう?」
男の子の顔が明るくなった。
「ホシ……」
その名前を口にした瞬間――
空に二つ目の星が生まれた。
そして三つ目。
四つ目。
五つ目。
無数の星が、夜空いっぱいに広がっていく。
「すごい……!」
ノノが空を見上げる。
ホシも驚いた顔で空を見つめていた。
「僕が名前をもらったから……星が増えたの?」
『名前とは、存在を世界に刻む最初の言葉』
突然、どこからともなく声が響いた。
全員が振り向く。
しかし、誰もいない。
カイが魔導書を閉じる。
「今の声……誰だ?」
すると地面に巨大な文字が浮かび上がった。
『第∞+1世界、正式稼働』
さらに続けて――
『住民数:2』
『創造者数:0』
『観測者:不明』
悠真の表情が変わった。
「観測者……?」
アカリが周囲を見回す。
「この世界を見ている誰かがいるってこと?」
そのとき。
遠くの空に、巨大な目のような光が開いた。
ユラが息をのむ。
「……あれは、この世界のものじゃない」
シンが静かに言った。
「なら、外から見ている存在……」
光の目が、悠真たちを見つめる。
そして――
『第∞+1世界を確認』
『次の選択を開始します』
空に巨大な扉が現れた。
そこには、たった一つの文字。
『住民』
悠真は扉を見つめた。
「……この世界には、まだ住民を増やせるってことか」
ホシが悠真の袖をつかむ。
「悠真……」
「どうした?」
ホシは少し不安そうに言った。
「僕たちが選んだ未来って……本当に、みんなにとって幸せなのかな?」
悠真は答えず、扉を見つめた。
第∞+1世界。
二人の住民。
そして、無数の未来。
新しい世界を作る旅は、まだ始まったばかりだった。




