第∞世界の住人
きずなの船は、無限の世界を通り抜けていた。
右を見ても世界。
左を見ても世界。
上にも、下にも――世界。
ハジメが世界間時計を見つめる。
「数えられない……。」
トワが答える。
「『∞』ですから。」
ノノが窓に顔を近づける。
「じゃあ、どこまで行っても終わらないの?」
ミライが頷く。
「たぶん。」
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■ 何もない場所
突然――。
すべての世界が消えた。
船の周囲は真っ暗。
星もない。
光もない。
音すらない。
カイが小声で言う。
「……ここが、第∞世界?」
レインが船の外で立ち止まる。
「違う。」
「ここは――。」
「第∞世界へ入る前の境界だ。」
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■ 扉
暗闇の中に、一枚の扉が現れる。
普通の木製の扉。
ノノが首をかしげる。
「こんなところに?」
悠真が扉へ近づく。
ドアには名前が書かれていた。
『あなた』
悠真が驚く。
「あなた……?」
扉の向こうから声がする。
「どうぞ。」
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■ 第∞世界
扉を開ける。
そこには――。
何もない。
いや。
正確には、何も「決まっていない」。
地面は草原にもなる。
海にもなる。
街にもなる。
空も、昼にも夜にも変化する。
ユメが一歩進む。
すると足元に花が咲いた。
ノノが歩く。
今度は小さな家が現れる。
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■ 思ったものが生まれる世界
ハジメが気づく。
「この世界は、考えたものが形になる。」
カイが本を思い浮かべる。
すると巨大な本棚が現れた。
トワが時計を思い浮かべる。
巨大な時計塔が現れる。
ノノがケーキを思い浮かべる。
すると――。
巨大なケーキが出現した。
ノノが目を輝かせる。
「ここ、最高!」
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■ しかし悠真は……
悠真は何も思い浮かべなかった。
何かを想像しようとしても――。
世界は何も変化しない。
ハジメが驚く。
「どうして?」
悠真は首をかしげる。
「分からない。」
すると――。
遠くから拍手が聞こえた。
パチ……パチ……パチ……。
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■ 謎の人物
霧の向こうから、一人の人物が歩いてくる。
黒い髪。
白い服。
穏やかな表情。
そして――。
悠真と同じ目をしていた。
その人物は笑う。
「やっと来たね。」
悠真が尋ねる。
「あなたは誰?」
人物は答える。
「始まり。」
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■ 始まり
ハジメが驚く。
「始まり……?」
「そう。」
「私は、このすべてが始まる前の存在。」
レインが警戒する。
「それは不可能だ。」
始まりは笑う。
「不可能だから、ここにいる。」
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■ 悠真たちを知っている理由
悠真が聞く。
「僕たちを最初から知っていたって、本当?」
始まりは頷く。
「もちろん。」
「あなたが最初の一歩を踏み出したとき。」
「ノノが最初に笑ったとき。」
「カナタが仲間を守ろうとしたとき。」
「すべて見ていた。」
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■ さらに昔
悠真が尋ねる。
「僕たちが生まれる前から?」
「そう。」
始まりは空を指す。
そこに一つの小さな光が浮かぶ。
それは――。
まだ世界が何も存在しなかった頃の光。
「最初に生まれたのは世界ではない。」
「星でもない。」
「時間でもない。」
「最初に生まれたのは――。」
『可能性』
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■ 可能性から世界へ
始まりは説明する。
一つの可能性から世界が生まれた。
世界から生命が生まれた。
生命から夢が生まれた。
夢から新しい可能性が生まれた。
それが繰り返され――。
現在の無数の世界になった。
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■ では「始まり」は何者?
カナタが尋ねる。
「あなたは神様なの?」
始まりは首を横に振る。
「神ではない。」
「私は――。」
「最初の可能性そのもの。」
全員が驚く。
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■ 悠真の力
始まりが悠真を見る。
「だから、あなたがここで何も作れないのも当然。」
悠真が聞く。
「どういうこと?」
「あなたは、この世界を想像する必要がない。」
「なぜなら――。」
始まりが悠真の胸を指差す。
「あなた自身が、新しい可能性だから。」
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■ 新しい可能性
悠真の胸に小さな光が現れる。
ノノが近づく。
「それ、何?」
「分からない。」
光が少しずつ大きくなる。
そして――。
悠真の周囲に、これまで旅してきた世界が映し出される。
アオゾラ世界。
未来迷路。
はじまりの世界。
にじの世界。
物語世界。
そして――。
まだ見たことのない世界。
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■ 始まりのお願い
始まりが言う。
「お願いがあります。」
悠真が聞く。
「何?」
「私を――。」
少し間を置いて。
「この世界から連れ出してください。」
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■ 驚き
ハジメが驚く。
「あなたが外へ?」
「はい。」
「私はずっとここにいた。」
「すべての可能性が生まれる場所だから。」
「でも――。」
始まりは遠くを見る。
「一度くらい、自分で旅をしてみたい。」
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■ 悠真の答え
悠真は笑う。
「いいよ。」
始まりが驚く。
「本当に?」
「うん。」
ノノも手を上げる。
「仲間が増えるのは大歓迎!」
カナタも頷く。
「船ならまだ乗れる。」
カイが苦笑する。
「たぶん……。」
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■ 始まりの名前
悠真が尋ねる。
「でも、名前が『始まり』じゃ呼びにくいよね。」
ノノが考える。
「ハジメはもういるし……。」
ハジメが笑う。
「私と同じ名前はややこしいですね。」
みんなで考える。
そして――。
悠真が言う。
「アカリは?」
始まりは少し驚く。
「アカリ?」
「暗いところでも、最初の光になれるから。」
アカリは笑った。
「……気に入った。」
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■ 新しい仲間
こうして――。
第∞世界の住人。
アカリが仲間になった。
アカリが船に乗ると、世界間時計が突然輝き始める。
ピピピピッ!
表示された文字。
『全世界接続率:100%』
トワが驚く。
「すべての世界がつながった?」
ハジメが頷く。
「そうみたい。」
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■ しかし……
その瞬間。
世界間時計の下に、もう一つの表示が現れた。
『接続外領域:1』
カイが目を見開く。
「一つだけ、つながっていない?」
アカリが画面を見る。
そして――。
初めて表情を曇らせた。
「……そんな場所があるはずない。」
悠真が聞く。
「知ってるの?」
アカリは静かに答える。
「ええ。」
「そこは――。」
『始まりより前』
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■ 始まりより前
アカリが説明する。
「私が生まれる前。」
「可能性が生まれる前。」
「世界が生まれる前。」
「何も存在しなかった場所。」
ノノが聞く。
「じゃあ、そこには何があるの?」
アカリは答えない。
やがて――。
一言だけ。
「分かりません。」
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■ 最後の通信
突然、通信機が鳴る。
ザーッ……。
ノイズの向こうから声。
誰の声でもない。
男でも女でもない。
子どもでも大人でもない。
ただ一言。
『……やっと見つけた。』
悠真が立ち上がる。
「誰だ!」
通信は切れた。
世界間時計に、新しい目的地が表示される。
『始まりより前』
ノノが悠真を見る。
「行く?」
悠真は時計を握る。
そして――。
「もちろん。」
きずなの船は、ついに――。
すべての世界の外側へ向かって進み始めた。




