第∞+1世界・最初の選択
「第∞+1世界を、どんな世界にしますか?」
白い部屋の中央で、巨大な本『未来』が静かに光っていた。
悠真たちは本を囲むように立っている。
「どんな世界って言われても……」
ノノが首をかしげる。
「町を作るとか?」
「それだけじゃないと思う」
カイが本をめくった。
すると、ページに文字が浮かび上がる。
『この世界では、最初の選択がすべての始まりになります』
アカリが目を輝かせた。
「つまり、私たちの選択によって、この世界の仕組みそのものが決まるんだ!」
「法律とか、時間とか、住民とかも?」
ミオが尋ねる。
本は答えた。
『はい』
シンが黙って考える。
「だったら……慎重に決める必要がある」
オボロも頷いた。
「一度決めたら、取り返しがつかないかもしれない」
するとユラが、少し寂しそうに言った。
「でも……私は、みんなに決めてほしい」
「ユラ?」
「この世界には、まだ私しか住んでいません。でも、これから誰かが生まれるなら……その人たちが自由に選べる世界になってほしい」
その言葉を聞いた悠真は、本を見つめた。
そして、ゆっくり口を開く。
「じゃあ、最初の選択は決まった」
「え?」
全員が悠真を見る。
悠真は笑った。
「この世界の未来を、一つに決めない」
本のページが大きく光る。
『選択を受け付けました』
次の瞬間――。
空間いっぱいに無数の扉が現れた。
赤い扉。
青い扉。
緑の扉。
星空の扉。
そして、透明な扉。
それぞれの扉には文字が浮かんでいる。
『自然』
『文明』
『魔法』
『知識』
『冒険』
『平和』
『未知』
さらに、その奥には文字のない扉が一つだけあった。
悠真がその扉を見る。
「……これは?」
ユラが答える。
「まだ、誰も選んでいない未来です」
悠真は少し考えた。
そして、扉に手を伸ばす。
「だったら……これも残そう」
――カチッ。
扉が開いた。
その瞬間、巨大な風が部屋を吹き抜けた。
白い空間の向こうから、緑の大地が生まれる。
山が現れ、川が流れ、森が広がる。
その上空には、星が輝き始めた。
しかし――。
「待って!」
ノノが空を指差す。
星の一つが、急速に巨大化している。
カイが魔導書を開いた。
「これは……世界そのものじゃない」
「じゃあ何?」
「……新しい世界への入口だ」
その瞬間、巨大な文字が空に浮かんだ。
『第∞+1世界――第一領域、誕生』
さらにその下に、もう一つの文字。
『第二領域、未選択』
『第三領域、未選択』
『第四領域、未選択』
……。
どこまでも続いている。
アカリが笑った。
「まだまだ世界を作れるってことだね!」
キボウも嬉しそうに頷く。
「だったら、楽しそう!」
レインが空を飛びながら言った。
「世界が広がっていく……!」
しかし、そのとき。
白い本『未来』の最後のページが勝手にめくれた。
そこには、今までなかった文字が書かれていた。
『注意』
全員の表情が変わる。
その下には――。
『この世界には、まだ一人だけ存在していない住民がいます』
「一人だけ……?」
悠真がつぶやく。
そして最後の一行が現れた。
『その者が生まれたとき、第∞+1世界の本当の物語が始まります』
ユラが空を見上げた。
すると、まだ何もない空間に――
小さな光が一つ、灯った。
「……あれは?」
悠真たちは、光へ向かって歩き出す。
第∞+1世界。
その最初の住民、ユラ。
そして――
まだ名前すらない、もう一人の存在。
新しい世界の物語は、ここから動き始めようとしていた。




